第三者委員会の調査報告書(最終)の受領に関するお知らせ(PDFファイル)
ヤマウラ(東証プライム)のプレスリリース(2023年9月1日)。
管理部門幹部による巨額横領事件に関する調査報告書の最終版(8月31日付)を受領したとのことです。
内容は、中間報告(→当サイトの関連記事)とさほど違いはありませんが、不正支出の金額を確定させるなどしているようです。
不正の舞台は、ヤマウラの唯一の連結子会社、ヤマウラ企画開発です。横領をしていたのは、ヤマウラの管理本部でマネジャーを務めていた人物(報告書ではA)です。Aはヤマウラ企画開発の経理も担当していました。Aの息子のB、Bが代表取締役をしているC社、その他の(横領スキームに巻き込まれた?)いくつかの会社(D社、E社、F社、G社)も登場します。
最終報告書では、調査対象の年度を拡大し、26億3885万3171円を不正支出と認定しています(報告書7ページ)。
最後の結論部分。
「本件事件は、端的に言えば、 経理担当者で財務において絶大な権限を有していたAが、 小口の支出をしていたことに会社が気が付かないことを奇貨として、長男であるBに対し懇請されるがまま、 約3年半の間に25億 円を超える不正な支出を行ったというものである。 しかも、親会社である ヤマウラにおいてかかる不正支出を行うことが困難であったため、コンプ ライアンス体制や監査が手薄であった子会社である企画開発の預金から引 き出して送金していたものであり、その中には、企画開発の売上だけでな く、 ヤマウラから企画開発に貸し渡されていた資金も一部含まれていたというものである。
確かに、本件事件においては、A個人による特異な犯行であり、 A自身 の規範意識や違法性の意識の著しい鈍磨によるものではあるが、他方で、 それを許容した会社側の対応、 特にA自身を盲目的に信頼し多大な権限を 与え、上司を含む複数従業員によるチェック体制が全く採られていなかっ たこと、子会社である企画開発に対しては、 コンプライアンス体制やリスク管理、 必要とされる決裁や監査が不十分であったことに起因するもの であることを看過してはならないと考える。」(同46ページ)
不正が行われた期間の後の方では、Aの息子であるBやBの会社(C社)に多額の資金が流出していたようです。岸田総理、ビッグモーターにつぐ、バカ息子スキャンダルだったのでしょうか。
監査人に対する批判もなされています。
「企画開発に対する預金通帳や帳簿に対する監査 (法) 人による会計監査も不十分であったと解される。 預金残高と帳簿残高 の不整合のつじつま合わせをAが行ってきたことに対し、小口 の支出に対しては容易に気づき得なかったとしても、 B関連で の不正支出に関しては、ここまでその金額が甚大なものになるまで気づき得なかったということは問題であったと言わざるを得ない。殊に、 F社との取引内容に関しては、売上の計上を 中心に原価率等に問題がなければそれ以上の監査を行ってきてはいなかったと推測されるが、 未収金の摘要が多数登場すること等について不信を抱き (資料の提出が遅れていたことも含 め)、預金通帳そのものを確認するなどして、 不適切な支出が あることを看破すべきではなかったかと思われる。」(同41ページ)(F社はヤマウラ企画開発と取引のある、不動産ディベロップメント事業を行っている会社)
もしかすると、いわゆる仕訳テストを適切にやっていれば、不正発見のきっかけをつかめたような事案かもしれません。また、分析だけでは不十分で、証憑の現物を見るべきだったのでしょう。資料が出てくるのが遅いというのも、リスクが高いと感じるべき事象です。もちろん、報告書に書いてあるのは、会社が依頼した第三者委員会の見方にすぎず、監査法人の方にも言い分があるでしょう。