会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

決算発表遅れ 日本目立つ(日経より)

決算発表遅れ 日本目立つ
平均4日、欧米は0.5~1.6日 コロナでも正確さ重視


2020年3月期は、決算発表の遅れが、海外よりも長かったという記事。

「日本企業の20年3月期本決算では、2125社の3割にあたる617社が当初の予定から発表日を遅らせた。617社の遅れた日数の平均は約11日だった。日本経済新聞が集計したところ、過去3年の平均発表日に比べ、今回の発表日は4.11日遅かった

3月期本決算企業で比べると、遅れた日数は米国企業が平均1.6日だった。もともと開示までの日数が日米より長い欧州企業は0.5日の遅れにとどまった。1~3月期の四半期決算企業でも日本の遅れが目立つ。」

4日ぐらいの遅れであれば、会社も監査人もがんばったと評価すべきでしょう。海外は12月決算会社が多いので、3月決算が集中していて、その決算・監査作業の時期と新型コロナの影響が出た時期とがまともにぶつかった日本とは、状況が違うのではないでしょうか。(逆に、海外の方が、外出制限や事業所の閉鎖などは厳しく行われていたようなので、日本より困難だった面もありますが)

日経記事では、遅れの原因を3つ挙げています。

「理由の一つが「決算短信の数字をできるだけ正確にしたい」という日本企業の意向だ。」

「「2つの監査」が日本企業の開示を遅らせているとの指摘も多い。」

「2つの監査」というのは、金商法監査と会社法監査のことです。しかし、決算発表→会社法計算書類作成・会社法監査→有報作成・金商法監査、という順序ですから、会社法監査と金商法監査の2つがあるから、決算発表が遅れたというのは理屈に合いません。

「監査で在庫などを確認する際の「現地現物主義」も遅れに影響したようだ。米国などでは信頼性が確保できるなら写真や映像データでの確認が許容されてきた。日本では、監査法人が対象の企業や工場を直接訪れ、現物をチェックすることが強く求められる。」

現物を見なければならないという典型的な監査手続は、棚卸立会でしょう。しかし、日本のの監査法人が、記事のいうように、棚卸立会を代替的手続で済ますことを認めず、現物チェックにこだわった(現物チェックできなければ証拠が入手できなかったと判断する)ということであれば、それは監査の遅れというより、証拠未入手による「限定付意見」や「意見不表明」という形であらわれるはずです。しかし、今のところ、日本国内に関して、そういう例は報じられていないようです。実際に、例年と比べて、棚卸立会の実施状況はどうだったのか(海外ほど制限が厳しくなかったので、例年どおり行われた例も多いのでは?)、代替手続の例や棚卸立会を時期を遅らせて実施する例(この場合はたしかに決算確定の遅れにつながる)がどのくらいあったのか、などをきちんと調べないと、「現地現物主義」が遅れの原因かどうかはわからないでしょう。

いずれにしても、2020年3月期の監査が、異常な状況で行われたことはたしかですから、ある程度落ち着いたら、会計士協会あたりで、どのような問題点があったのか、それに対してどのような工夫が行われたのかなどについて、監査法人にヒアリングするなどして総括してはどうでしょうか。(調査することによって、実は、ぼろぼろな状態だったということが明らかになるおそれもありますが)
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