週刊東洋経済の先週号より、オリンパス粉飾事件で責任を問われる可能性のある2監査法人の状況や対応を取り上げた記事。
まず、前任監査人であるあずさ監査法人について。
「風当たりが強いのはあずさだ。同法人は09年6月まで35年にわたりオリンパスの監査を担当。1990年代から続いてきた損失飛ばしも、また国内のベンチャー3社を732億円もの巨額で買収した不適切な取引も、同法人の担当期間内に行われてきた。
ベンチャー3社の買収に伴うのれんの計上に関しては、後に減損を実施させ適正な状態に戻すなど、オリンパスに疑義を呈してきており、あずさは「適正な監査を行ってきたと自信を持っている」(広報・CSR室)と監査批判に反発する。ただ、別のあずさ幹部は「監査先が離れ、潰れる可能性だってないわけじゃない」と懸念。危機感がそうとう募っていることは確かだ。」
現監査人である新日本監査法人について。
「11月24日には企業統治に詳しい久保利英明弁護士が、12月8日にはオリンパスの調査を行った第三者委員会の甲斐中辰夫委員長が、それぞれ自民党の財務金融部会などによる合同会議で講演。「あずさばかりが悪いように言われているが、新日本にも同様の責任がある」(久保利弁護士)と断言した。関係者によると、新日本の責任に焦点を当てる発言が目立ったという。」
「12月12日に専門家から成る調査委員会を設立。事件発覚後、社内調査を行い、問題はなかったと結論づけたが、外部の人材により再調査を行うことを決めた。あずさからの監査交代時に適切な引き継ぎが行われたかを確認するため、あずさにも調査協力を求める予定。率先した情報開示で、批判の芽を未然に潰す狙いだ。」
オリンパスの粉飾は、金融商品投資で生じた損失を海外ファンドに飛ばした損失隠ぺいスキームと、損失をひそかに解消するために、M&A取引を使って資金をファンドに還流させた損失解消スキームから成り立っています。
損失隠ぺいスキームについては、それを見抜けなかったのはあずさの監査期間中ですからあずさの責任でしょう(2010年3月末でまだ一部残っていれば新日本の責任もある)。一方、損失解消スキームの方は、損失をのれんに移し替えて徐々に処理するという会社のスキームを、あずさはのれん減損や前期損益修正をさせることにより相当程度阻止したので、ある程度の責任は果たしているといえます。ただし、のれんを計上したのと期がずれているので、責任がないわけではありません。
新日本の方は、(あずさと会社がもめていることを知りながら?)損失解消スキームの一環であるジャイラス社優先株買い取りの会計処理を、会社の意図するとおりに認めてしまって多額ののれんを計上させ、結果的に、ファンドへの資金還流やその資金からの外部協力者への巨額報酬を見逃してしまったという責任があります(資金還流を見逃したのはあずさも同じ)。
もちろん適切に監査手続を行っていたとしても見抜けない粉飾というのはありうるので、粉飾を見逃したから、ただちに監査人の責任だということにはならないのですが、この点は、報道やオリンパスの報告書(監査人に責任転嫁している可能性がある)を全面的に信じるわけにはいかず、会計士協会の調査や金融庁の検査を待たざるを得ません。
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