会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」(第2回)議事要旨(金融庁)

「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」(第2回)議事要旨

10月11日開催の「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」(第2回)議事要旨が公開されています。議事録の代わりとなるものです。

(会議資料などはこちら→当サイトの関連記事

以下、委員の意見より。

会計士協会の品質管理レビューと金融庁(公認会計士・監査審査会)の検査が、二重になっているのを見直すべきという意見が出され、賛否両論あったようです。

「これまでの上場会社監査の動向を踏まえて、より実効性と透明性を高めるため、つまり、この上場会社監査事務所登録制度を高めるため、そして監査の品質を一定水準以上に保つためには、登録要件を見直すとともに、一定の法的裏づけを持った形での登録に変更することが望ましいのではないかと考える。そうすると、現行の協会の品質管理レビューと公認会計士・監査審査会(以下、「審査会」という。)のモニタリングの二重の検査がやはり監査法人にとっては負担が重いという議論もあるので、登録監査事務所に対しては、監査の品質の継続的な向上と強化を図るということを目的に、審査会のモニタリングに限定するという方向性が考えられるのではないかと思う。登録監査事務所には監査法人のガバナンス・コードの全面的な遵守が大前提となる。」

「審査会によるモニタリングと協会による品質管理レビューには、これまでそれぞれに蓄積した知見やノウハウがあるが、それを踏まえながらも、それぞれに役割分担を図ることで、双方の検査の有効性と効率性を図ることが期待されるのではないかと思う。」

「上場会社監査事務所登録制度を法律上の制度と位置づけるということについては、その制度設計の詳細を議論しなければ実効性があるか判断できないが、審査会の検査に一本化するということについては、明確に現時点においては反対である。審査会は、現時点では金融庁の組織であり、官の組織が全ての上場会社の監査をする事務所の検査権限を持つことは、国際的にも異質・異例ではないか。独立した機関による官民一体型のモニタリングは、自主規制の限界がある中で、当然議論されてしかるべきだと思う。しかし、審査会が官の組織だという前提に立てば、それが民間の検査権限を全て持つということで本当に実効性が上がるのか。海外の規制が本当に監査事務所の実力を上げているのか検証しないまま、海外よりも官に寄って、官が検査権限を持って直接検査をすることは、本当に官にとっても監査事務所にとってもいいことなのか。実効性のある検査体制を考えるのであれば、官民一体型の独立した機関を設けるということの当否について議論を進めていくべきではないか。」

「実際に監査法人のマネジメントに関わっている方からお話しを伺うと、やはり品質管理レビューとモニタリングを大手監査法人はほとんど毎年受けているが、これが二重の検査で非常に負担が大きいと聞く。他方で、実効性が伴っているのかということに対する疑念がある。もっとリソースを有効活用するために、役割分担があっていいのではないか。」

「大手監査法人における検査対応の負担が重いというのは確かだが、審査会だけに一本化できるかというと、審査会と協会の品質管理レビューでは検査の抽出会社数や方法が少し異なっている。今の審査会の検査に一本化することで果たして監査の品質が向上するか疑問を持っている。上場会社を監査する監査事務所は100以上あり、上場会社を監査しているとはいえ小規模な事務所では、新しい監査基準が入ったときに指導的機能を品質管理レビューに期待しているということが多く見られる。審査会の検査は、指導というよりはやはり処分ということを念頭に置いた検査であると考えられるので、指導・監督も含めて高品質な監査体制を整備していくという観点では、今後の品質管理レビューや審査会の在り方について十分な議論が必要である。」

「協会の品質管理レビューとの役割分担、あるいは品質管理レビューの位置づけをもっと明確にして、品質管理レビューを機に受ける側の監査品質が良くなっていくという在り方を議論し、確立することが大事ではないか。その際、協会はサポート、審査会はモニタリングに軸足を置くのがよいのではないか。」

「品質管理レビューと審査会の検査を一本化してほしいという意見は、大分前からあった。特に大手監査法人は、内部のモニタリングとして自主検査があり、加盟しているネットワークファームのレビューがあり、さらに協会の品質管理レビューがあり、審査会の検査がある。個別のエンゲージメントの対象は違うが、品質管理に対するモニタリングが4つもあり、1年間の特定の期間にレビューや検査が集中して、負荷が大変であることはよく理解できる。

しかし、これだけの検査を受けていても監査の品質の問題が完全になくならないという事実もある。やはり異なる第三者の眼による、その検査の重複はある程度やむを得ないのではないかと思う。しかし、監査法人の負担軽減については、真剣に考えなければいけない問題だと思う。」

「世界的な趨勢を見ると、自主規制が機能しなかったために監督当局等の規制に切り替わった国が多いが、日本においては、協会の努力で品質管理レビューが年々改善してきているので、審査会の検査と共存できるのではないかと思う。社会的なコストの面からも、そのほうが安いのではないか。」

「米国ではピアによる審査から官のレベルでの監視へと移ってきた経緯がある。...2003年の公認会計士法改正で新しく立ち上がった審査会がモニタリングを行うこととなった。ただ、先行する形で協会の品質管理レビューが実施されていたため、それを尊重するという流れの中で、審査会はワンステップ置きながらモニタリングを行うという方向性が取られてきたと理解している、

協会だけで対応していては、いつまでたっても批判ばかり受けてしまい、協会がかわいそうだという気さえする。審査会が全てを握るという話ではないにせよ、一定の法的な裏づけが必要ではないのかと感じている。」

基本的には、上場会社監査事務所(+金融庁が特に選んだ事務所)は金融庁、その他は協会という役割分担が、すっきりしてよいのでは。少なくとも、大手や準大手監査事務所に関しては、それでよいでしょう(金融庁が毎年あるいは2年に1回は検査しているので)。上場会社を監査している中小監査事務所については、金融庁が十分カバーするのは難しいでしょうから、協会が担当してもよいでしょう。結果的に、大手・準大手以外は、現行のままということになります。協会は、大手・準大手を外す分、中小のレビューを充実させることができるでしょう。中小への指導的役割も果たせます。

監査事務所側の負担という観点からはそのような結論になりますが、監査事務所側のリスクは高まるかもしれません。現行では、何か問題があった場合に、協会と金融庁のそれぞれのレビュー・検査を経た上で、監査事務所失格の烙印が押されるわけですが、金融庁に一元化すれば、金融庁の考えだけで、厳しい処分を行うことが増えるかもしれません。金融庁が本当の監査のプロであれば、それも仕方がありませんが、実態として、監査法人からの出向組(単なる検査の手足でありほとんど実権はない?)以外、監査事務所の品質管理態勢を適切に判断することができる人が大勢いるとはとても思えません。金融庁プロパーの審査会事務局幹部(監査の素人)の思惑(例えば処分実績がほしいなど)次第で、処分が決まるということもあり得ます。例えば、審査会の検査が始まったときは、大手監査法人が軒並み処分を受けていました。審査会の存在意義を示したいという思惑もあったのでしょう。

上場会社監査事務所登録制度に関する意見もあります。

「現在の上場会社監査事務所登録制度の登録は、基本的に準則主義になっていると思う。250を超える監査法人のうち、その半数は上場会社監査事務所としての登録ができている。投資家から見ると、登録監査事務所の監査品質は同じであると誤認してしまう場合がある。少しハードルが低過ぎるのではないかと思う。そこで、例えば監査法人の設立に必要な人数は5人であるが、上場会社を監査する事務所には、その倍の人数など、より多くのパートナーがいるという条件を入れてもいいのではないかという御意見が前回あったように、もう少し監査品質を担保できるような登録要件に見直すべきではないか。」

「上場会社監査事務所登録制度が作られて一定程度時間が経っているが、登録要件を満たしているだけでは必ずしも十分ではなくなっているのではないか。監査品質は、合併したらよくなるとか、人材を増やしたらよくなるというものではない。外形的な要件だけによらず、レベルを担保するための登録の在り方を考える時期に来ていると認識している。」

「上場企業を監査する監査法人の社員数にミニマム・リクワイアメントを設け、監査法人のガバナンス・コードの適用も含めて、上場会社監査事務所登録制度に登録されている監査事務所に規律として適用を求めることも検討の価値があるのではないかと思う。そうすることによって上場会社監査事務所の登録制度の機能の充実が図られるのではないか。」

「上場会社監査事務所登録制度については、以前からそのような制度があり今まで運用されてきたことが十分認知されていないのではないかと思うほど、インパクトが感じられない。登録の抹消などの措置が実効的に講じられてきたという印象もない。」

「上場会社監査事務所登録制度に何らかの法的根拠を持たせるのは悪い話ではないと思うが、法的な世界に足を踏み入れた途端に、違反があった場合の対応や、登録方法、登録抹消の決定が全て法律問題となってしまい、非常に厄介と言えば厄介な話となる。ほとんどのプロセスを透明化して公開していくという形にならないとなかなか理解を得られないだろうし、場合によっては裁判になるかもしれないので、そこで公開されてしまうということもあるかもしれない。」

協会も、協会レビューが終わるまでは本登録しないとか、準登録の際にもチェックするなど、いままでも登録制度の改善はやっているように思われます。あまり、入り口のところで厳しくすると、新規参入がなくなってしまうかもしれません。品質向上のためなら、それも仕方がないと割り切るのか...。

四半期開示見直しにちらっとふれているコメントもありました。

「岸田首相が四半期開示の見直しに言及されている。適時開示は投資家にとって必要なもので廃止することには反対だが、法定開示は検討し直してみる価値があるのではないかと思う。こういった制度全般を見たバランスの取れた規制にしていただきたい。」

公認会計士法に関する問題提起も...

「現行の公認会計士法では、監査法人の社員の配偶者が会社の役員に就任している場合には、監査法人はその会社の監査を受嘱することができない。大規模監査法人では、社員が500名以上おり、この規定に該当するケースが実際に見られ、女性活躍推進の妨げになっていると言える。監査法人の独立性の担保は重要であるが、配偶者との関係においては法規制を適切な範囲にとどめ、公認会計士やその配偶者の活躍の機会を奪うことのないように、この規定の見直しを御検討いただきたい。また、大規模監査法人においては、監査法人の機動的な運営にあたり実情に合わない法規制がある。例えば、監査法人の合併の承認や社員の脱退に対して総社員の同意が求められている規定について、今後、御検討いただきたい。」

こんな細かい話をいうのは、協会の人でしょう。独立性のルールでは、基本的に配偶者は本人と同じ扱いなので、けっこう難しい問題でしょう。そのほか、「2親等以内」という規制も見直してほしいものです(配偶者の兄弟まで一律カバーされてしまう)。また、監査法人の社員は他の監査事務所の監査業務に一切関与できないというのも無意味な規制でしょう(競業避止が目的なら監査法人が承認していない場合だけ禁止すればよい)。

第3回が11月4日にあるそうです。

「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」(第3回)の開催について(金融庁)

「3.議事(予定):

今後の会計監査の在り方について」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事