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スルガ銀の組織的不正認定 第三者委、経営責任言及(静岡新聞より)

スルガ銀の組織的不正認定 第三者委、経営責任言及

スルガ銀行の不適切融資問題で、第三者委員会が調査報告書を公表したという記事。会長や社長らが引責辞任しています。

組織的な不正行為を認定し、審査書類などの改ざんでずさんな融資を横行させたのが多額の損失につながったと指摘。中村直人委員長は「経営陣に無責任な営業推進体制をつくった責任がある」と結論づけた。」

「調査対象113人のメールや端末データなどを解析した結果、行員が関わった形で改ざんが疑われる資料795件を検出。債務者が一定の財務力があるかのように通帳残高を偽造したり、融資限度額を引き上げるために現実的な水準を超えた家賃を設定したりした行為を確認した。

不正の主導役元専務執行役員を挙げた。審査部門をどう喝して融資の稟議(りんぎ)を押し通し、承認率は99%を超えていた。不正融資の総額や件数は「調査が困難で、時間的な問題も踏まえ断念した」(中村委員長)。

ずさんな融資や不正行為の原因には、過大な業績目標と行員にかかった過度なプレッシャー審査の独立性の欠如、法令順守意識の欠如などを挙げ、「企業風土が著しく劣化していた」と断定。経営陣が現場に深入りせず放任・許容したことが、営業の逸脱行為の大元とした。」

報告書(要約版)を読むと、元専務執行役員(報告書では実名)が悪者になっているようですが、上位の役員たちが、危ないと感じながら見て見ぬふりをしていたことも強く批判しています。

不正融資が全体でどれだけあるのか、不正があった各融資案件についてそれぞれどれだけのリスクがあるのかなど、会計処理に必要な情報は、調査では得られていないようです(弁護士による調査なのでしかたありませんが)。どうやって引当金の金額を決めるのでしょう。また、これでは、監査不能なのでは。

また、日経などが報じた、創業家関連企業への融資問題は、調査の対象外だったようです。

<スルガ銀>組織意思とみるべき 第三者委・中村委員長一問一答(静岡新聞)

「―不適切な融資の全容は。

収益不動産のローンは1万件以上。調査に何年もかかる。総額や件数は分からない」」

手続きが不正だったからといって、必ず貸し倒れになったり、債務者から訴訟を起こされたりはしないでしょうが、数が多いという理由で調べないというわけにはいかないでしょう。

アングル:地に落ちた地銀の優等生・スルガ銀 揺らぐ財務健全性(ロイター)

引当金のことについてふれています。

「「当社は単体自己資本比率が12.14%であり、十分な健全性を有している」――。スルガ銀の新社長に就任した有国三知男氏は7日、記者会見の冒頭で財務健全性を強調した。自己資金や手元流動性も十分だと述べ、市場が抱く経営への懸念の払しょくを狙った。

しかし、投資用不動産への不適切な融資に対し、貸倒引当金をどこまで積み増すのか、見通しは示せていない。有国社長は「中間決算に向けて自己査定中で、必要なら引当金を積み増す」と繰り返した。

同社の貸出金は3月末で3兆2500億円。このうち、投資用不動産向け融資は約2兆1000億円を占める。融資全体に対する貸倒引当金は6月末で870億円となり、3月末から88億円増えた。6月末の自己資本は3282億円だ。すべての不動産向け融資が問題となっているわけではないが、引当金がさらにかさむようなことになれば、自己資本のき損は免れない。あるアナリストは、最終赤字2000億円ならば自己資本比率は最低限必要な4%を割り込むと試算する。」

金融庁も批判されています。

「スルガ銀のとん挫は、「フォアードルッキングにビジネスモデルを検証する」と打ち出した「森・金融庁のモニタリング方針が機能していなかったのではないか」(銀行アナリスト)との批判さえ漏れる。

不適切融資を検証した第三者委員会は、報告書の中で「他行がまったく採用していない経営手法というのは、逆に言えば採用しない理由もあることを示しており、そのリスクについてきちんと情報を収集した上、採否を議論すべき」と指摘し、ある意味、独自のビジネスモデルの確立を求める監督官庁の方向性にもクギを刺した格好となった。」

「オマエの家族皆殺し」スルガ銀、上司による壮絶な恫喝(朝日)(記事前半のみ)

「「数字ができないなら、ビルから飛び降りろと言われた」「上司の机の前に起立し、恫喝(どうかつ)される。机を殴る、蹴る。持って行った稟議(りんぎ)書を破られて投げつけられる」「ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、オマエの家族皆殺しにしてやると言われた」

「支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げ、空のカップを投げつけられた」「死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責(しっせき)された」「『なぜできないんだ、案件をとれるまで帰ってくるな』といわれる。首をつかまれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」

第三者委が公表した調査報告書には、行員らの壮絶な体験談がつづられている。いずれも融資拡大などの成績が伸びなかったときに叱られた例だという。

銀行業界で異例の高収益を支えてきたのが、不動産に投資する個人向けのローンだった。それを担う個人営業担当の執行役員1人も今回、不正への関与を認定された。

個人営業部門ではこの役員の元で過大な営業ノルマが設定され、支店長以下の職員に達成に向けたプレッシャーがかけられた。その中で不正が横行した。」

会社発表資料はこちらから。

第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について(スルガ銀行)

報告書は300ページ以上あります。要約版は17ページ。要約版だけでも読む価値はあると思います。

調査対象は「基本的にスルガ銀行の収益不動産ローン全般」ということで、シェアハウス関連に限定はされていないものの、創業家関連融資は範囲外だったのでしょう。

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