破綻した取引所FTXは「最悪の企業統治」、新CEOが痛烈に非難
破綻したFTX の新CEOに就任したジョン・レイ氏(エンロンの清算を手がけた63歳の弁護士)が、裁判所への提出書類の中で、FTXの崩壊を「最悪の企業マネージメント」と呼んで厳しく非難したという記事。
「「私のキャリアにおいて、今回ほどの企業統制の完全な失敗を見たことがない」と、レイは11月17日に公開されたデラウェア州の破産裁判所の書類で述べ、FTXには「信頼に足る財務情報の開示」が全くなかったと批判した。
ベテランの破産弁護士である彼は、FTXの経営状況が前例がないもので、「海外の誤った規制監督」と「経験の浅い小規模な個人のグループ」によってコントロールされていたと指摘した。」
「レイはまた、FTXと投資会社のアラメダリサーチの財務諸表が、監査を受けずに作成されており、その内容が信頼できないと繰り返し述べている。彼は、別の提出書類においてもバンクマンフリードを非難し、彼の無秩序な経営スタイルや、ここ最近の不注意なツイート、信頼できる記録がほとんど残されていないことなどを非難した。」
総資産数兆円規模の企業の財務諸表が会計監査を受けていなかったということでしょうか。FTXはバハマに本社を置いているそうですから、現地の会社法で会計に関する規定が不備であればそういうこともありうるのかもしれませんが。
なお、「企業統制」という言葉は、他の報道の訳だと「企業統治」となっています(Forbes記事も見出しは「企業統治」)。
FTXずさん経営「前代未聞」 絵文字で決済許可、発言は自動削除(Yahoo)(毎日新聞配信)
「レイ氏はエネルギー大手エンロンの清算などを引き受けた破綻企業管理のプロフェッショナル。提出書類で「企業統治がまったく機能せず、信頼できる財務情報がない。前代未聞の事態だ」と驚きをあらわにした。
提出書類によると、財務諸表は借入金が少ないなど不自然な点があり、顧客からの預かり資産が適切に計上されていなかった。顧客資産の不正流用に加え、会社の金で社員の自宅や私物を購入していた疑いもあるという。
バンクマンフリード氏は発言が自動削除されるアプリを使って社員に指示を出していた。記録が残らないようにしたとみられる。取引の決済は担当者がオンラインチャットで申請し、上司が絵文字で許可していた。資産管理がずさんだったため、数億ドルを不正に引き出された可能性がある。」
FTX「前代未聞の経営」裁判所資料で新CEOが批判 記録不十分、資金流用疑い(日経)(記事冒頭のみ)
「経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングのずさんな経営が明らかになった。詳しい財務状況はいまだに不明で負債総額も確定できていない。創業者サム・バンクマン・フリード氏個人への融資など、会社資金の私的流用の疑いも浮上した。実態の解明や債権回収に至るまでに相当な時間がかかる可能性がある。」
これからも、さまざまな乱脈経営が明らかになるのでしょう。
FTXが発行するトークン「FTT」が破綻の元凶なのかもしれません。
仮想通貨業者FTXが経営破綻、“感染”という倒産ドミノは広がるか(日経ビジネス)(記事前半のみ)
「FTXのリスクが明らかになったのは、米仮想通貨メディアであるコインデスクが11月2日に掲載した記事だった。コインデスクはFTXの姉妹企業である投資会社アラメダ・リサーチの貸借対照表を入手し、同社の資産の大半は同グループであるFTXが発行するトークン(電子証票)「FTT」だったなどと報じた。
11月6日には世界最大の仮想通貨交換業者であるバイナンスのチャンポン・ジャオCEOが、保有するFTTの売却を決定。FTXに対する信用不安はさらに悪化した。FTT価格は暴落し、FTXの破産を恐れ出金しようとする顧客が殺到。信用不安などから市場が混乱し取引が不可能になる「流動性危機」が一気に顕在化した。FTXが顧客資産をアラメダに不正流用した疑いも浮上している。」
「FTXの破綻を受けて仮想通貨価格は大幅に下落。22年11月2日時点では3800円程度で推移していたFTTは、11月16日時点で220円前後まで急落している。」
日本のASBJでは、企業がトークンを発行したときの会計処理を検討しており、また、経団連がweb3推進だといってトークン保有に関する税制改正を求めています。検討するのは結構ですが、トークン自体がリスクが高いあやしいものだという認識をもってやってほしいものです。グループ会社間や、関連当事者との間で、トークンを発行すれば、いくらでもトークンの価値を水増しできるリスクはありそうです。
今後の見通しは...
情報BOX:FTXの破産法申請、予想される今後の展開(ロイター)
「消息筋によると、バンクマンフリード氏は自分が所有する投資会社「アラメダ・リサーチ」の経営改善のため、FTXの顧客資産100億ドルをひそかに流用し、このうち少なくとも10億ドルが行方不明という。
FTXは新経営陣の下で仮想通貨7億4000万ドルの所在を特定し保全したが、これは同社が債権者のために取り返したい分の「ごく一部」でしかない。」
「バンクマンフリード氏は昨年、顧客がFTXのプラットフォーム上に持つ資産が計150億ドルと主張したが、同社はこの金額が妥当と認識できていない。レイ氏の文書によると、FTXは顧客からの預かり資産をバランスシート上の資産に載せておらず、前CEO下で用意されたバランスシートも必ずしも信用できるものではない。
FTXは破産法適用申請の日に正式な承認なく引き出された3億7200万ドルなどについても回収を試みている。17日の提出書類によると、同社は再建チームが把握していない別の仮想通貨ウォレットについて、共同創業者らがもっと知っている可能性があるとみている。」
「破産法11条下では会社からの資産回収は停止される。顧客はもし取り返せるとしても、どのぐらい取り返せるのかを裁判所が決定するのを待たねばならない。裁判所にとって重大な問題の1つは、仮想通貨が顧客のものなのか、FTXの所有物なのかの判断だ。」
「FTXの破綻前に資産を引き出した顧客も逃げ切れたとは必ずしも言えない。裁判所がFTXに対し、引き出された分の返還請求を認める可能性がある。引き出せていない債権者に対する支払いとより同等にできるようにする狙いだ。詐欺が絡む事例では、返還請求期間が何年にも延びる可能性がある。」
FTXの日本法人は日本の規制に従っているはずですが、親会社の破産手続の影響を受けて、出金が停止されているそうです。
暗号資産業者、規制見直し必要かは予断もって言えず=鈴木金融相(ロイター)
「金融庁の栗田照久総合政策局長は、FTXの日本法人、FTX Japan(東京都千代田区)で現在、出金サービスが停止されていることについて、親会社の米破産法適用申請などに関連したものと説明。金融庁として顧客保護を第一に日本法人の対応をみていく姿勢を示した。」