東京財団(日本相撲協会がほしがっている公益認定を受けた「公益社団法人」です)という民間シンクタンクが、昨年12月に「日本のIFRS(国際財務報告基準)対応に関する提言」という報告書を公表しました。
岩井克人という有名な学者(専門は経済学)が中心となってまとめたものです。京都大学の徳賀芳弘教授による会計学の観点からの助言を受けたと書かれています。大手監査法人のパートナーもメンバーに加わっています。
提言の概要は以下のとおりです(プレスリリースより)。
1.現行のIFRS導入スケジュールは極めて問題。直ちにスケジュールを再設定せよ
現在の上場企業強制適用の決定スケジュール(2012年を目途に判断、最速で2015年に強制適用開始)は強制適用の既成事実化につながる。直ちに白紙に戻すべき。また、米国基準の国内企業への適用終了期限(2016年3月期まで)も撤廃すべき。
2.IFRSの強制適用は不要、企業の自由意思による選択適用とすべき
IFRSの強制適用は不要。IFRSの会計基準としての品質には理論・実務両面から問題があり、投資家のためにもならない。企業の自由意思による選択適用とすべき。仮にIFRSが有用な基準であれば自然に採用企業は増え、そうでなければ増えず、それで不都合はない。
3.IFRSの内容を変える方向性について「日本の立ち位置」を確立せよ
まずIFRSの中身に関する国民的議論と日本の立ち位置の確立が必要。その際の方向性は「会計の目的は、将来キャッシュフローの予測ではなく過去の業績の結果である」という考え方に立脚すべき。IFRSを業績重視の会計基準とするため、米国、中国等と連携し、IASB(国際会計基準審議会)に圧力をかけることが必要。
反IFRS論の集大成といえるかもしれません(どこかで聞いたような議論も多い)。
「コストの問題」という章には、以下のような記述もあります。
「企業の IFRS 導入を支援するコンサルタント会社やシステム販売の会社などは、クライアントが IFRS 対応にコストをかければかけるほど自社の業績拡大につながることとなる。当然、高コストの会計処理やシステム導入を企業に推奨する強いインセンティブを持っている。日本版SOX法では、まさにそうした経緯で過大なコストをかけた会社が多数出ている。このままでは全く同じことが起こることになる。 」
監査法人が抜けているのは意図的でしょうか。
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