米国の空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループのリサーチ・ディレクターと、グラウカスが「不正会計」を指摘した伊藤忠のCFOへインタビューした記事。
まず、グラウカスの方から。
「「これまで、米国や中国、香港などで投資活動をしてきたが、(伊藤忠が匂わせているような)法的手段に出られたことなどない。法的手段に訴える前に、まずは投資家に対して説明責任を果たすべきだろう」
「伊藤忠はこれまでのところ、我々が指摘した3つのポイントについて、意味のある詳細な説明をしていない。それは、アベノミクスが進めるコーポレート・ガバナンスの政策に反している。伊藤忠は著名な上場企業であるにもかかわらず、このような対応は説明責任と透明性の著しい欠如を示している。(伊藤忠は第1四半期の業績を公表するが、)我々がレポートで指摘したポイントについて、意味のある反応をするべきだ」」
伊藤忠のCFOへのインタビューは、グラウカスの3つの指摘事項と伊藤忠の反論を対比させる形でまとめています。それなりにきちんと答えているように感じられますが、肝心の所は会計事務所(連結の監査はトーマツ、コロンビアの石炭事業に出資している米国子会社の監査はEY、資産評価はKPMGなど)だのみで、自らの責任で決算を開示しているという意識がやや薄いように思われます。
コロンビアの石炭事業については、投資が失敗であったことは認めており「ドラモンドとの合弁会社への投資自体が正しかったとは思っていない。価格が高い時に投資をして、(価格が下がっても)いずれ回復すると考えていた。しかし、これ以上、エクスポージャー(マーケットの変動にさらされる資産の割合)を増やすことはリスクだと考えて、キャッシュコール(資金拠出の要請)があった時に応えなかった」といっています。
持分法から外したことについては、出資比率は変わらないのに、実質判断で外したそうです。
「「20%の持ち分は伊藤忠が持ち続けたが、資金は80%を保有するドラモンドが出した。その結果、合弁会社の表面上の出資比率は80対20で変わらないが、実質的にドラモンドは80%強の権利を持つようになって、我々の持ち分は20%以下になった。その結果、我々が権利を失ったというのは明白だと言うことで、一般投資化をした」」
外したときには時価評価して損益を実現させるわけですが、グラウカスのいっている評価方法は不適切だと反論しています。しかし、評価については、どちらが正しいのかは確かめようがありません。KPMGが見ているのならたぶん正しいのだろうとは思いますが...。
中国最大の国営企業への出資を持分法にしていることについては、伊藤忠のCFOがいっているように、20%持分を持っているのなから、持分法にせざるを得ないのでしょう。
中国の頂新という会社に対する出資を持分法から外して益出しをしたという指摘については、「極めてよろしくない」といっています。しかし、優秀なCFOなら、会社のどの資産に含み損や含み益があるのかは常に把握しているはずで、経営上適切かどうかは別として、目標利益を達成するために、含み益を実現させること自体は別に問題はないように思われます。ポイントは、持分法を外すための、影響力をなくさせるような取引が決算日までに実際に実行されたのかという点だと思いますが、その点はあまり説明されていないように思われます。
日経ビジネスとほぼ同じ内容ですが、簡潔にまとまっています。
↓
伊藤忠CFO「会計処理はすべて適切」 米運用会社の指摘に反論(日経)
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「CITICに対する伊藤忠の出資額は約6000億円に上り、連結自己資本の3割近くに達する計算だ。すでに引き返すのが困難な水域に達している。日中関係が改善の糸口を見いだせないなかで、中国政府が見せしめとして何をしてくるかわからないだけに、伊藤忠が抜き差しならないほど中国に傾斜していることは市場でも大きな懸念材料なのだ。」
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「正直な印象は、比較的どこにでもある決算処理の考え方の違いでとくに大騒ぎするほどのものではなく、ましてや将来的にも「不正決算」と認識される可能性があるとも思えません。」
「伊藤忠もレポート発表当日に反論IRを出していますが、監査法人(トーマツ)から適正意見を得ているとか、持ち分投資の一般投資への区分変更は問題がないなどと繰り返すだけで、最も重要な投資対象の資産性・健全性には全く言及できていません。
ここはグラウカスの栄えある「空売り推奨の第1号」となった伊藤忠としては、所詮は会計上の考え方の問題なので正々堂々と反論しておく必要があります。そうでないと第2、第3の伊藤忠がすぐに出てきて、いつの間にかグラウカスが「正義の味方」のように称賛されるようになり、空売りで大儲けされてしまうことになります。」
伊藤忠の3回目のプレスリリース
当社の会計処理に関する一部報道について(その3)(PDFファイル)
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