ハリー・マルコポロス氏が米ゼネラル・エレクトリック(GE)の不正会計疑惑を指摘した問題に関するコラム記事。
指摘されているのは長期介護保険の引き当て(責任準備金)の問題とベーカー・ヒューズという会社への投資の評価の問題です。
前者は、保険会計の論点であり、なかなか白黒つけにくい問題ですが(介護費用高騰で厳しい状況ではあるようです)、後者のほうは、日本企業でも指摘されがちな問題のように思われます。
「マルコポロス氏はさらに、GEの出資比率が50%をわずかに超える油田サービス大手ベーカー・ヒューズも問題視している。同社への投資について、90億ドル超の損失を計上し、「あくまで投資」と表明すべきだという。GEはこれまでに、持ち株比率を50%以下にすればベーカー・ヒューズの決算を連結対象として報告する必要がなくなることを明らかにしている。そうなれば会計上の損失が発生する可能性があるが、米証券取引委員会(SEC)に提出された「10-Q」報告書によると、ベーカー・ヒューズへの投資に関する含み損は7月24日時点で約74億ドルとなっている。」
投資先の会社が連結対象であれば、投資先会社の個々の資産・負債が、その性質に応じて、原価基準や時価基準などに基づき計上されます。その集計額(資産合計-負債合計)が、投資全体の価値(時価)と一致していなくても(たとえば74億ドルの含み損であっても)、問題ありません。そういう意味では、マルコポロス氏の指摘は言いがかりのようにも思われますが、投資全体で大きな含み損になっているのであれば、資産の減損の検討が必要でしょうから、リスクが高い状態であるということは言えるのかもしれません。また、今後GEの経営が苦しくなって、この投資先の会社を売却するとなれば、含み損は実現損となります。そうなれば、結果として、マルコポロス氏の指摘は正しかったということになるのかもしれません。
ちなみに、日本基準では、単独決算で子会社株式の評価減を行うと、それに見合うように、連結上ののれんを償却しなければならないというルールがあります。単独決算での子会社株式評価減は、その子会社全体の評価額(時価)に基づいて行うわけですから、子会社投資の時価低迷が、連結上の評価損に結びつくことはありえるということになります。
介護保険の契約者向けに書かれた記事。民間の介護保険は各州が監督しており、保険が仮に破綻しても、最低限の保障は受けられるので、さほど心配する必要はないとのことです。
↓
Amid GE fraud accusation, it might be a good time to check your long-term care policy(CNBC)
ただ、高齢化が進んで保険金支払いが予想を超えていることや、低金利の影響で、保険会社は、準備金の追加積み立てなどを余儀なくされているようです。
Regardless of the merits of the allegations in the report, it’s no secret that the long-term care insurance market has been struggling due partly to an aging population whose claims against their policies have exceeded cost expectations. Low interest rates over many years have also meant lower-than-expected investment returns for the carriers.
For long-term care insurers, getting that number right is proving to be a tricky calculus.
Last year, at least several carriers announced that they had to add large amounts to their reserves. GE announced it would move a whopping $15 billion — later revised to $14.5 billion — over seven years; Prudential Financial said it was adding $1.5 billion to its reserves, and Genworth Financial, $400 million to $450 million.
このCNBCの記事のページには、マルコポロス氏や別のアナリストへのインタビューの動画なども掲載されています。
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