会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(書籍の紹介)測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?


(注:アマゾンでは定価より高い価格となっているので、一般書店での購入か、電子書籍をおすすめします。)

(宣伝文より)

「「成功へのカギは成果評価にある」――今日あらゆる組織に蔓延している信念だ。しかしわれわれは業績を数字化することに固執するあまり、測定そのものを目的化してしまっていないだろうか。その結果、この「測りすぎ」が組織のみならず個人の生活を破壊しつつあるのだ。

「測定基準の改竄はあらゆる分野で起きている。警察で、小中学校や高等教育機関で、医療業界で、非営利組織で、もちろんビジネスでも。…世の中には、測定できるものがある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない。測定のコストは、そのメリットよりも大きくなるかもしれない。測定されるものは、実際に知りたいこととはなんの関係もないかもしれない。本当に注力するべきことから労力を奪ってしまうかもしれない。そして測定は、ゆがんだ知識を提供するかもしれない――確実に見えるが、実際には不正な知識を」(はじめに)

数値評価が、有害なパフォーマンスをもたらした事例を、いきいきと描いている」ジョージ・アカロフ(2011年ノーベル経済学賞)」

どうしても数字にとらわれがちな会計士にとっても有益な本かもしれません。

会計数値も、その性質をよくわかっていないと、実態と乖離した判断を行うおそれがあります。

先週の週刊エコノミストの書評でも取り上げていました。

測りすぎ
なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?
(みすず書房)

目次より。

「2 繰り返す欠陥
一番簡単に測定できるものしか測定しない/成果ではなくインプットを測定する/標準化によって情報の質を落とす/上澄みすくいによる改竄/基準を下げることで数字を改善する/データを抜いたり、ゆがめたりして数字を改善する/不正行為」

「4 なぜ測定基準がこれほど人気になったのか
判断への不信感/専門職批判と選択の神聖化/コスト病/組織の複雑さの中でのリーダーシップ/その抗いがたい魅力」

「12 ビジネスと金融
能力給がうまくいくときと、いかないとき/金融危機/短期主義/その他の機能不全」

「15 意図せぬ、だが予測可能な悪影響
測定されるものに労力を割くことで、目標がずれる/短期主義の促進/従業員の時間にかかるコスト/効用の逓減/規則の滝/運に報酬を与える/リスクを取る勇気の阻害/イノベーションの阻害/協力と共通の目標の阻害/仕事の劣化/生産性のコスト」

著者は歴史学者です。

原著。題名にTyranny(暴政、圧政など)という強い言葉を使っています。



日本が世界トップの論文不正大国になってしまった理由(DOL)

「「不正を行う大多数は、若手研究者なのです。まず、安定した研究職を得るためには論文を多く発表しなければなりません。研究者としての人生がかかっているから、リスクが大きくても不正を犯すわけです。そして不正の多い国では、研究者の評価が数値化されがちです」

理系の研究者は文系に比べ、論文数などの数値指標で評価されやすい。そのため文系よりも理系の研究者の方が、圧倒的に不正が多くなるのだという。」

「最近は、研究者個人の論文数、論文が引用される数、獲得研究費などがスコア化されランキングされるという。度々話題になる世界大学ランキングにおいても、所属教授や研究員の論文数は重要な基準とされ、政府はその100位以内に日本の大学が多くランクインするよう躍起になっている。そうした「スコア化とランキング偏重文化が諸悪の根源である」と有田氏は言う。」
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