証券取引等監視委員会は、株式会社サイバーファームに係る有価証券報告書の虚偽記載について検査した結果、「重要な事項につき虚偽の記載がある」有価証券報告書を提出した事実が認められたとして、課徴金納付命令発出の勧告を2008年10月31日付で行いました。課徴金の金額は、300万円です。
「株式会社サイバーファームは、平成18年3月31日、売上の前倒し計上により、連結経常損益が862百万円(百万円未満切捨て。以下、連結経常利益額及び連結当期純利益額について同じ。)の利益を上回ることはなかったにもかかわらず、これを1,245百万円の利益と、連結当期純損益が139百万円の利益を上回ることはなかったにもかかわらず、これを522百万円の利益と記載するなどした連結損益計算書を掲載した平成17年12月期有価証券報告書を沖縄総合事務局長に対して提出した。」
IT関連「サイバーファーム」が粉飾決算
サイバーファームは、大証ヘラクレス上場。問題とされたのは、よくありそうな売上の先行計上です。
「勧告によると、同社は平成18年3月、本来はまだ業務が完了していないコンサルタント事業などの売り上げの一部を前倒し計上し、3億8300万円の経常利益を水増しした虚偽の内容の有価証券報告書(17年12月期)を提出した疑い。」
ただし、このほかにIXIの架空循環取引事件に関与した疑いなどがあるようです。
「関与の疑われた架空取引について、監視委は調査で、サイバーファームの資金が複数社を経由し、また同社に戻るという不自然な資金の流れがあることを確認したものの、「取引が架空であることの証明には至らなかった」(同委員会)とし、現段階での立件は見送る方針。」
金融庁のプレスリリースでも「連結経常損益が862百万円の利益を上回ることはなかったにもかかわらず」といった言い回しになっており、862百万円が正しい利益金額であるとは断定していません。もちろんこれに限らずほかの事案でも断定できるものではないはずですが・・・。
他方、会計監査であれば、手続をやっても決算が適正であるという心証を得られなかった場合には、意見不表明や限定付き意見となります。監視委が「不自然な資金の流れがあることを確認した」となると、その期の監査意見を再検討する必要があるかもしれません。ただし、どういう場合に過去に発行した監査報告書を取り消すことができるのか明確なルールはないので、難しいところです。
証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告に関するお知らせ(PDFファイル)
過年度決算短信の一部訂正及び訂正報告書の提出について(PDFファイル)
会社側の言い分では「今回の決算訂正につきましては、平成17年、18年度だけの訂正であり、進行期である平成20年12月期等他の事業年度には影響を与えない極めて範囲の狭いもの」だそうです。また、会社のプレスリリースによれば、会社の特別調査委員会は、弁護士11名、公認会計士4名を含む大掛かりなものだったようです。監視委に対して相当理論武装したのでしょう。
サイバーファームに課徴金300万円勧告 報告書に虚偽
この記事によれば、会社が提出した訂正報告書について「監視委は「訂正後の報告書が正当なものだとは考えていない」と異例の認識を示した」そうです。
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