スルガ銀行の定時株主総会に「被害者弁護団」が出席し、投資用のアパート・マンション向け融資の不正をめぐって紛糾したという記事。弁護団は、不正はシェアハウス投資だけではないという立場です。
「29日の総会で複数の株主が「(アパート・マンション融資で)不正融資による被害が出ている」と追及。「議場ではやじが飛び、議事が混乱したため、総会を途中で打ち切った」という。
アパート・マンション融資は「一棟収益ローン」と呼ばれ、今年3月末の残高は1兆960億円で全融資の47%を占める。不正が発覚し、金融庁が2018年10月に行政処分を出したシェアハウス向け融資が2000億円程度だったことを考えると、問題化したときのインパクトは大きい。
もっとも、弁護団の主張するように不正があったと決めつけるのは時期尚早だ。当時を知る関係者によると、スルガ銀も、立ち入り検査した金融庁も一棟収益ローンでの不正の有無は「厳密に調査していない」からだ。」
調査していないというのは、調査すると不都合なことがどんどん出てくるからなのでしょうか。
弁護団の言い分は...
「今年5月、「被害者弁護団」が発足し、風向きが変わった。株主総会後に記者会見した弁護団によると、参加するアパート・マンションの所有者は29日時点で144人。1人あたり平均1~2棟を所有し、1人あたり2億円以上の借金があるとみられる。
シェアハウス向け融資でも被害救済を引っ張った河合弘之氏(スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団長)も「アパート・マンション融資はスルガ銀がより主体的に顧客を巻き込み悪性が強い」と訴えた。」
ノジマとの提携解消は、円満なものではなかったようです。
「29日の総会では提携解消を申し入れたノジマが嵯峨行介社長ら取締役の選任など2議案に反対票を投じたものの、賛成多数で可決した。」
スルガ銀総会、不正融資で紛糾 社長はノジマに言及せず(産経)
「スルガ銀ではシェアハウス向けの不正融資が社会問題化したが、5月にアパートやマンション向けでも被害があったとして新たな弁護団が結成された。嵯峨氏は不正が確認された場合は被害を回復する姿勢を示したものの、個別に検討すると強調。一括での解決を求める株主の怒号が飛び交ったという。
資本・業務提携の解消を視野に協議を申し入れている家電量販店大手ノジマについて、嵯峨氏は言及しなかった。別の幹部がノジマからも役員人事案の提案を受けていたと説明するにとどまった。」
提携解消は、重要な問題のはずなのに、株主に説明しないというのは、どういうことなのでしょう。
アパート・マンション融資について、KAMではどうなっているのか、有報を見てみました。
「個人債務者の投資用不動産融資(シェアハウス関連融資を含む。)に係る貸倒引当金の算定基礎となる債務者区分の判定及びシェアハウス関連融資に係るキャッシュ・フロー見積法による貸倒引当金の見積額」という見出しのKAMが記載されています。
シェアハウスについては、その中の独立した項目として比較的細かく書いていますが、アパート・マンション融資については、「個人債務者の投資用不動産融資」ということで、一般的な対応(監査手続)しか書いていないようです。また、シェアハウス融資も含めて、融資の際に不正があった(あるいは不正疑惑があった)ということについては、KAMではまったくふれておらず、不正対応の特別な手続が行われたかどうかは、不明です。監査報告書利用者は、不正・不正疑惑に対して、適切な手続が行われたかどうかを、KAMを通じて知りたいはずなのに、それにこたえていません。
KAMの一部(スルガ銀行有報より)。
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