会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

全上場企業の売上高が変わる恐れ、会計基準の「2021年問題」に備えよ(日経XTECHより)

全上場企業の売上高が変わる恐れ、会計基準の「2021年問題」に備えよ

新しい収益認識会計基準は認知度が低いが、大きな影響があり、会計基準の「2021年問題」だという記事(IT関係者など向け)。

「収益認識基準が求める会計処理に対応するためには経理部門による売り上げの計算方法の変更にとどまらず、業務のやり方や情報システムに変更が必要になる。経理に関係のない社員にも少なからず影響があるのがポイントだ。

実際に会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)は2018年3月の収益認識基準の公表時に、「収益認識基準は全ての上場企業に関係する。これまでASBJが発表した会計基準の中で最も影響が大きいものになる」と表明。」

システム面での対応が進んでいないのではないかとのことです。

「現時点でその準備期間(基準公表から適用までの3年間)の半分が終わったが、収益認識基準への対応するための情報システム面の準備は十分に進んでいないように見える。」

「中堅企業向けのERP(統合基幹業務システム)パッケージを開発する企業のITエンジニアに影響を尋ねたところ、「どのような機能が必要になるか精査している段階だ。顧客にヒアリングをしているが実際の影響が見えている顧客はまだ少ない」との回答が返ってきた。別の会計パッケージベンダーの営業担当者も「パッケージの機能の見直しは進めているが、具体像が見えず実際の作業に着手できていない」と話す。」

「ASBJは収益認識基準の発表時に「企業ごとに考えが変わるため、影響の大きさは業界ごとでも一概には言えない」と説明している。各企業の収益認識基準に対する考え方が固まらないと情報システムの機能として必要な機能が明らかにならないため、パッケージベンダーも「収益認識基準対応」として必要な機能を決めかねている状況なのだ。」

「先のERPパッケージベンダーは「顧客の中には経理部門でも収益認識基準について理解していない企業がある」と話す。大企業では専門部署を作って検討が始まっている一方で、経理担当者が少ない企業ではまだ情報収集、あるいは「名前だけ知っている」といった段階のようだ。」

ITベンダー自身の会計処理にも影響がありますが...

「ところが「上場企業であっても規模の小さなITベンダーや経理担当者が十分に確保できていないITベンダーは収益認識基準を十分に理解していない」と情報サービス産業協会(JISA)の田中岳彦企画調査部次長は話す。JISAはITベンダーが対応するための実務指針「『収益認識に関する会計基準』を巡る論点及び実務対応」を2019年9月に公表し、これからJISAの会員企業への周知を強化するとしている。」

まとめとして...

「POSシステムなどフロントシステムへの影響が中心だった消費増税と異なり、収益認識基準は場合によっては会計システム、販売管理システム、営業支援システムと企業内の様々な業務システムに影響を与える可能性がある。システム変更を含む場合、そろそろ準備をしないと2021年4月に間に合わないだろう。」

収益認識会計基準の認知度が低いのは、他の大きな会計基準変更(税効果、金融商品時価会計、退職給付、減損会計など)とちがって、最終的な財務諸表に与える影響がわかりにくいということがあるのでしょう(だからマスコミも騒がない)。他方、税効果、金融商品、退職給付のような会計基準は、対応方法がどの会社にもほぼ共通するものですが、収益認識は、会社ごとの検討が必要であり、対応に時間がかかる場合もありそうです。記事でいっているように早めの準備が望ましいのでしょう。

記事の中でもちらっとふれていますが、収益認識以外にも、リース会計基準見直しも控えており、こちらも、企業の実務に大きな影響がありそうです。
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