金融庁の有識者会議で、監査法人ガバナンス・コードの最終案が大筋了承されたという記事。
「5日の会合では(1)監督・評価機能を強化するため、外部の第三者の知見を活用する(2)職業専門家としての人材育成(3)取り組みについて外部に分かりやすく説明する――などの原則を示した。原則通りの組織運営をしない場合には、理由の説明を求める。
5原則の実現に向け、取り組むべき課題を22項目の指針で示した。指針では、独立性を有する第三者機関が監査法人の経営陣の選任・退任や報酬決定のプロセスへの関与を促した。第三者機関は監査法人の担当する企業や企業の株主、市場関係者との意見交換も求める。」
雑誌「企業会計」12月号の解説(4~5ページ)によると、監査法人ガバナンス・コード実効化の重要な鍵は、独立非業務執行役員の任命と、コード遵守状況に関する情報開示だそうです。金融庁のサイトに会議資料として掲載されている案を見ても、その辺がポイントのようです。
監査法人経営陣のリーダーシップ確立へ諸原則=金融庁・検討会議(ロイター)
「金融庁の原則案は、監査法人の経営トップに対し、経営ビジョンを明確に示して組織の末端まで浸透させることを要請。同時に、監査業務の過程で、意図的な不正会計の端緒など「監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼしうるような重要な事項」(原則案)が浮上した場合は、監査法人の経営陣が乗り出して当該企業のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)と厳しく対峙することを求めた。
また、監査法人の経営を監督・評価する機関を設け、外部の第三者をメンバーに入れて第三者の知見を活用することも促した。」
(ロイターの記事で「企業の不正な会計処理を摘発することは、会計士が果たすべき本来の役割ではない」とあるのは、明らかに間違いでしょう。)
「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」(第5回)議事次第(金融庁)
外部の第三者の知見活用については、原則3でふれています。
「監査法人は、監査法人の経営から独立した立場で経営機能の実効性を監督・評価し、それを通じて、経営の実効性の発揮を支援する機能を確保すべきである。 」
少し気になるのは、原則でいっている監査法人の経営からの独立性ではなく、クライアント(特に監査クライアント)との独立性や利益相反の問題です。具体的な指針を見ると、この監督・評価機関は、人事などかなり強い権限を持つようです。そうすろと、個々の監査にも影響力を行使することができるわけであり、監督・評価機関のメンバーにも、当然、クライアントとの独立性(例えばその会社(グループ会社ふくむ)の株式を保有しない、役員を兼務しない、顧問等で報酬をもらわないなど)が必要でしょう。また、会社経営者などをメンバーに招けば、クライアントとの利益相反の問題が出てくるかもしれません(例えば、メンバーである経営者の会社が、クライアントのライバル会社である、クライアントと別の会社の買収をめぐって争っているなど)。しかし、伝えられている今までの有識者会議の議論では、この点は問題になっていないようです。
また、今までは、例えば、会計士でない特定社員の数を制限するなど、監査法人の経営から会計士以外の者の影響力をできるだけ排除する方針だったわけですが、それを180度変更することになるのかについても、議論がなされていないようです。外部の企業や個人が、監督・評価機関を通じて、監査法人を支配する(実質子会社化する)ことを容認するところまでいくのでしょうか。
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