大王製紙の2012年3月期の決算発表に関する記事。過年度決算の訂正も行ったようです(不正融資や税効果会計の修正とは別の訂正)。
「大王製紙は16日、2012年3月期の連結最終損益が54億円の赤字(前の期は182億円の赤字)になったと発表した。従来予想は25億円の赤字。生産設備の減損損失や保有株式の評価損などを特別損失に計上した。
同社は併せて過去の決算の訂正も発表し、11年3月期の最終赤字額を181億円から182億円に修正した。」
会社のプレスリリースはこちら
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平成24 年3 月期決算の過程において判明した過年度の会計処理の誤りに係る有価証券報告書等の訂正報告書の提出、及び決算短信等の再訂正に関するお知らせ(PDFファイル)
「平成24 年3 月期決算において連結範囲を見直したことに伴う資本連結への影響等の詳細を確認する中で、・・・過年度の会計処理の誤りが判明しました。」
「今回の会計処理誤りが発生した原因は、平成23 年12 月における過年度決算の訂正の原因と同じである、一般に公正妥当と認められた会計基準の理解不足に加え、決算手続きにおける確認不足にあると認識しております。」
ひとつひとつの案件は大きなものではありませんが(連結純資産への影響額は全部で400百万円程度(2011年3月期))、(意図的でないとすれば)不注意でやってしまいそうなミス、関係会社間取引について厳しく解釈したものなど、参考になる事例を含んでいます。
具体的には以下のような事項を修正しています。
・債務超過の関係会社に係る事業損失引当金の計上額の訂正(事業損失引当金を計上した関係会社のうち1 社について、債務超過額に誤りがあった)
・固定資産売却取引の取消し及び当該固定資産に係る減損損失額の訂正(関係会社への土地の売却、その後の買い戻しを、会計上は譲渡が実現していなかったと判断して訂正)
・為替換算調整勘定の計上額の訂正(清算された海外子会社の為替換算調整勘定が未処理だったのを訂正)(会社は別会社に事業が引き継がれ実態としては何も変わっていないため、利益剰余金が変動するのは誤りであると判断していた)
・少数株主持分等の計上額の訂正(連結子会社が当社の他の連結子会社を吸収合併した際に取り消すべきであった消滅した連結子会社に係る少数株主持分が取り消されず、吸収合併後も計上されたまま)
・連結子会社間の固定資産売買取引における未実現損失の訂正(連結子会社間の固定資産売買取引で生じた売却損を未実現損失として消去していたのを訂正)
これが原因になったのか、あるいは、次の監査人にみられるのに備えて厳しく訂正したのかは、わかりませんが、会社は会計監査人の交代を発表しています。
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公認会計士等の異動に関するお知らせ(PDFファイル)
大手監査法人から後任を選ぶ場合、オリンパスの粉飾を結果として見逃してしまった2監査法人を除外すると、こういう結果になるのでしょう。
ちなみに、オリンパスの場合は、粉飾年度に2法人が関与しているため、交代するとすれば残りの2法人から選ばなければなりませんが、PwCはウッドフォード氏の依頼に応じて不正をあばくきっかけとなった調査を行っており、また、トーマツは海外マスコミで騒がれた後に調査委員会を手伝ったという関係があります。4大監査法人がみな関与しているわけであり、交代させたくてもできないのかもしれません。
大王製紙:最終赤字53億円 前会長の特別背任事件響く(毎日)
「また大王製紙は同日、同社の会計監査を行う監査法人を6月末、従来のトーマツから、あらた監査法人に変更すると発表した。前会長の巨額借り入れ事件を調べた特別調査委員会が昨年10月にまとめた報告書で、監査法人の責任にも言及したことを踏まえての措置と説明している。」
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