グーグル、アップル、アマゾンなどの巨大IT企業にどう立ち向かうかという日経「経済教室」の連載記事で、税金の問題が取り上げられていました。
従来のルールでは対応が難しくなっており、特に法人税が大きな問題をかかえているそうです。
「グローバルな経済活動が一般化する中で、国境の外では直接に権限を行使できない各国当局による課税には困難が伴う。特にデジタル経済は、物理的な場所に全く制約されないばかりか、経済活動の場所の特定が不可能な場合が多く、従来の国際課税ルールによる対応が難しくなっている。特に大きな問題に直面しているのは法人税である。」
「国際課税においては、経済活動の行われた国における課税を源泉地国課税と呼ぶ。デジタル経済の下では、源泉地国課税をどの国でどれだけ課すのかを決めることが困難になっている。世界中で経済活動をするIT企業は、低税率国に利益を集中させることで、高税率国での税負担を従来よりも容易に回避できる。源泉地国での課税が困難になることは、IT企業が自国内で活動していると考える国にとって大きな問題である。」
もちろん、「BEPSプロジェクト」などの対応は進められており、この解説記事でも紹介されています。
「現在、経済協力開発機構(OECD)と20カ国・地域(G20)を中心に精力的に進められている「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」はそのような対応の一環である。目的の一つは、価値の創出に応じた課税の確保であり、困難に直面した源泉地国課税、特に法人課税を何とか維持させようという試みであると解釈できる。
現在、新興国を含む各国でプロジェクトに呼応した対応が進められている。従来の国際的な事業課税のあり方、例えば海外子会社などとの移転価格のルールや、支店や工場など恒久的施設の認定ルールが見直されている。」
しかし、この記事では「現行の法人課税をデジタル経済下で存続させることは、近い将来、限界にぶつかる可能性が強い」と、悲観的な見方をしています。そして、法人税のような源泉地国課税ではなく、個人所得税(居住地国課税)や消費税(仕向地国課税)の重要性が高まるといっています。
「デジタル経済の進展で源泉地国課税が困難になるとしたら、各国が一定の税収を確保するために、居住地国課税や仕向け地国課税に向かわざるを得ないであろう。したがって、各国で法人税のウエートは縮小し、個人所得税と消費税が基幹税としての重要性を高めていくであろう。」
とはいっても、デジタル経済の下では、個人所得の把握や消費税の課税ベースの確保にも、困難な問題があるとして、対応策が示されています。
より長期的には、課税システムの見直しが必要とのことです。
「より長期的に展望すれば、デジタル経済の進展は、電子政府の進化を促すとともに、政府の担うべき役割や政府の範囲自体の見直しも迫っていくだろう。その中で、課税システムの全般的な見直しも避けられない。特に課税情報の重要な源泉は、企業グループごとに整備される会計情報から、ネットワーク上で分散的に管理される取引情報へと、次第に軸足を移していくことになるのではないか。」
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