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「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」等の公表(企業会計基準委員会)

実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」等の公表

企業会計基準委員会は、実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」を、2016年12月16日付けで公表しました。

以下の関連する基準や適用指針の改正も併せて公表しています。

・「退職給付に関する会計基準」
・「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」

概要は以下のとおりです。

1.範囲

・「リスク分担型企業年金」の会計処理及び開示に適用

・「リスク分担型企業年金」とは、確定給付企業年金法に基づいて実施される企業年金のうち、給付額の算定に関して、確定給付企業年金法施行規則第 25 条の 2 に規定される調整率(積立金の額、掛金額の予想額の現価、通常予測給付額の現価及び財政悪化リスク相当額に応じて定まる数値)が規約に定められる企業年金のことです。

2.会計上の退職給付制度の分類

・企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、確定拠出制度に分類

・それら以外は確定給付制度に分類

・確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金は、直近の分類に影響を及ぼす事象が新たに生じた場合、分類を再判定

3.会計処理

・確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額(移行時に未払金等を計上した特別掛金相当額を除く)を、各期において費用として処理。

4.退職給付制度間の移行に関する取扱い

・確定給付制度に分類される退職給付制度から、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に移行する場合、退職給付制度の終了に該当

5.注記

・確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金について、次の事項を注記
(1) 企業の採用するリスク分担型企業年金の概要
(2) リスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額
(3) 翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数

2017年(平成29年)1月1日以後適用です。

「リスク分担型企業年金」の制度についてはこちらが参考になります。

確定給付企業年金制度の主な改正(平成29年1月1日施行)(厚生労働省)

「リスク分担型企業年金は、事業主がリスクへの対応分も含む固定の掛金を拠出することにより、一定のリスクを負い、財政バランスが崩れた場合には給付の調整を行うことで加入者も一定のリスクを負うことで、リスクを分担する仕組み。」


(厚生労働書資料より)

公開草案へのコメントは反対意見が結構多かったようです。しかも、案の根本部分への反対です。

公開草案に寄せられたコメント

反対意見の例(抜粋)。

「退職給付の水準の改訂及びリスク対応掛金相当額の計算のためには、一定水準の退職給付額が想定されていることが前提であると思われるので、従業員の退職給付をベースとする基本構造は確定給付型の退職金制度から変更されていない。このため、リスク分担型企業年金制度は、条件付きの確定給付制度と理解できる。」

「本公開草案では、年金基金に対する企業の追加負担が実質的にないであろうとの理由で確定拠出制度として会計処理を行うという考え方が提案されているが、企業と年金基金との関係ではなく、企業が従業員に対する退職給付負担義務を有するかという観点から会計基準の適用を判断しなければ、退職給付会計基準の基本的コンセプトに反することになりかねない。」

「本テーマの対象は新たなハイブリッド型制度の「リスク分担型 DB(仮称)」とある。ハイブリッド型という名称からは、この新たな制度が、確定拠出型の側面と確定給付型の側面の双方を有しており、その点では、本仕組みのどの部分が会計処理面から見ると確定拠出型の特徴を有し、どの部分が確定給付型の特徴を有しているかを十分に分析し、比較衡量して結論を出すべきだったと思われる。審議資料を見る限り、確定拠出型という結論だけ先にありきの検討が行われたようであり、確定給付型の特徴についての必要な検討が十分には行われていない。」

コメントへの対応によれば、個人別に資産を区分する確定拠出年金とちがって「リスク分担型企業年金は、企業単位で資産を運用する確定給付企業年金の形態」だそうですから、その点からすると、確定給付ともいえそうです。

ASBJの発表文の冒頭で「『日本再興戦略』改訂2015」で導入された制度であることを強調していることから推測されるように、本当に独立の立場から検討がなされたのかどうかは、ややあやしい感じもします。

そもそも、従業員にとっては、掛金が一時的に増やされているとはいえ、会社が年金資産の運用に失敗すると、年金が減らされるかもしれないという制度です。そんなリスクを負うのでは、公的年金の補完にならないようにも思われます。会社にとってはリスク回避なのでしょうが、本当にプラスになるのかどうか。運用失敗で年金減額となった場合は、全社的な士気低下が生じるかもしれません。(会計処理の問題ではありませんが)
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