監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会の第3回(9月30日開催)の議事録が金融庁のサイトに掲載されました。
監査法人のマネジメントと個々の監査における判断との関係について、議論があったようです。
「監査法人と個々のパートナーの意思決定の関係という論点です。これについては、記載のとおり、監査契約の更新とか解除といった大きな判断ももちろんありますが、個別企業の監査における会計上の論点に関する監査の判断、これについても重要性に基づいて最終判断者を決定していく。そして、最も重要な個別監査の判断は監査法人の執行機関で決定をしていくと、そういう形で重要性に応じて判断者をしっかりと決めていくということが重要ではないかと考えております。」(石原メンバー)
監査法人の経営陣が個々の監査判断に関与すべきという意見は、他の委員からもあったようです。
これに対して、会計士の委員は、監査意見決定までのプロセス(関与しているパートナーだけで決められるわけではない)を説明して、反論しています。
これは会計士側の意見の方が正しいように思われます。(重要性がある会社にしぼるとしても)物理的に無理でしょうし、また絞り込むことができるくらいなら、経営陣が関与しなくても品質管理部門などで対応が可能でしょう。へたに経営陣が関与して、監査法人の売上のことを考えて意思決定されても、逆効果でしょう。
もちろん、担当パートナーと審査担当者の意見が対立し、その対立が解決されないまま、上に上がってくるということになれば、最終的に経営層が判断することもあるわけですが、それはまれなケースでしょう。
また、オランダでは監査事務所のガバナンスコードというのは使われていないという話も出てきました。
「先日、ここにいらっしゃる初川メンバーと御一緒に、監査法人のローテーションの状況を調査するため欧州に行ってまいりました。その際に、ガバナンス・コードの話も少し聞いてまいりました。詳しくお話すると時間がかかるので、1点だけお伝えしようと思います。こちらの資料では、イギリス、オランダのガバナンス・コードが説明で参照されていますが、実はオランダの現状として、今、前に策定したガバナンス・コードはアウト・オブ・タイムといいますか、今は誰も使っていない、ということが判明いたしました。
なぜそうなったかといいますと、コードの中身が組織の枠組みの話などが中心となっており、監査品質を高めるということについて、実効性が担保できなかったということでした。簡単に申し上げますと、ガバナンス・コードができた後も、不正会計事案の発生に終止符が打たれなかったらしいのです。現在は、新しいアプローチでガバナンスの強化をはかっているとうことでした。イギリスのガバナンス・コードは現在も機能していると聞いておりますが、オランダの状況はそれとは異なっているということをまず申し上げたいと思います。」
オランダでは監査事務所のガバナンスコードが役に立たないという判断がなされたわけですが、日本は検討を始めてしまったので、何か出すのでしょう。
最後の方で、外部の目を入れるという論点について、事務局から外部者の要件に関する質問がなされています。
「第三者の方を入れて、外の目を入れる、あるいは公益の観点からの目を入れる、それはわかるんですけれども、それをさらにかみ砕いていくと何なのか。例えば今、八田先生からあった中で、私も監査法人の関係の方から問われることがあるんだけれども、独立の第三者みたいな方を入れようという議論が仮にこういうところで起きるとしたときに、例えば独立の第三者というのはなかなか探すのが難しいというふうなことをおっしゃられる。
そういう中で、おっしゃった、他の法人とかを卒業された会計士の方を雇うみたいな話というのはどうかというようなことを質問されることもあるんだけれど、外からの目というのが、会計士の方々だけでやっていると1つの見方になってしまうから外の目を入れようというのが目的だとすると、ほかのところの出身の会計士の方を入れてもあんまり効果はないかもしれない。あるいは、八田先生も言われた、マネジメントの経験がやや足りないところを補うという部分が目的の中にはあるのか。あるいは、公益の視点といったときに具体的にどういう人がイメージされるのか。
上場会社に対して独立社外取締役を置くべきではないかというのがコーポレートガバナンス・コードなんかにも書いてあるわけですけれども、そこでは外からの目というようなこともありますが、同時に少数株主の保護みたいな、そういう法的な位置づけもあると思うので、その点は多分監査法人の場合はちょっと違うんじゃないか。そう考えると、その目的は何かということをどうイメージするか。最終的にどういう人を選ぶかはそれは各法人が決めることなんだろうと思うのですけれども、コードはどういう考え方に立ってつくっているのかを問われたときに、どういうようなイメージを持って今後作業していけばいいのか、もしご意見あればお聞かせいただきたいなと考えます。」(池田総務企画局長)
会計士を排除しないけれども...という意見が多かったようです。
その中で比較的積極的なのが八田委員です。
「同じところで育った人は問題でしょうが、違うところの出身者であれば、どのぐらい近いか遠いかわかりませんけれども、それは1つ候補として私はあるなと思います。例えば初川メンバーがドメスティックな体制の法人の実態をご覧になったら、いろいろな意味で驚くことがいっぱいあると思うんです。そういう意味で、どっちがいいか悪いかではなくて、そういった目を披歴されることは経験値としてあっていいのかなというレベルで私申し上げているのです。」
八田委員の別の発言から。
「...当然に組織としてのサステナブルな運営を監査法人もしていかなければならない。それを成長というのか利益追求というのか言葉はわかりませんけれども、少なくとも安定的に組織運営をしていくためには、明確なビジョンがあって、具体的な戦略が示されなければならない。さらに言えば、具体的に中期経営計画ぐらいを持たなければならない。それに対してどう運営していくかということがあるわけですが、なかなかそれを明確に意識している監査法人は少ないのではないかと思います。我が国の監査制度そのもののインフラが非常に脆弱だということもあって、ある時は大量採用してみたり、またある時は大量解雇してみたりと、よくわからないのがありますから。」
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