買収パターンを4分類し、減損要因を分析した
どのようなM&Aでのれんが減損する確率が高くなるのか、という解説記事。
「IFRS(国際会計基準)を採用する日本国内企業を対象に、1996年1月から2018年3月までのM&Aを1917件調査した」そうです。
まず、M&Aを「国内・同業種」「国内・異業種」「海外・同業種」「海外・異業種」に分類した結果は...
「同業種M&Aと異業種M&Aを比べると、異業種M&Aのほうが減損の発生する割合は高かった。」
「国内M&Aと海外M&Aを比べると、海外M&Aのほうが減損発生率は高かった。」
ここまでは予想される結果ですが...
「国内×異業種M&Aと、海外×同業種M&Aでは、どちらの減損発生率が高いのか? ...
結果は、海外M&Aよりも「国内異業種M&A」のほうが、減損発生率が高かったのだ。」
「減損の観点から言えば、国内で“飛び地”への新規事業を検討するくらいならば、海外の同業種を買収したほうがいいのだ。筆者は「M&Aを使って、新規事業を創出したい」と相談を受けることが多いが、その新規事業があまりにも本業とかけ離れている「飛び地」なのであれば、考え直したほうがいい。それぐらい飛び地のM&Aは難しい。」
次に、最初からマジョリティー取得する場合と、段階取得して子会社化する場合の比較。
「海外M&Aにおける減損発生率は、「当初からマジョリティー取得」よりも「段階取得でマジョリティー取得」の方が高かった(なお、国内M&Aについては、分析対象となるサンプルが少なかったため、分析対象外とした)。」
「段階取得を行った海外M&Aのうち、減損対象M&Aに該当する5件について、各々の発生原因の詳細を探ったところ、過半出資後のPMIがうまくいかず減損したと推察される事例が散見された。実際に、海外M&Aを数多く手掛けてきた企業にインタビューしたところ、段階取得で子会社化したほうが、子会社化する際のガバナンスの設計と実践が難しいとの声が多く上がった。
段階取得の場合は、初めがマイノリティー出資のため、買い手が対象企業の事業内容に大きくは口出ししにくい。そこから段階取得で子会社化したとしても、よほどの事情がない限り、親会社の言うことを急に聞くようになるわけがないのだ。」
「また、企業インタビューからは、「全社戦略に基づき、将来的に過半数を買収する予定でマイノリティー出資を始めてしまった場合、マイノリティー出資中にあまり優良な投資先ではなかったとわかっても、後に引けずに追加取得し、過半出資後やはり思うようにいかなかった」というケースも意外と多いとわかった。回収できないサンクコスト(埋没費用)にもかかわらず、損切りできずに、そのまま投資してしまう「塩漬け」と近い内容だ。
加えて、マイノリティー出資期間が長いと、子会社として検討する際のデューデリジェンス(投資する企業の価値やリスクを精査すること)が甘くなってしまうこともあるようだ。中には、段階取得で子会社化する場合は、デューデリジェンスらしいことをまったくしなかったという企業もいた。
しかしながら、子会社化して初めてわかることも多い。マイノリティー出資期間では得られなかった情報も、子会社化した後では得られるようになるからだ。そして、そういった情報はネガティブなもので、買収後に発覚される。」
ソフトバンクグループのウィーワークへの出資は、まさに段階取得(ただし、経営権をにぎるものの子会社にはしない)ですが、うまく経営できるのでしょうか。「後に引けずに追加取得」という印象を受けます。
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