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監査法人大手門会計事務所に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

監査法人大手門会計事務所に対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、監査法人大手門会計事務所を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、同監査法人に対して行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました(2019年12月6日付)。

日本フォームサービスの有報等虚偽記載の関連で、ターゲットとなったようです。

以下、指摘事項より抜粋。

業務管理態勢

「最高経営責任者は、実際には、監査報告書の提出期限内に、無限定適正意見を表明することを最優先と考え、職業的専門家としての正当な注意を払っておらず、また、財務諸表の信頼性を担保するという監査法人として社会から期待された役割と責任を果たす意識が不足していた。 」

「品質管理担当責任者を含むその他の代表社員及び社員は、最高経営責任者の考えに同調し、業務管理態勢及び品質管理の基準が求める品質管理態勢が組織的に機能するような最高経営責任者を含む他の社員への牽制をしておらず、相互牽制という監査法人の社員としての職責を果たす意識が希薄であった。 」

「最高経営責任者を含む代表社員及び社員は、監査の基準全般、職業倫理及び独立性に関する法令等、監査の基準並びに監査法人として適切な業務管理態勢及び品質管理態勢を整備するために必要な法令及び基準の理解が不足しており、被監査会社のリスクに応じた監査業務が実施できる水準に達していなかった。 」

品質管理態勢

「当監査法人の代表社員及び社員は、監査リスクの高い上場会社の監査業務を引き継いでいるが、前任監査人が実施した過年度の監査で識別されなかった虚偽表示が存在する可能性について、監査契約の新規の締結に伴うリスクとして識別していないなど、リスク評価が不十分である。

また、適切な勤怠管理を行っていないことから、監査契約の新規の締結に当たって、監査実施者の時間を合理的に確保できているかを十分に評価していない

さらに、監査契約の更新の際のリスクの評価に当たり、特定の被監査会社について監査意見を表明するために必要な情報を入手できない状況、及び継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況を認識しているにもかかわらず、リスクとして識別していない。」

「複数の審査担当社員が、品質管理の基準及び監査の基準を十分に理解しておらず、業務執行社員の説明を過度に信頼し、監査調書を十分に検証しないまま審査を終了する等、適切な審査が実施されていない。」

監査調書について、監査実施日及び査閲日の情報を記載せず、また、最終的な整理期限後であっても、合理的な理由なく修正又は追加できる状況にあることを容認している。 」

「一部の社員が、当監査法人の社員であるにもかかわらず、自身の個人事務所で監査業務を実施しており、公認会計士法で禁止されている社員の競業の状況にある。また、当監査法人は、当該状況を看過している。 」

個別監査業務

「財務諸表等及び内部統制報告書の監査意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手していないと認識しながら、無限定適正意見を表明しているほか、訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に係るリスク評価が不十分、特別な検討を必要とするリスクを識別した売上高、売掛金等の実証手続が不十分であるなどの重要な不備が認められる。 」

「最高経営責任者を含む業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び監査の基準の理解が不足している。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に対する検証が不十分であるなどの重要な不備が認められる。」

「最高経営責任者を含む業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社から提出された資料を追認するのみであり、職業的懐疑心が欠如している。そのため、企業環境の理解を通じたリスク評価が不十分、被監査会社の期末日付近の通例でない重要な取引に関する検討が不十分、不正リスクの評価及び対応手続が不十分、棚卸資産及び固定資産の評価等の会計上の見積りに関する検討が不十分、全社的な決算・財務報告プロセスに係る監査手続が不十分、連結子会社に対する監査手続が不十分であるなどの重要な不備が認められる。」

「最高経営責任者は、人員が不足していると認識しており、また、品質管理の維持及び強化を、当監査法人の経営方針の最優先事項としている」ということで、法人の態勢不備は認識されていましたが、対応がなされていなかったようです。

この監査法人は、1983年設立(上場会社監査事務所登録情報による)で、かなりの老舗です。他の中小監査法人の品質管理はどうなっているのでしょう。
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