金融庁による会計監査改革が実行段階を迎えるという短い解説記事。
大きく3つの論点を取り上げています。
「4月に決めた監査法人の統治指針には、5つの原則を盛り込んだ。監督・評価に外部の目を入れたり、監査先企業との意見交換を密にしたりといった内容だ。「企業と監査法人のなれ合い」(金融庁)が会計不祥事の温床となっているとみて、企業の不当な圧力によって監査がゆがめられるのを防ぐ狙いだ。
もう一段の改革は「監査報告の透明化」だ。今の報告書は「財務状態を適切に表示している」とそっけない結論を示すにとどまる。新制度では「のれん代」や「金融派生商品」など監査人が注目したリスクを並べ、それぞれなぜ適切と判断したかの理由も添える。今秋に開く審議会で詳細を詰め、20年3月期からの導入を目指す。
今後、議論になるのは「監査法人の交代制」だ。金融庁はなれ合いを無くす手段とみるが、産業界にはコストや継続性の観点から慎重意見も根強い。欧州連合(EU)はすでに交代制の導入を決めたが、米国は当面の導入を見送った。」
監査法人ガバナンス・コードで、なれあいが防止されるということが書かれていますが、実際には、ガバナンスコード対応だといって、有力監査クライアントの元役員を社外委員に迎えるなど、なれあいがますます深まる方向になっています。
「監査報告の透明化」の説明も少し変です。いわゆるKAMの話ですが、監査の透明性を高めるのが狙いですから、KAMとして何を選ぶのかというだけでなく、それに対して監査でどういう対応をしたのかを示すことも重要でしょう。
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出所
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/about/news/docs/slide-presentation-201510.pdf
(この資料では、 KAM導入の狙いの一つに「KAMに選定した領域に対する、職業的懐疑心の高揚」を挙げています。KAMとして監査報告書に書かせることにより、より念入りに監査させようということのようです。)
監査人の強制的交代制については、まだ金融庁の方針は固まっていないのでは。定期的な交代を義務づけた場合には、毎年かなりの数の交代が発生します。十分な引き継ぎができるよう、四半期報告を廃止して(半期報告のみとして)、株主総会から最初のレビュー報告書までの期間を十分確保しないと、実務的に無理が生じます。今は、交代の件数が少ないから、(そして第1四半期のレビューは見切り発車でやっているから?)どうにか回っているのでしょう。
このページに監査報告書見直しに関連する資料へのリンクが示されているようです。
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監査報告に関連する国際監査・保証基準審議会(IAASB)公表物の仮訳等の公表について(日本公認会計士協会)