金融庁・企業会計審議会の内部統制部会が、5月21日に開催され、そのときの議事次第と資料が金融庁のサイトに掲載されています。
「内部統制報告制度の運用の見直し」の議論が行われ、見直しの概要も資料として公開されています。
主な対応項目と対応案(PDFファイル)
以下、この資料からの引用です。
(1) 中堅・中小上場企業に対する簡素化・明確化
評価手続等に係る記録及び保存の簡素化・明確化
→小規模企業等において利用できる社内作成書類(メモや引継書等)を例示、監査人も当該資料を利用して監査を行うことができる旨の注を追加
会社の規模等に応じた手続の合理化、代替手続の容認
→小規模企業等においては、必ずしも、通期及びすべての階層(CEOレベル、部長レベル、担当者レベル)で、内部統制評価を実施する必要はないことなど手続の合理化
→経営者(監査役等を含む)等のモニタリング結果を内部統制監査において活用
全社的な内部統制の評価方法の簡素化
→小規模企業等においては組織構造が比較的簡素であることから、大きな変化がないと認められる評価項目(例:ITに関する適切な戦略、計画等を定めているか)については、評価を省略できる旨を追加
(2) 制度導入2年目以降可能となる簡素化・明確化
持分法適用会社に係る評価・監査方法の明確化
→当該持分法適用会社の親会社が上場会社である場合には、当該会社の親会社等からの何らかの確認書面の入手で足りる旨を実施基準に追加
評価対象範囲の絞込み(省略できる範囲の拡大)
→絞り込みの例示における一定の割合の引き下げとその要件(前年度の状況の勘案等)を検討(【別案】概ね2/3 という数値基準を削除し、リスク等を勘案し、監査人と協議して評価範囲を決定)
→一定の指標及び企業の事業目的に大きく関わる勘定科目について、他の指標や勘定科目を使えることを明らかにするため、例示を追加
対象とする統制やサンプリング方法等の緩和
→監査人が経営者の行った内部統制の評価結果を確認する際に、一定の場合には、経営者が評価の際に選択したサンプルをそのまま利用することが可能であることを明記
→監査人による内部統制の運用状況の検討にあたって、効率性の観点から、前年度に内部統制の評価が良好であった業務プロセスなどについては、経営者や内部監査人等の実施した手続を積極的に利用することを明記
(3) その他の明確化
「重要な欠陥」の判断基準の明確化
→税引前利益の5%以外に使用できる指標等(剰余金など)の事例の追加。過去の平均の使用や業績の変動が大きい場合の取扱いなどを明記(【別案】実務が定着してきたと考えられることから、5%等の数値基準を削除)。
全社的な内部統制の評価範囲の明確化
→現在の僅少基準(5%)に縛られず、財務報告に対する影響の重要度で判断する(場合によっては5%を超える)ことを明記(【別案】僅少基準としての数値基準(5%)の削除)
総会で代表取締役が交代した場合の内部統制報告書の表紙の代表者名
→報告書提出日現在の代表取締役を記載すべき旨を内部統制府令ガイドラインに追加
財務諸表監査報告書及び内部統制監査報告書(いわゆる統合監査報告書)の提出後、有価証券報告書のみの訂正報告書を提出(監査報告書を添付)する場合の内部統制に係る監査報告書の取扱いの明確化
→訂正内部統制報告書には、監査報告書を提出する必要がないことから、統合監査報告書を提出する必要がない旨をQ&A 又は内部統制府令ガイドラインに追加
(4) 「重要な欠陥」(material weakness)の用語の見直し
(「ITへの対応」を内部統制の基本的要素から外すという案はどうでしょうか。理論的にはすっきりすると思うのですが・・・。)
金融庁が内部統制制度を見直し、より簡素・明確に(@ITより)
J-SOX簡素化・明確化の議論開始、内部統制部会を3年ぶりに開催(ITproより)
この記事によると、内部統制監査を監査ではなくレビューに変えるべきという意見も出たそうです。
「当局側から出た簡素化・明確化案のほかに、委員から「現在は内部統制報告書の監査が必要だが、これを手続きが簡素なレビューにしてはどうか」との意見が出た。これに対して、当局側は「検討課題にする」として結論は出さなかった。」
名目上は「監査」だとしても、監査人が見る範囲を狭めたり、会社がテストしたサンプルをそのまま使わせたりするのであれば、監査というよりレビューに近づいていくのではないでしょうか。
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