ライブドア粉飾事件の手口を紹介した記事。
昨日のSankei Webの記事でとりあげていたのは、ファンドを通して実質子会社化していながら連結の範囲に入れていない会社に対して、架空(とみられる)売上を計上するという比較的わかりやすい手口ですが、こちらは相当ややこしいやり方です。
この記事(とその元になっている19日の日経1面の記事)から読みとれる範囲でまとめてみたいと思います。ややくどくなりますが、ご容赦下さい。
まず、ライブドアが支配し、出資のほとんどを行っている投資事業組合が、子会社化予定の会社を現金(仮に1億円とします)で買収します。実質支配力基準で考えると、この投資事業組合はライブドアの連結子会社であり、子会社化予定の会社は、買収時点でライブドアの孫会社となり、連結範囲に入ります。
その後、ライブドア本体が株式交換で、正式に子会社化します。投資事業組合は、子会社となる会社の株をライブドアに譲渡すると同時にライブドア株(仮にそのときの時価を10億円とします)を取得します。
ライブドアの表向きの会計処理としては、株式を投資事業組合に10億円で時価発行して、そのかわり10億円の価値のある子会社株式を取得した(つまり子会社株式の取得原価が10億円)ということになります。しかし、投資事業組合は、実は連結子会社なのですから、この株式交換の取引は連結グループ内の取引であり、子会社株式の簿価は、もともとの取得原価である1億円に戻さなければなりません。(ただし、パーチェス法ではなく、持分プーリング法を使っていれば、簿価の水増しはほとんどないのかもしれません。)
投資事業組合は、取得したライブドア株を株式交換直後に外部に売却(売却価格10億円とします)した際に、10億円のキャッシュ(利益は9億円)を得て、それを出資者であるライブドアに戻します(報道によるといろいろと迂回させているようですが)。その内訳は元本1億円と利益配当9億円です。ライブドアでは9億円の利益を(まともな処理であれば金融収益として、報道によれば取引を仮装して売上高として)計上します。
ところが、投資事業組合(本来であればライブドアの連結子会社)が取得したライブドア株は、ライブドアの連結決算で見れば、自己株式になります。自己株式の売却は、増資と同じですから、売却額は投資組合からの配当として処理するのではなく、資本の部を増やす処理にしなければなりません。記事で「自社株の処分は本来は資本取引」といっているのは、たぶんこうした意味でしょう。この数値例だと9億円の利益水増しとなります。
ただ、これを粉飾決算と言い切るためには、投資事業組合が連結範囲に入るかどうかがポイントとなります。連結範囲だというためには、組合がライブドアの実質支配下にあることを立証しなければなりません。会計士協会が昨年、SPCのQ&Aと一緒に公表した「特別目的会社を利用した取引に係る会計基準等の設定・改正に関する提言」でも、組合など会社に準ずる事業体に関する実質支配力基準による連結範囲の判定が難しいといっており、これはなかなか難しい問題です。
ライブドアが相当あやしい取引をやっているのはたしかですが、粉飾と判定するには、会計上の理論武装も必要です。また、これから会計基準上の不備もはっきりしてきて、基準改正の動きも出てくるかもしれません。
こちらは架空売上の手口をもう少し詳しく書いた記事です。↓
ライブドア、傘下から受注装う粉飾…メールで詳細指示
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