「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」(公開草案)の公表について
日本公認会計士協会、日本監査役協会及び日本内部監査協会は、「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」(公開草案)を、2023年11月27日に公表しました。
「循環取引は、行為の実行者が単独で行うよりも、組織内、組織外の共謀者と通じて、組織の内部統制の盲点をついて行われることが多い。本研究報告は、このような問題意識から、不正の3要素(動機、機会及び正当化)のうち、循環取引を行おうとする動機を生み出す組織風土、組織構造、また循環取引を行うことができる機会をもたらす組織構造、内部統制について検討し、結果的に循環取引を阻止するような組織、内部統制の在り方について、日本監査役協会、日本内部監査協会、日本公認会計士協会が共同して研究し、取りまとめたものである。」(1項より)
以下のような内容の20ページほどの報告書です。
1.本研究報告の目的及び範囲
2.背景
3.循環取引の概要と特徴
4.内部統制による循環取引への対応
5.全社的な内部統制
6.防止的内部統制
7.発見的内部統制
付録 過去事例の紹介 .
何カ所か引用させてもらうと...
「37.循環取引の事例では、担当者が長年にわたり同一業務に関わっていたこともあり知識と経験が秀でていたため、上席者も当該担当者に業務を任せきりにしてしまい、それが循環取引の機会となっていた事例がある。また、不正実行者が「秘匿性あり」や「業界慣行」等を理由として、重要な情報を社内で共有していなかった事例や、特殊な部門や取引であることを理由にして、例外的な決裁ルールが適用されていたような事例もある。」
「58.受注を予定している取引の事業上の合理性を審査することは、循環取引を防止・発見することに有効な内部統制と考えられる。...」
「66.短期間で取引規模が急拡大している商流について、ビジネス環境に照らして不自然に取引金額が継続して増加している等、その要因を合理的に説明できない場合には循環取引等の不正行為が行われているリスクがあるため、取引内容を確認する必要があると考えられる。...」
「70.自社倉庫等を経由せずに販売する直送取引や、ある商流の間に入るだけの取引等、商流の上流からエンドユーザーへの納品が把握しづらい取引も現物の把握が困難であることや帳簿だけの取引となるため、循環取引のリスクが相対的に高いとされる取引形態の一つである。
71.また、担当者以外の知識や経験が少ないため関係者が制限される専門性の高い取引や、担当者以外の関係者が取引に関与する機会が著しく制限される秘匿性の高い取引等、一部の関係者のみで実行され他者の目に触れる機会が少ない取引も、循環取引のリスクが相対的に高いとされる取引形態である。」
「73.直送取引の場合、取引先と共謀することで発注書・納品書を偽造して循環取引を隠蔽することが考えられるが、取引先とは利害関係がない物流会社の証憑を具備することにより、実際に物品が移動したことを確認できるものと考えられる。当該統制によれば、仮に物流会社の証憑がない場合にはその理由を確認することとなり、循環取引発見の端緒となり得るため一定の有用性があると考えられる。」