シャープ、最終局面へ
リストラにより今期大きな赤字を出しそうだといわれているシャープを取り上げた記事。同社OBへのインタビューをまとめています。
その中から気になった部分。
「なぜ当初は300億円と言われた赤字額が1000億円以上、場合によっては2000億円以上にまで達するのかというと、不採算事業を切る際には減損処理が必要になるからです。
・・・
実は、太陽光パネルからの撤退が赤字膨張の原因の一つです。シャープは、パネルの原材料である多結晶シリコンを先行予約で購入しています。以前シャープは、太陽光パネルの原材料が足りずにシェアトップから転落したことがありました。その教訓から、現在では予約して確保しているわけです。
しかし長期契約を結ぶと、原材料の価格が下がっても高値掴みを強いられます。こうした状況で太陽光パネルから撤退するとなれば、減損処理として長期契約の補償もしなければなりません。少しの赤字が、こうして一挙に何倍にも膨らんではね返ってくるのです。」
この記事では、固定資産の減損処理などとは少し違う意味で、「減損処理」といっているようです。それはともかく、日本の現行基準では、原材料を市場価格よりも高い値段で引き取らなければならないような企業にとって不利な契約について、引当金を計上するという規定はありません。実際に高い値段で引き取ってそれがライバルメーカーなどより割高な原価として財務諸表に反映されるか、途中で解約して違約金を損失計上するかのどちらかになります。IFRSでは引当金の基準で、企業が不利な契約を有している場合、その契約に基づく現在の債務を引当金として測定し認識しなければならないようです。日本基準との大きな差となっています。
シャープの太陽光パネルの原材料の長期購入契約が、どのくらいの規模の契約なのか、現時点で不利な契約なのかはわかりませんが、日本の現行会計基準では、実際にリストラが決まるまではブラックボックス状態だということはいえそうです。
とはいえ、有報の事業等のリスクの中で注意喚起はなされています。
「・・・当社グループは、多数の長期契約を有しており、それらの長期契約の多くは、その契約期間中、固定価格又は定期的にのみ調整される価格による取引を約束するものであるため、当該契約期間における価格又は費用の変動は当社グループの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。特に、ソーラーパネルの原材料に関してこうした契約が存在しており、中でもポリシリコンの購入契約は、最長で平成32年末まで、合計して23,312トン(平成26年3月末現在)を近時における時価水準を大幅に上回る価格(平成26年3月26日現在の時価を加重平均で1キログラム当たり約2,200円上回る。)で購入することを当社に義務づけるものとなっている。平成25年5月14日に発表した当社グループの中期経営計画は、中期経営計画期間中におけるかかる時価を上回る水準でのポリシリコン等の購入義務をその前提として組み込んでいる。」(2014年3月期有報より)
(「2,200円/㎏×残存契約数量(トン)×1000kg/トン」を計算すれば、昨年3月末時点の含み損が出ます。)
シャープ、産業強化法申請へ
現実味帯びる液晶業界の再編(ダイヤモンドオンライン)
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事