企業会計基準委員会は、「退職給付会計の見直しに関する論点の整理」を2009年1月22日付で公表しました。
この論点整理は、会計基準のコンバージェンスの一環として、「国際的な議論の動向やこれまでの我が国での議論の経緯も踏まえた上で、退職給付会計に関する論点を幅広く示し、どのような論点について、どのように見直しを進めるかの議論の整理を図る」ことを目的とするものです。2011年(平成23年)をメドとして取り組むとされています。
取り上げられている論点は以下のとおりです(「本論点整理の概要」より)。
【論点1】退職給付債務及び勤務費用の会計処理
[論点1-1]予測単位積増方式による測定方法等の見直し
[論点1-2]退職給付債務及び勤務費用の測定方法
[論点1-3]小規模企業等における簡便法の容認
【論点2】年金資産及び期待運用収益の会計処理
[論点2-1]期待運用収益の取扱い
[論点2-2]退職給付信託の取扱い
【論点3】貸借対照表で計上する退職給付に係る負債
[論点3-1]年金資産と退職給付債務の総額表示
[論点3-2]制度の積立状況の貸借対照表での計上
【論点4】数理計算上の差異と過去勤務債務の会計処理
[論点4-1]数理計算上の差異の会計処理
[論点4-2]重要性基準と回廊アプローチ
[論点4-3]過去勤務債務の会計処理
【論点5】損益計算書における退職給付費用に係る表示
【論点6】退職給付(給付建制度)に係る開示
【論点7】清算と縮小の会計処理と表示
【論点8】キャッシュ・バランス・プランの会計処理と表示
【論点9】複数事業主制度の会計処理と開示
【論点10】その他の退職後給付
この中では「[論点3-2]制度の積立状況の貸借対照表での計上」がまず目につく論点です。
「米国会計基準やIASB のDP での提案と同様に、貸借対照表で計上する退職給付に係る負債(又は資産)として、制度の積立状況(退職給付債務から年金資産を控除した額)に未認識項目を加減したものから、制度の積立状況を示す額に変更すべきという考え方がある。
国際的な議論の中では、この変更により、理解可能性や表現の忠実性を改善することができると説明されており、このような点を踏まえると、今後の退職給付に関する会計基準等の見直しの中で、この論点について取り上げることが考えられる。」
少なくとも貸借対照表では遅延認識によらず、年金制度の積み立て状況(=退職給付債務-年金資産)をそのまま表示しようということですから、大きな影響が出ると思われます。
その他の論点も、現行の米国基準やIFRSと日本基準が異なる処理の扱い、IFRSで現在検討中でまだ固まっていない論点、退職給付信託や簡便法といった日本独自の会計実務など、さまざまです。全論点を今後取り入れるわけではないにせよ、2011年の退職給付会計は現行基準とは様変わりしたものとなりそうです。
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