欠陥エアバッグのタカタを取り上げた記事。
会計処理についてふれている部分。
「肝心のタカタの経営は今年度末(来年3月末)の決算を乗り越えることさえ覚束ない。自動車メーカー各社が巨額のリコール費用を立て替えており、タカタに支払いを請求した途端、同社は債務超過に陥るリスクがあるのだ。」
「タカタ製のエアバッグの最大のバイヤーだったホンダは、問題のリコール費用として、一昨年度(2015年3月期)に1200億円、昨年度(2016年3月期)に4360億円、この2年間の合計だけで5560億円の引当金を積んだ。
この引当金の中には、タカタが負担すべき費用の立て替えも含まれている。両社はリコール費用の分担額に合意していないとされるが、仮に折半(2780億円)としよう。この金額はタカタの純資産額(今年9月末で1240億円)を大きく上回るため、ホンダが請求した途端、タカタは債務超過(実質経営破たん)に陥ってしまう。
実際には、外国メーカーを含めるとタカタのエアバックをリコールしている自動車メーカーは12社程度ある。リコールが進めば、いつ、どのメーカーが立て替え費用の返済を迫ってもおかしくない。
つまり、極端なことを言えば、論理的には、今日であれ、明日であれ、大手自動車メーカーが立て替えリコール費用の請求に踏み切った途端、タカタは破綻する。そういう綱渡り状態に直面しているのである。」
直近の決算短信を見ると、一応「継続企業の前提に関する重要事象等」を記載しています。
平成29年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(タカタ)(PDFファイル)
「当第2四半期連結会計期間におきましては、当社米国子会社の一部事業を売却すること等でキャッシュ・フローはプラスとなったものの、返済期限を迎えた借入金の一部について、より短い借入期間による借換え実行となる等の状況が継続している他、四半期連結財務諸表に関する注記事項(四半期連結貸借対照表関係)偶発債務記載の(1)市場措置、(2)エアバッグ製品に関連する訴訟等に関連して多額の費用等を負担する可能性があり、引き続き当企業グループには継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。」
偶発債務の注記でより詳しく記載しています。「自動車メーカーと当社は、今後当企業グループの費用負担割合及び負担金額について協議することが予定されており、現時点で費用負担割合を合理的に見積ることは困難であります」といっています。
リコールは徐々に行われており、その総費用を見積もるのが困難だと言い訳するわけにいきません。費用負担割合が未定だから引当てできないという主張なのでしょう。
タカタ再建 「私的整理を希望」 安定供給に支障(産経)
タカタのエアバッグ事故が提起する2つの問題(ダイヤモンドオンライン)
「ここまでの過程で、指摘したい点がいくつかある。
まずは、リコール制度はそもそも完成車メーカーが市場供給責任で対応するものであること。リコール制度において、(1)危険責任の原則、(2)信頼責任の原則、(3)報償責任の原則、といった「製造物責任三原則」から考えてみれば、本来、向き合うべきは、自動車を完成車として製造して販売する自動車メーカーであるはすだ。
もちろん、タカタの責任は免れない。タカタ製エアバッグの不具合について「タカタの製造プロセスに問題あり」と原因が特定され、すでにリコール済みのものがある。また、その後の調査で、「高温多湿環境下でタカタのインフレータのガス発生剤として使う硝酸アンモニウムが原因である」と結論づけられつつあるからだ。
責任という観点では、タカタという企業がエアバッグだけでなく、シートベルトやチャイルドシートなど安全関連製品メーカーであり、交通安全など社会貢献を目的とする「タカタ財団」も有していながら、オーナー系の企業体質と危機管理対応のまずさを指摘されてきたのは、やむを得ない状況もある。
それでも米国のエアバッグ・リコールの動きは、日本の部品企業、タカタを矢面に立たせるという、米国大統領選への政治的な背景もちらつく。つまり、米自動車大手のロビー活動が突き上げたことでのバッシングでもある。」
当サイトの関連記事(タカタが硝酸アンモニウムを使っていることについて)
その2(リコール費用の見積りについて)
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