西武ホールディングスが、有価証券報告書の虚偽記載問題で、旧経営陣から255億円を回収するという記事。
「西武ホールディングス(HD)は10日、旧西武鉄道の上場廃止に伴う株主への損害賠償に関し、元グループオーナーの堤義明氏ら旧経営陣から255億円を回収することで合意したと発表した。旧経営陣から、西武HDの筆頭株主である資産管理会社「NWコーポレーション」(旧コクド)の株式を取得する。これにより、西武HDと堤氏の間では株式保有を通じた資本関係も完全に消滅する。
西武HDの前身である西武鉄道は、有価証券報告書の虚偽記載問題で平成16年に上場廃止となり、株主からの損害賠償請求訴訟で226億円を支払った。西武側は、堤氏ら旧経営陣に責任があるとして支払いを求めていた。
堤氏は西武HD株を売却して現金7億円を支払うほか、保有するすべてのNW株(214億円相当)で代物弁済する。ほかの元役員4人もNW株を手放す。」
虚偽記載問題といっても、粉飾決算ではなく、大株主の状況のところを上場廃止基準に引っかからないようにごまかしていたというものだったと思います。ちなみに、この事件があったため、J-SOXでは、内部統制監査の範囲が、財務諸表監査の範囲と一致しない変なルールができてしまいました。
会社のプレスリリースをよると、この件に関して特別利益25,555 百万円(現金分と代物弁済分の合計)が計上されるようです。
この会計処理を考えてみると、214億円分は西武HDの株式を保有する資産管理会社の株式で代物弁済ということなので、実質的に、自己株式の無償取得に似ています。自己株式適用指針14項では、「自己株式を無償で取得した場合、自己株式の数のみの増加として処理する」とされており、自己株式無償取得では利益は計上できません。今回のケースでは、旧経営陣に対する求償権の弁済なので、「無償」ではありませんが、求償権は帳簿には計上されていない(だから特別利益が計上される)ので、会計上は無償と同じともいえます。また、資産管理会社が間にはさまっているから、自己株式取得ではないともいえないでしょう。実際、プレスリリースによれば、資産管理会社を持分法関連適用会社としたうえで、連結では自己株式を計上するそうです。
以上のように、利益計上するという会計処理は、微妙なところがありますが、これは、自己株式無償取得は利益計上しないという会計基準の方に無理があるように思われます。
会社のプレスリリース。
当社連結子会社(西武鉄道株式会社、株式会社プリンスホテル)が有する求償債権回収のための契約の締結及び特別利益の発生見込みに関するお知らせ(PDFファイル)
堤義明氏らが西武側に226億円賠償へ 株主訴訟めぐり(朝日)
「堤氏と旧経営陣4人が、保有していた西武HD株の売却益などから計約255億円を支払う。(請求額を差し引いた)残りは裁判の遅延損害金に充てる。西武HDはこの金額を16年1~3月期決算に特別利益として計上する。」
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