(だいぶ古い記事になってしまいましたが)ソフトバンクグループの租税回避スキームを比較的詳しく説明した記事。2020年度の税制改正大綱では「国際的な租税回避・脱税への対応」という項目で、このような租税回避を防止する仕組みを導入するようですが、過年度に遡及するわけにはいかないので、ソフトバンクグループはまんまと2兆円もの所得を永久に除外する租税回避に成功したことになります。
2016年に買収した英アーム・ホールディングスを巡る取引で、租税回避が行われたそうです。
「SBGは16年9月、英アーム・ホールディングス(HD)の全株を3.3兆円(当時の為替レート)で買収した。アームHD自体は持ち株会社で、価値の大半は半導体の設計子会社、アーム・リミテッドにある。
英国の開示資料や関係者によると、アームHD社は18年3月23日、SBGにリミテッド株の75%(2.6兆円)を現物配当した。同日、今度はSBGがアームHD株の78%を傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などに譲渡した。配当を出し、価値が落ちたアームHD株を譲渡したため2兆円の損が生じた。」
現物配当(2.6兆円)に関しては、「外国子会社配当益金不算入制度」によりほとんど課税されません。他方、現物配当により実質的価値が4分の1になったアームホールディングス株式のソフトバンク・グループにおける帳簿価額は従来どおり3.3兆円のままです。その78%をその時点の時価で(つまり4分の1の価値で)傘下の会社に譲渡するわけですから、巨額の損失(記事によれば2兆円)が帳簿上生じることになります(単独決算では実現損であり税務上の損金になる)。
悪質な脱税のようにも思われますが、合法的なのだそうです。ソフトバンクグループには、悪知恵の働く税務担当者あるいは税務顧問がいるのでしょう。孫正義氏は日本の租税回避王だといえそうです。
しかし、そもそも、「外国子会社配当益金不算入制度」は欠陥のある制度だと思われます。これは、外国子会社からの配当は優遇するが、外国子会社への投資を売却・清算することによる損益は課税する(損失の場合は税金を減らす)という制度でしょう。しかし、ソフトバンク・グループのような明らかに異常な取引でなくても、売却益が少なくなるように(売却損が多く出るように)、配当を調整することは可能でしょう。つまり、海外投資で利益が出た場合は配当する(ほとんど課税されない)(あるいは何もしない)、事業がうまくいかなくて価値が下がった場合は、売却するなり清算するなりして、実現損にすることにより、親会社の税金を減らすことが可能になります。しかも、実現損といっても、グループ内で株式や事業を取引することによる損失も含まれます。これでは、日本企業が海外投資をやればやるほど(その中には失敗するものもある程度の率で発生するはず)、日本の税源が浸食されるのではないでしょうか。
外国子会社配当にほとんど課税しないこととのバランスを考えるならば、海外投資による損失は損金としない(あるいは海外投資による利益の範囲内でのみ損金として認める)のが正しいと思われます。
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