「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)の公表について
金融庁は、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)を、2022年12月26日に公表しました。
平成29年(2017年)3月31日に確定した現行のコードの改訂案です。
コード案は、前文と1から5までの原則から構成されています。5つの「原則」については、それぞれ、「考え方」と「指針」が示されています。
「本原則は、組織としての会計監査の品質の確保に向けた5つの原則と、監査法人の規模・特性等を踏まえて当該原則を適切に履行するための指針から成っており、
・ 監査法人がその公益的な役割を果たすため、トップがリーダーシップを発揮すること、
・ 監査法人が、会計監査に対する社会の期待に応え、実効的な組織運営を行うため、経営陣の役割を明確化すること、
・ 監査法人が、監督・評価機能を強化し、そこにおいて独立性を有する外部の第三者の知見を十分に活用すること、
・監査法人の業務運営において、法人内外との積極的な意見交換や議論を行うとともに、構成員の職業的専門家としての能力が適切に発揮されるような人材育成や人事管理・評価を行うこと、
・ さらに、これらの取組みについて、分かりやすい外部への説明と積極的な意見交換を行うこと、
などを規定している。」(1~2ページ)
前文では、本原則は、上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されているが、それ以外の監査法人において自発的に適用されることも妨げるものではないとされています。また、コンプライ・オア・エクスプレインの手法により適用されるとしています。
また、共同事務所や個人経営の監査事務所は、「監査法人」を「監査事務所」に読み替えて適用するとのことです。
以下、コード案で大きく変更または追加された「指針」を中心に引用します。
監査法人が果たすべき役割
組織体制
そのほか「透明性の確保」では、監査法人が説明すべき項目が拡充されています。特に、加盟しているグルーバルネットワークや、提携関係について、新たな指針を設けています。
グローバルネットワークについては、原則1の「考え方」で以下のように述べており、これを読むと、金融庁は、ネットワークに対して警戒心を抱いているように感じられます(排外的?)。
「監査法人において、グローバルネットワークへの加盟や他の法人等との包括的な業務提携等を通じてグループ経営を行うことが見られるが、このような関係は、共通の監査ツールの開発や IT への投資等を通じて会計監査の品質の確保やそれを持続的に向上させる効果が期待される反面、監査法人の意思決定に影響を与え得ることなどにより、会計監査の品質の確保やその持続的向上に支障をきたすリスクを生じさせる可能性もある。特に、このような関係が、個々のグローバルネットワークやグループにおける契約等によって構築されているため、その関係性や位置づけが明らかにされていない場合、会計監査の品質の確保やその持続的向上に及ぼす利益とリスクを資本市場の参加者等が十分理解することが困難になる。グローバルネットワークやグループと監査法人との関係に関して十分な開示を行うことは、資本市場の参加者等からの監査への信頼性の確保につながるとともに、資本市場の参加者等が、監査法人における会計監査の品質の向上に向けた考え方や取組みなどを適切に評価する上で重要である。」(3ページ)