証券取引等監視委員会 中期活動方針（第10期）（金融庁）

証券取引等監視委員会 中期活動方針（第10期）～信頼され魅力ある資本市場のために～

金融庁の証券取引等監視委員会は、「証券取引等監視委員会 中期活動方針（第10期）～信頼され魅力ある資本市場のために～」を、2020年1月24日に公表しました。

資本市場の変化として、以下の3つの点を挙げています。

・構造的な変化として、海外投資の増加や企業のグローバル化（海外子会社等との分業、アウトソーシング等）などにより、資本市場のグローバル化や各種金融市場の緊密化が更に進展しています。

・資金フローをみると、世界的な低金利環境の下、高リスク・低流動性ファンド等に対する資金流入が増大している中、地政学的リスクなどを背景に経済の先行きを巡る不確実性が高まっています。

・また、デジタライゼーションの飛躍的な進展が資本市場及び市場参加者全体に大きな影響を及ぼしています。金融機関はAI等の技術やデータの利活用の進展等によりビジネスモデルの見直しを迫られ、市場環境もアルゴリズムを用いた高速取引の普及等により大きく変化しているほか、暗号資産等の新しい商品・取引等が出現しています。

このような環境変化の中、3つの目標と５つの施策を掲げています。

目標

１．網羅的な市場監視（広く）

(1)新たな商品・取引等への対応

(2)あらゆる取引・市場を網羅的に監視

(3)高齢者を含む多様な投資者の保護

(4)全体像の把握（部分から全体へ）

(5)国内外の関係者に向けた幅広い情報発信

２．機動的な市場監視（早く）

(1)問題の早期発見・着手

(2)早期の対応による未然防止

(3)迅速な実態解明・処理による問題の早期是正

３．深度ある市場監視（深く）

(1)問題の根本原因の究明

(2)深度ある分析を通じた市場の構造的な問題の把握

施策

１．内外環境を踏まえた情報収集力の向上

(1)市場環境のマクロ的な視点での分析等によるフォワード・ルッキングな市場監視

(2)様々な金融市場に対する横断的な市場監視

(3)海外当局との連携強化による情報収集力等の強化及び市場監視への活用

２．深度ある分析と迅速かつ効果的・効率的な調査・検査の実施

(1)事案の態様に応じた多角的・多面的な分析・検証

(2)不公正取引や開示規制違反への迅速な課徴金納付命令勧告等

(3)クロスボーダー事案の特質に応じた効果的・効率的な調査・検査

(4)重大・悪質事案への告発等による厳正な対応

(5)リスクアプローチに基づく効果的・効率的な証券モニタリング

(6)投資者被害事案に対する積極的な取組み

３．市場規律強化に向けた実効的な取組み

(1)調査・検査から得られた知見の多面的・複線的な活用

(2)違反行為等の再発防止等に向けた根本原因の究明と対話の推進

(3)違反・不適切行為の未然防止に向けた国内外への情報発信強化

(4)市場監視の空白を作らないための取組みの深化

４．デジタライゼーション対応と戦略的な人材の育成

(1)デジタライゼーションを活用した市場監視業務の高度化・効率化

(2)デジタライゼーションの飛躍的進展に伴う新しい商品・取引等への機動的な対応

(3)高度な専門性及び幅広い視点を備えた人材の戦略的な育成

５．国内外の各機関等との連携

(1)自主規制機関との更なる連携強化による効果的・効率的な市場監視

(2)多様な市場関係者と連携した市場規律の強化

(3)グローバルな市場監視への貢献を通じた国際連携の強化

「広い・早い・深い」という3目標は、ちょっと牛丼屋の宣伝文句みたいで面白いと思いました。

施策のうち「重大・悪質事案への告発等による厳正な対応」では、

「インサイダー取引、相場操縦、風説の流布、偽計や有価証券報告書の虚偽記載等の違反行為のうち重大で悪質なものについては、犯則調査の権限を行使し、厳正に対応します。その際、事案の内容に応じ、捜査・訴追当局や海外当局等の関係機関と連携し、実態の解明や責任追及を効果的に行います。」

となっていますが、例えば、東芝粉飾事件のような重大・悪質なものでも、刑事告発をしなかったのに対して、日産ゴーン事件では、いきなり逮捕し何ヶ月も牢屋に入れるというやり方は、「厳正に対応」した結果なのでしょうか。（日産ゴーン事件のうちの虚偽記載は、監視委の告発によって起訴されたという形になっています。）

デジタル化、デジタイゼーション、デジタライゼーションの違いなど。
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守りと攻めのデジタル化（日経）