中小化で節税、「1億円」企業続々 低成長で窮余の減資(記事冒頭のみ)
外形標準課税を免れるための減資を行う企業が多いという解説記事。
「身の丈を小さく見せようとする企業が増えている。資本金を1億円以下にする「中小企業化」は2022年に入ってからの発表分だけで100社に迫る。赤字でも税金がかかる外形標準課税を免れる動きで、公平や中立といった税の原則がきしむ。外形課税は収益を伸ばす企業の税負担を軽くする制度でもあった。その空洞化は日本の成長力の低迷を映す。」
最近減資を発表した企業として記事の中で名前が挙がっているのは、HIS、クリングルファーマ、銚子丸、Kudan、九世、海帆、ダイサンなどです。
統計的には、資本金1億円超の企業は、2006年には29,618社(1.18%)もあったのに、2020年調査では19,979社(0.76%)に下がり、資本金がちょうど1億円という企業が1.5倍の13,086社となったそうです。
記事によれば、外形標準課税は、地方自治体の財政を安定化させるために2004年に導入されたものとのことです(記事冒頭で「外形課税は収益を伸ばす企業の税負担を軽くする制度」といっているのは意図的な間違いでしょう)。
記事によれば、総務省が見直しのための有識者会議を8月に設けたそうです。
この記事の論調は、外形標準課税の制度自体は悪くない(総務省幹部のコメントとして「本来は成長促進税制」といっている)というものですが、本当にそうなのでしょうか。
企業からすれば、業績不振のとき(特に赤字のとき)に、固定費的に税金がかかるというのが、最も負担になるのではないでしょうか。企業経営には必ず波があるのですから、それをなだらかにする作用がある利益(所得)への課税の方が合理的でしょう。また、もうかっている企業にとっては、利益に対する課税であれば、設備投資や給与引き上げで、節税をはかろうというインセンティブも生じ、まわりまわって経済全体にもプラスになるでしょう。
税金関係では、同じ9月5日の日経にはこういう記事もありました。
株式交付で「私的節税」 M&A新手法、資産管理会社に利用 専門家の是非割れる(日経)(記事冒頭のみ)
「M&A(合併・買収)による事業再編を促し日本企業の競争力を高める目的で2021年に導入された株式交付制度が、上場企業オーナーの私的な節税に使われているとの指摘が出ている。専門家の意見は「制度の乱用とまではいえず問題ない」や「制度趣旨から外れており税制改正が必要」などと分かれており、議論を呼びそうだ。」
あまり知識がないので、批判すべき節税方法なのかはわかりませんが、資産管理会社を通じた株式保有による節税自体は、従来から行われていて、それを、株式交付により事後的にもできるようにしたということであれば、悪質な租税回避とまではいえないような気もします。資産管理会社を使った節税自体を批判するのであれば、筋が通っていますが...。