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「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の公表(企業会計基準委員会)

企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の公表

企業会計基準委員会は、企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」を、2019年10月30日に公表しました。

国際会計基準審議会(IASB)が 2003 年に公表した国際会計基準(IAS)第 1 号「財務諸表の表示」第 125 項において開示が求められている「見積りの不確実性の発生要因」について、日本基準においても注記情報として開示を求めることを検討するよう要望が寄せられたことをきっかけとして、検討されていた会計基準です。

基準案の概要は以下のとおり。

1.(基準の)目的

・会計上の見積りの開示について定めることを目的とする。(1項)

2.「会計上の見積り」の定義(3項)

・「会計上の見積り」とは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをいう(企業会計基準第 24 号の規定を参照している)。

3.開示

・当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的とする。(4項)(18項によると「翌年度以降」ではなく、わざわざ「翌年度」としたようです。)

・当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別する。識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債である。(5項)

・直近の市場価格により時価評価する資産及び負債の市場価格の変動は、項目を識別する際に考慮しない。(5項)

・本会計基準では、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別するとしていることから、比較的少数の項目を識別することになると考えられる。(23項)

・注記は独立の注記項目とする。複数ある場合はまとめて記載。(6項)

・第 5 項に基づき識別した項目のそれぞれについて、項目名(識別した会計上の見積りの内容を表すものとする(6項))に加えて次の事項を注記する。(7項)

(1) 当年度の財務諸表に計上した金額
(2) 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報(8項で例示)

(1)及び(2)の事項の具体的な内容や記載方法(定量的情報若しくは定性的情報、又はこれらの組み合わせ)については、第 4 項の開示目的に照らして判断する。

・会計上の見積りの開示以外の注記として財務諸表に記載している場合には、当該他の注記事項を参照することにより記載に代えることができる。(7項)

・「会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」の例(8項)

(1)当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
(2) 当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
(3) 翌年度の財務諸表に与える影響

・9項で連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における扱いを規定。

適用は、2021 年 3 月 31 日以後終了する年度の年度末からです(早期適用可)。表示方法の変更として取り扱います(適用初年度の比較情報は記載省略可)。

コメント募集文書によれば、「開示する具体的な項目及びその記載内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることが適切と考えられる」とのことです。何を書くのか、どのように書くのか、作成者の判断によって左右される部分が大きくなりそうです。
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