（少し古いニュースになりますが）米国公認会計士協会（AICPA）が、中小企業の財務報告に関する新しい選択肢の一つとして、中小企業財務報告フレームワーク（Financial Reporting Framework for Small- and Medium-Sized Entities (FRF for SMEs)）を公表したという記事。
FRF for SMEsは、一般に公正妥当と認められた会計基準（GAAP）に準拠した財務諸表を作成する義務のない、非上場でオーナー経営の中小企業向けの選択肢として意図されたものです。
Designed to help smaller, privately held, owner-managed businesses, the FRF for SMEs accounting option is intended for businesses that do not need to prepare GAAP-compliant financial statements. The framework was built to help owner-managed businesses provide relevant, streamlined reporting for users of their financial statements.
非上場会社向けにGAAPを一部修正するプロジェクトも別に行われていますが、今回のフレームワークはそれを補完するものです。
The framework complements the efforts of the Financial Accounting Foundation (FAF) to create exceptions and modifications to GAAP through the recently formed Private Company Council (PCC). The AICPA said in a news release that it fully supports the efforts of FAF, FASB and the PCC to address the private company environment through changes in GAAP.
フレームワークは、堅固（robust）ではあるが、relevantであること、かつ、不必要な複雑さとコストを回避することに焦点を当てています。
The framework focuses on delivering financial statements that are robust but relevant and avoid unnecessary complexity and cost.
測定に関する主要な基礎としては原価を使っており、高額な費用のかかる可能性のある公正価値測定をさけています。
The FRF for SMEs uses historical cost as a primary measurement basis, steering away from potentially expensive fair value measurements.
財務諸表利用者に企業の実態を適切に伝達するため、一定の選択の幅を与えています。また、ターゲットを絞った開示規定となっていること、会計と税務の差異（book-to-tax differences）が小さいこと、（会計士が）調製、監査、レビュー可能な信頼性のある財務報告であることという特徴があります。
The framework also provides a degree of optionality with the intent of allowing small businesses to appropriately communicate their situations to financial statement users, with the needs of those users in mind. In addition, the framework:
・Includes targeted disclosure requirements.
・Reduces book-to-tax differences.
・Produces reliable financial statements that can be compiled, reviewed or audited.
フレームワークは約200ページのものであり、AICPAスタッフと、専門家から成るタスクフォースによって作成されました。
The framework, which is about 200 pages, was produced by AICPA staff and a task force of experts.
専用のサイトを設けて宣伝しているようです。フレームワーク自体もここから入手可能です。フレームワークによる財務諸表の例示や、簡単なパンフレット、解説のための動画などもあります。
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Financial Reporting Framework for SMEs
中小企業向けとはいえ、日本の中小企業向け「指針」や「要領」と比べると本格的です。連結財務諸表が前提となっています。
日本の「指針」や「要領」は、規定の分量を減らせば普及が進むだろうと考えて作っているようですが（とくに「要領」）、日本でも実際に最終的な決算書を作るのは、税理士や会計士ですから、そうした専門家向けにある程度、詳細な規定を設けないと、結局別の参考資料を調べなければならず、かえって手間がかかりそうです。ゆとり教育の教科書のように薄くすればわかりやすくなるというものではないので、200ページというのは適当な分量なのかもしれません。
また、会計士協会が設定したということで、会計士の仕事である監査、レビュー、財務諸表の調製が可能な程度のしっかりした基準になっていることも注目されます。
（宣伝用動画より）
伝統的でなじみのある会計基準を用いていることを強調しています。
Small-Biz Reporting Framework Should Help Lenders（CFO）
（補足）
「連結財務諸表が前提」と書きましたが、子会社がある場合、連結決算を行うか、（全子会社について）持分法を適用するかの選択が認められているようです。
22.03 An entity should make an accounting policy choice to either
a. consolidate its subsidiaries or
b. account for its subsidiaries using the equity method.
