日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ
ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に
日本電産は、2023年3月期の予想を下方修正した原因となった構造改革費用を前経営陣のせいにしているが、実は、前経営者には責任のないドイツの自動車部品メーカーGPM社の買収が原因だという記事。
「日本電産がM&Aを繰り返すことで事業規模を大きくしてきたことはよく知られている。その数は2021年9月までで67社に上る。メディアでは「M&Aの名手」などと喧伝され、永守氏自身も日経BP社から出版した『永守流 経営とお金の原則』で、〈これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛するが、日本電産の元幹部は「M&Aで100%成功はウソ。少なくともドイツでの買収は完全に失敗している」と言い切る。
社内でも「ババを引いた」と言われるのが、このGPM社である。買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めたのである。数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収について2014年12月12日付日本経済新聞でこう述べていた。
「GPMは75年の歴史があり、多くの人が商品イメージを持ち、技術力を高く評価している。環境規制で最低でも世界の車の半分はアイドリングストップが搭載されるようになり、売り上げ、利益の成長が短期で期待できる」」
しかし、GPMは顧客であるイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバーとの間で品質トラブルが発生しているそうです。
「ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。」
トラブルになっている顧客は他にもあるそうです。
「GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。
1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。
「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」」
保守的に、品質問題に関係する費用を引当てするのは悪いことではありませんが、前経営者の責任を大きく見せる(そして経営者交代後の経営成績をよく見せる)ために、過度に引当てするのは、会計基準違反でしょう。会計監査人は、本決算の監査の際にはしっかりチェックし、また、見積りの根拠もきちんと開示させるようにすべきでしょう。