新型コロナ対策の中小企業向け資金繰り支援で多額の不良債権が生じているという記事。会計検査院が調べたそうです。
「検査対象は日本政策金融公庫の「新型コロナ特別貸付」など政府系金融機関による貸し付け。売り上げが一定以上減った企業への融資は実質無利子・無担保(ゼロゼロ融資)となる。
2020年3月から始まった新型コロナ特別貸付などの債権状況を検査院が調べたところ、23年度末時点の貸し付け実績は前年度比1兆2031億円増の20兆6397億円だった。
このうち回収不能となった債権は1490億円、回収不能と判断された債権が2178億円、不良債権が1兆1965億円に上る。回収不能・困難の恐れがある債権は計1兆5633億円に上り、前年度より約4900億円増えた。
返済期間の延長(リスケ)など貸し出し条件を変更中の債権も前年度比4000億円増の1兆654億円となった。一方、返済に至ったのは8兆892億円。前年度より3兆309億円増えたが、借り換えで完済されたものも含まれる。」
民間の貸付分は...
「民間金融機関による「新型コロナ関連保証付融資」などの状況も調べた。23年度末時点で信用保証協会が承諾したのは38兆2664億円に上った。このうち返済困難となって信用保証協会が肩代わりして金融機関に支払った分(代位弁済)も増加傾向にあり、計4848億円に上った。」
記事によれば、「政府系金融機関などに対し、出資金約11兆円、補助金約4兆円、貸し付け約17兆円に上る財政援助を実施した」とのことなので、金融機関に大きな直接的な影響はないのでしょうが、借りている方は返せなければ倒産です。
「返済が本格化する中、24年の企業倒産件数は11年ぶりに年間1万件を超える可能性がある。東京商工リサーチによると1〜11月の倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同期比16%増の9164件。コロナ下で過剰債務を抱え、物価高でも価格転嫁が困難な中小企業の倒産が増加傾向にある。」
「足元ではリスケによる条件変更も多いが、金利の上昇局面では返済額の増加につながる。東京商工リサーチの坂田芳博情報部課長は「リスケしている企業は業績回復が遅れ体力を消耗している企業が多い。金利負担が重荷になり倒産が増えていく可能性がある」と話す。
金融機関は経営改善や事業再生支援に軸足を移している。坂田氏は「業績回復が見込める企業には伴走支援をする一方で、返済が難しいと判断すれば追加資金は出しづらいのが実情だ」と話す。」
回収困難な新型コロナ「ゼロゼロ融資」、1兆5633億円…この1年で1・5倍に(読売)
「検査院幹部は、「円安や物価高で、多くの中小事業者が経営に苦しんでいる現状を踏まえれば、回収不能額はさらに拡大する恐れが大きい」としている。」
コロナ禍の中小企業特別貸付 1490億円が回収不能に 会計検査院(NHK)
「国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは「審査段階で経営状況などのチェックをかなり緩めてしまったので、早急に融資するという目的は達成できたが、中小企業などのコロナ禍からの脱却や、再建という事業の本来の目的に逆に作用してしまったのではないか。リスク管理債権がこれだけあるので、今後も償却額が同じか、それ以上のペースで増えるだろう」と指摘しています。」
ゼロゼロ融資不良債権2兆円 予備軍1兆円、国民負担に 会計検査院(朝日)(記事の一部のみ)
会計検査院の公表物はこちら。
「中小企業者等に対する新型コロナ特別貸付等に係る貸付債権等及び新型コロナ関連保証に係る保証債務等の状況について」(2024年12月18日)(会計検査院)
日本政策金融公庫は赤字転落です。
日本公庫、1196億円の最終赤字 与信費用の増加で(2024年12月3日)(日経)
「日本政策金融公庫が3日発表した2024年4〜9月期決算は最終損益が1196億円の赤字(前年同期は69億円の黒字)だった。信用保証協会から保険を引き受ける事業で、保険金の支払いに備えて積む保険契約準備金の戻し入れ額が減少した。貸出先の業績悪化に伴う与信関係費用も増えた。」
「新型コロナウイルス関連融資に関する状況も公表した。21年3月末までの貸付先約70万件のうち、24年9月末時点で元金返済中が52.3%を占め、完済などは15.8%にとどまった。返済が厳しく条件を変更したのは7.2%と、24年3月末の6.9%から高まった。」