金融庁は、平成25年度有価証券報告書レビューの「重点テーマ審査」及び「情報等活用審査」について、その実施結果を、2015年2月10日に公表しました。
平成25年3月31日から平成26年3月30日までを決算期末とする有価証券報告書の提出会社(4,025社)のうち、抽出した会社(324社)に対して、これら審査を行っています。
「重点テーマ審査」では、以下のテーマに基づき審査対象が選ばれています。
・企業結合及び事業分離等
・固定資産の減損
・連結財務諸表作成手続(子会社管理を含む)
・金融商品に関する会計処理・開示
・偶発債務(引当金の計上を含む)
「情報等活用審査」では、適時開示や報道、提供された情報等を勘案し、審査対象を抽出しています。
審査により発見された問題事例は以下のとおり(金融庁資料より抜粋)。気をつけましょう。
1.企業結合時の会計処理と開示
取得による企業結合の開示について、注記が全くなされていない事例や、注記されていてもその内容について、以下のように記載が十分でない事例が確認された。
・取得原価の配分が完了せず、のれん等の金額が確定しない場合に、暫定的な会計処理を行っている旨の記載はあるものの、配分が完了していない具体的な理由の記載がない事例
・のれん及び負ののれんの発生原因について、具体的な内容を全く記載していない事例
・企業結合が期首に完了したと仮定したときの連結損益計算書に及ぼす影響の概算額について、算定が困難と認められる特段の事情がないにもかかわらず、記載していない事例
2.事業分離等の実施時の会計処理と開示
実施した事業分離等について、注記が全くなされていない事例が確認された。
3. 固定資産の減損(減損の要否の判断)
減損の要否の判断について、以下のように十分でない事例が確認された。
・営業活動から生ずる損益が継続してマイナスになっている等、減損の兆候について慎重な検討を要する状況にあるにもかかわらず、企業独自に設定した基準を適用すること等により、十分な検討を行わないまま減損の兆候が無いものと判断し、その後の検討を省略している事例
・減損損失を認識するかどうかの判定に際して見積られる将来キャッシュ・フローについて、将来の大幅な損益改善を見込んでいるものの、その根拠が十分に説明されない事例
4.固定資産の減損(減損損失等の計上と開示)
減損損失等の開示について、以下のように記載が十分でない事例が確認された。
・回収可能価額(正味売却価額あるいは使用価値)の算定方法の記載が十分でなく、計上した減損損失の金額の根拠が読み取れない事例
・減損損失等を認識した固定資産(のれんを含む)の内容が不明瞭な事例(連結子会社株式の減損に伴うのれんの一括償却であって、減損ではないという理由で、当該損失の内容を注記していない事例を含む)
5.連結の範囲
子会社の範囲の決定に当たって、緊密な者等が所有する議決権が考慮されておらず、本来は子会社となるべき会社が連結の範囲から漏れている事例が確認された。
6. 連結子会社の会計処理及び連結財務諸表への取り込み
在外子会社の決算について、日本基準以外の会計基準を採用しているといった理由で、親会社でその内容を適切に把握していない事例が確認された。
7.金融商品に関する会計処理・開示
保有している金融商品(デリバティブ取引を含む)の内容、リスク、時価等の開示について、以下のように記載が十分でない事例が確認された。
・合理的な理由なく、保有している金融商品の全体でなく、一部についてのみ注記対象としている事例
・為替予約取引等の時価として、当該為替予約等の契約額の期末日における評価額を記載している事例
8. 偶発債務(引当金の計上を含む)
次のような引当金に関して、その内容についての注記が不十分で、引当金の設定対象とした費用・損失の内容や、当期に費用・損失を計上することの根拠について記載が十分でない事例が確認された。
・固定資産の除却に関する引当金:減価償却費や減損損失として認識すべき額と、当該引当金で認識する損失の範囲の違いが明瞭に記載されていない事例
・将来の事象(災害等)への対策に関する引当金:将来でなく当期の費用として認識する根拠が明瞭に記載されていない事例
9.重要性の判断
重要性の判断について、以下のように十分でない事例が確認された。
・質的重要性(当該事項の性質等)について全く考慮していない事例
・金額的重要性について単一の指標のみ(例えば、総資産に対する一定比率のみ)を検討し、その他の指標について全く検討していない事例
10.特別損失の開示
特別損失に属する損失について、事業整理損失や事業構造改善費用といった抽象的な科目名によって掲記しているにもかかわらず、その内容を理解するために必要注記がなされていない事例が認められた。
また、これらの科目名で計上されている損失の中に、減損損失等、他の規定によって、その内容を開示することが求められている損失を含んでいるにもかかわらず、その開示がなされていない事例が認められた。
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