為替デリバティブ取引による中小企業の2004年度から2010年9月までの差し引き損失が、集計可能な残存契約で計1400億円あるという調査結果を金融庁が公表したという記事。
金融庁の公表資料はこちらです。平成22年9月30日時点における状況の聞取り調査の結果ということです。↓
中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について(速報値)(金融庁)
22年9月末現在の残存契約数をみると、輸入業者向け40,200件に対し、輸出業者向けは300件しかありません。ヘッジのためのデリバティブ取引であれば、輸出業者向けも輸入業者向けと同じくらいあってもいいはずですが、ほどんと輸入業者向け(外貨を買う取引?)です。
輸出業者は大企業が多いからなのかもしれませんが、少しバランスに欠けています。為替予約の場合で考えると、外貨を買う取引は、当時の円貨と外貨の金利差の影響で、直物レートより先渡レートの方が有利になっていたはずです。為替予約以外のデリバティブの場合も同じでしょうから、見掛け上のこうした有利さにつられて、不必要に長期で多額の契約をしてしまった(銀行も手数料稼ぎのため推進した)例が多いのかもしれません。
損益状況は、通算利益の合計約3,700億円に対し、通算損失の合計約5,100億円で差し引き 約1,400億円の赤字(銀行からすれば利益)です。基準日現在の含み損益ではなくて、わざわざ、過去における損益を通算した数字を出しています。これが、キャッシュベースの損益なのか、基準日現在の含み損益も含めた損益なのかは、資料からは読み取れません。含み損益が含まれていないとすれば、その後の円高の影響も考えると、実際には1400億円よりもはるかに悪い数字なのかもしれません。
協調介入受け円が下落、80円台半ばで推移=NY市場(ロイター3月19日)
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