専門家の判断は気分によって左右されているという記事。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの著書の宣伝記事のようです。
同じ人や同じ集団が同一のケースについて下す判断に、その時々でばらつきが出るというノイズを「機会ノイズ」というそうですが...
「機会ノイズにはさまざまな原因があるにしても、誰もが気づく原因が少なくとも1つある。気分である。誰しも判断を下すときに気分に左右されたことがあるだろう。また、他人の判断が気分に影響されていると気づいたことも一度ならずあるのではないだろうか。」
「ご機嫌な人は自分の抱いた第一印象をあまり疑いもせず受け入れてしまう傾向が強い。フォーガスが行った実験の1つでは、被験者にまず短い哲学論文を読んでもらう。論文には、それを書いた哲学者と称する人物の写真が添えられている。一部の被験者には典型的な哲学教授、すなわち厚いメガネをかけた中年男性の写真が、残りの被験者には若い女性の写真が添付された。
これは、もともとはステレオタイプに影響されやすい傾向を調べる実験で、読者のご想像通り被験者は、典型的な哲学教授の書いたとされる論文と若い女性の書いたとされる論文では前者を高く評価した。しかしここで重要なのはそのことではない。被験者はご機嫌なときほど前者を高く評価したのである。つまりハッピーな気分は、バイアスの影響を強くする方向に作用する。」
気分がだまされやすさにおよぼす影響を調べた研究では...
「だまされやすい人は「意義深い真実として提示され、みたところ印象的だが実際には内容空疎な文章」にころりと参ってしまう。だがこのだまされやすさは、持って生まれた気質のせいだけではない。人間はご機嫌だとデタラメを受け入れやすくなり、また全般的にだまされやすくなる。
つまり、つじつまの合わないところを探し出したり、うそを見抜いたりする気がなくなってしまう。逆に何らかの事件の目撃者は、機嫌の悪いときは偽情報に接してもしっかり見抜き、誤った証言をせずに済むという。」
機会ノイズを引き起こす他の要因は...
「本来ならプロフェッショナルの判断に影響をおよぼすべきでない外的な要因の元凶になりうるのが、ストレスと疲労である。」
「例えば一般の病院や医院を受診した約70万人を対象にしたある調査によると、長い一日の終わりが近づく頃には医師がオピオイド(強力な鎮痛剤)を処方するケースが大幅に増えるという。言うまでもなく、午後4時に予約した患者のほうが午前9時の患者より痛みが強いと考えるべき理由は何もない。同様に、医師のスケジュールが押し気味かどうかも処方とは関係がないはずだ。
にもかかわらず、非ステロイド系抗炎症薬の処方や理学療法の提案は一貫したパターンでは行われていない。医師が予定時刻に遅れそうなときは、副作用が大きいにもかかわらず、手っ取り早い強力な治療法を選ぶ傾向があきらかに強まる。ほかの調査でも、一日の終わりに近づくと、医師は抗生物質を処方する頻度が高まり、注射をする頻度が下がることが判明した。」
監査人の職業的懐疑心も、ご機嫌でないときの方が発揮できるのかもしれません。また、疲労とストレスも適切な判断の大敵なのでしょう。
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