地銀再編で「負ののれん」が注目を集める理由 100億円単位の特別利益でも、素直には喜べず
地銀の再編で、負ののれんが注目されているという記事。
コンコルディア・フィナンシャルグループの例をあげています。
横浜銀行の2023年4~6月期の純利益は、前年から90%も減少しましたが...
「一方で、持ち株会社のコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)の決算には異なる景色が広がる。4~6月期の純利益は203億円と、前年同期比でむしろ17%の増益となったのだ。
理由は「負ののれん」だ。横浜銀行は6月、県内2番手の神奈川銀行を買収した。買収額が神奈川銀の純資産額を下回ったことから、コンコルディアFGの連結決算において、155億円もの負ののれん発生益を計上した。」
買収された企業の資産・負債を時価評価した上でのれんを算定するので、買収額が純資産(簿価)を下回れば必ず負ののれんが発生すると限りませんが、PBRが1倍を割っていれば、負ののれんになることが多いでしょう。
再編を行って負ののれん発生益を計上した銀行は、その使い道を考えているそうです。
コンコルディアの場合は...
「横浜銀は2023年3月期に逆ザヤに陥った外債の損切りを断行。186億円もの損失を計上した。それでも3月末時点で逆ザヤ状態の外債は簿価ベースで1800億円残っており、この処理が経営課題となっていた。
そこで目を付けたのが、神奈川銀買収に伴って発生する負ののれんだ。横浜銀は4~6月期に外債の現物と外債を組み入れた投信を売却し、206億円の損失を計上。一方コンコルディアFGの連結決算は、同時期に計上した負ののれん155億円と相殺する形で例年と遜色ない水準に着地した。」
他の再編でも100億円規模の負ののれんが発生するそうです。
「負ののれんを享受するのはコンコルディアFGだけではない。長野県の八十二銀行は6月、同県2番手の長野銀行を株式交換で完全子会社化した。これに伴い、負ののれんとして173億円を計上している。
10月には福岡銀行を中核とするふくおかFGも、福岡中央銀行を完全子会社化する。株式交換比率から試算すると、負ののれんが200億円程度発生する見込みだ。」
「ふくおかFGが巨額の負ののれんを計上するのは初めてではない。2019年4月には長崎県の十八銀行がグループ入りしたことで、2020年3月期決算で1174億円もの負ののれんを特別利益に計上した。
同じ決算では、与信費用として前期の12倍にあたる614億円を引き当てた。当時はコロナ禍発生当初ではあったが、コロナ禍を直接の理由とした引き当ては約90億円にすぎない。大部分を占める約420億円は、将来の景気悪化に備えた予防的な引き当てだ。「十八銀との経営統合による負ののれんをうまく活用した」(地銀関係者)。福岡中央銀行との経営統合に際しても、負ののれんが「活用」される可能性がある。」
「予防的な引き当て」というのは、会計基準違反の利益操作のような気もしますが、金融庁も容認しているのでしょう。
地銀は、PBRが低い傾向にあり(地銀の「超低PBR」問題、長期ビジョンが重要に-動き始めた銀行も(ブルームバーグ))、買収すれば負ののれんが発生する銀行が多そうですが、だからといって、それを狙って買収するのも不健全でしょう。