金融庁は、「2024事務年度金融行政方針」を、2024年8月30日に公表しました。
「2024事務年度の金融行政における重点課題および金融行政に取り組む上での方針」とのことです。
30ページほどの資料です。
「金融行政方針(概要)」より。
「コーポレートガバナンス改革の推進」「市場の信頼性確保の一層の推進」、「スタートアップへの成長資金の供給の促進」、「サステナブルファイナンスを推進」(企業のサステナビリティ開示の充実と信頼性確保ほか)など、会計士に関係のありそうな項目もあります。「市場の信頼性確保」には「監査品質の向上」も入っています。
網羅的ではありませんが、いくつか気になった点を挙げてみます。
コーポレートガバナンス改革 の中で、政策保有株式の開示強化をいっています。
「いわゆる政策保有株式の開示の適切性について有価証券報告書レビュー等で検証を行うとともに、政策保有株式に係る開示事項の追加等を検討する。」(4ページ)
スタートアップへの成長資金の供給では、なぜか、「のれん非償却」にふれています。
「スタートアップの M&A を促進する観点から、のれん非償却を内容とする国際会計基準(IFRS32)の任意適用の拡大に向けたさらなる対応を検討する。さらに、我が国の会計基準が多くのスタートアップ等に利用されていることも踏まえ、のれん非償却を含めた財務報告のあり方を検討する。これに関し、東証等とも連携し、決算短信において、経営管理上重要視している指標を業績報告として用いる実務の浸透を図る。」(9ページ)
サステナ開示に関しては、データ基盤の整備ということもいっています(10ページ)。
「国内外でサステナビリティ開示の枠組みの整備が進む中、サステナビリティに係る様々な企業データを、市場参加者が利用しやすい形で集約・提供するデータ基盤への関心が高まっている。こうしたデータの整備のあり方等について、国際的な議論・取組も踏まえつつ、官民が連携して検討を進める。」
暗号資産について。
「暗号資産交換業者における口座数が 1,000 万口座を超える中、暗号資産取引市場が健全に発展するためには、暗号資産交換業者の適切な業務遂行と利用者保護が確保されることに加え、暗号資産について、生活の利便性や我が国の経済成長に資するものであるとの理解と信頼が国民から広く得られることが不可欠であると指摘されている。これらの観点から、国内外における暗号資産に関する取引の動向等を踏まえ、暗号資産に関連する制度のあり方等について改めて点検する。」
「暗号資産について、生活の利便性や我が国の経済成長に資するものである」という認識は、そもそも間違っているのでは。
大手金融グループの監督を強化、金融庁が新行政方針(ロイター)
「金融庁は30日、2024事務年度の行政方針で、大手金融機関やネット上でサービスを行う企業グループが業態や国境を越えてビジネスを展開していることを踏まえ、大手金融グループの経営に対する監督体制を強化すると公表した。「金利ある世界」への移行が進む中で、国内外の金融政策、金利動向などを注視し、その動向が金融システムに与える影響を分析する。増大するサイバーセキュリティに関するリスクについても取り組みを強める。」
「メガバンクを含む主要行等の信用リスクについては、不動産業向けや事業再編資金などの融資状況を確認。有価証券運用や外貨流動性に関するリスク管理体制も検証して、高度化を促す。メガバンクをはじめグローバルに事業を拡大する動きが広がる中、内部監査や本社による海外拠点の管理を含むガバナンス体制についても対話を進める。」
「政策株式の保有意義や縮減計画の進捗を確認するとともに、株式の保有目的を政策保有から純投資に変更した際の開示事項の追加についても検討するとした。」