金融庁の企業会計審議会・監査部会は、監査基準改訂の公開草案を、2010年3月5日付で公表しました。
「監査人の監査報告書における意見表明の内容等を規定している報告基準について、国際監査基準との差異を調整する改訂」であるとされています。
改訂内容については、以下のように、ほぼ、先日当サイトで取り上げたとおりです。ただし、3月2日の会議資料では改訂案に含まれておらず単なる説明資料に記載されていた「「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用に伴う対応について」という項目が、改訂に関する前文の案に反映されています。
・監査報告書の記載区分を、現行の3区分(監査の対象、実施した監査の概要、財務諸表に対する意見)から4区分(監査の対象、経営者の責任、監査人の責任、監査人の意見)に変更する。
・追記情報を、財務諸表における記載を特に強調するために当該記載を前提に強調する強調事項と、監査人の判断において説明することが適当として記載される説明事項に区分する。従来から追記情報として列挙されている、正当な理由による会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象などは、強調事項として記載する。
・後発事象の定義を設ける。ただし、これは監査基準ではふれずに会計士協会の実務指針での対応を求める。(決算日の翌日から監査報告書日の間に発生している事象だけでなく、監査報告書日後に監査人が知るところとなった事実も含めることを示唆しています。)
・「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用に対応して、金融商品取引法上、前期の財務諸表は、当期の財務諸表の一部を構成するものとして、当期の財務数値に対応する前期の財務数値を比較情報として位置づけ、開示する。(これ自体は開示ルールの問題であり、監査意見に関する基準改訂にこじつけて無理やり入れたという感じがします。ただし、監査基準本文では、当然のことながら、ふれられていません。)
・比較情報に関する監査手続について、国際監査基準710号(「比較情報」)においては、当期の財務諸表に含まれる比較情報に対するものとして限定した形で行うこととされており、我が国においても同様に考えることが適当である。(この点は、監査基準の本文の改訂ではふれられていません。)
・比較情報に関する監査意見の表明の方法については、監査意見は当期の財務諸表に対してのみ言及(「当事業年度分の監査を行った。」)し、比較情報には明示的に言及しない方式(以下「対応数値方式」という。)の方が監査実務になじみやすく、投資者の理解にも資するものと考えられる。(この点も、監査基準の本文の改訂ではふれられていません。)
改訂基準の適用は、2012年(平成24年)3月決算に係る財務諸表の監査からの予定です。
監査基準改訂といいながら、監査基準に書かれない「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」関連の見直しの方が、はるかに重要といえます。
開示府令や監査証明府令の改正も行われる見込みです。
当サイトの関連記事(審議会資料に含まれていたイメージ図の一部を張り付けています。)
金融庁が監査基準の改訂で公開草案、表示区分や監査意見の表明方法を見直し
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