法令等の改正に伴う企業会計基準等の修正について
企業会計基準委員会は、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告について、法令等の改正に伴い、参照する法令等の修正を行いました(2022年7月1日付)。会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更するものではないとのことです。
企業会計基準
第29号「収益認識に関する会計基準」
第30号「時価の算定に関する会計基準」
企業会計基準適用指針
第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」
第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」
第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」
実務対応報告
第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」
第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」
第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」
修正内容をまとめた「法令等の改正に伴う企業会計基準等の修正」(PDFファイル)という資料がついています。 それをみると、たしかに、ほとんどが実質的な変更ではないようです。
そのなかで少し引っかかったのが関連当事者です(指針13号)。
今回の修正前から「開示対象外の取引」として、「24. 我が国において役員報酬は、コーポレート・ガバナンスに関する非財務情報として開示が規定されている。このため、関連当事者の開示の対象外とすることとした(第 5 項参照)。」とされており、役員報酬が開示から除外されていました。今回の修正により、会社法改正で役員報酬の新しいスキームが追加されたことに対応して、開示から除外される取引を拡充しています。
しかし、そもそも、非財務情報で開示されるから、会計士監査の対象になる財務諸表注記から外すべきというのは、おかしいのではないでしょうか。非財務情報で開示が求められるということは、それだけ重要性があるということでしょうから、そのうち財務に関係する事項は、財務諸表注記としても開示し、会計士の監査対象とすべきでしょう。ちなみに、IFRSでは、役員報酬も関連当事者取引の開示に含めるようです。
例えば、日産ゴーン事件で問題となったゴーン氏の退任後支払いとされる役員報酬についても、関連当事者取引注記がなされていれば、会計監査人が詳しくチェックするでしょうし、注記では、費用として発生した額だけでなく、会社の債務として残っている額や、支払額も明示されるので、刑事裁判で問題になった、有報で記載すべきなのは支払額なのか、発生したものが支払額なのだから発生したものを記載すべきなのかといった争点も、解消されます(関連当事者注記では、発生額も支払額も明示されるから)。
今回の修正自体は、従来規定をそのまま踏襲したうえで、会社法改正に対応しただけなのでしょうが、これを機会に、非財務情報で開示されるから関連当事者注記不要という、誤った考え方を見直してほしいものです。そうでないと、非財務情報が拡充されればされるほど、財務諸表注記はやせ細るということになってしまいます。
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