ユニチカ、祖業の繊維から撤退 「存続へ最後のチャンス」―官民ファンドが再生支援決定
ユニチカ(東証プライム)が、地域経済活性化支援機構から支援を受けるという記事。取引先金融機関には巨額の債権放棄をしてもらうそうです。
「ユニチカは28日、祖業の繊維事業から撤退する方針を発表した。不採算事業で抜本的な構造改革を行う事業再生計画を官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)に提出し、支援決定の通知を受けた。事業規模を約半減する改革を断行し、2028年3月期の全事業黒字化を目指す。」
「再生計画に基づき、ユニチカは取引先金融機関に約430億円の債権放棄を要請。機構に対する第三者割当増資で約200億円の出資を受ける。さらに、融資枠設定を通じて機構から最大150億円、三菱UFJ銀から最大90億円の資金調達を行う。」
株式会社地域経済活性化支援機構による再生支援決定、第三者割当によるC種種類株式の発行、定款の一部変更、自己株式の取得及び自己株式の消却、資本金及び資本準備金の額の減少、並びに親会社及び主要株主である筆頭株主異動等に関するお知らせ(ユニチカ)(PDFファイル)
「当社は、2024 年 11 月 28 日開催の取締役会において、①当社並びに当社のグループ会社である日本エステル株式会社及びユニチカスパークライト株式会社(以下 3 社を総称して「当社ら」といいます。)が、株式会社三菱 UFJ 銀行(以下「三菱 UFJ 銀行」といいます。)と連名にて、株式会社地域経済活性化支援機構(以下「本割当予定先」又は「機構」といいます。)に対して、事業再生計画(以下「本事業再生計画」といいます。)を提出して再生支援の申込みを行うことを決議したうえで、その申込みを行い、同日、機構より再生支援決定の通知を受けましたので、お知らせいたします。
機構による再生支援決定にあたっては、取引金融機関が当社らに対して有する金融債権につき、債権放棄等の金融支援の依頼が行われるものであり、お取引先様との商取引債権については支援の依頼を行わないため、何ら影響はありません。また、当社ら以外の当社のグループ会社は、機構の再生支援の対象ではございませんので、それらのお取引先様の商取引債権についても同様に何ら影響はありません。」
「これまでの経緯」より。
「当社は、1889 年の尼崎紡績の創業、1918 年以降は三大紡績のひとつである大日本紡績として日本の紡績業をけん引してまいりました。さらには 1969 年、グループ会社の日本レイヨンとの合併により総合繊維メーカー・ユニチカとなりました。その後の事業多角化に向けた取組みを経ながら、長くその歴史を刻んでまいりました。尼崎紡績の誕生から 135 年、当社の誕生から 55 年を迎えますが、その間、経済を取り巻く環境は大きく変化し、祖業である繊維事業は日本の産業の変遷に伴い厳しい事業環境にさらされ、当社は 30 年来、繊維事業を縮小すると同時に、高収益事業である高分子事業へ軸足を移行する構造改革に取組んでまいりました。」
2014年から金融機関の支援を受けていたそうですが...
「このように一時的に業績及び財務体質は良化したものの、結果として、成長分野への積極的な投資が十分に奏功したとは言い難く、また、下記「2.現状の課題認識」に記載のとおり、抜本的な構造改革の完遂には至りませんでした。そして、2017 年度以降、売上高、営業利益はともに減少基調が継続し、2020 年度初頭からのコロナ禍による事業環境の変化等の影響もあり売上高は若干の回復傾向になりました。2020 年 5 月に 2030 年近傍を見据えた長期ビジョン「G-STEP30(ジーステップ・サーティ)」を発表し、2023 年 5 月には、長期ビジョンの目標達成に向けたセカンドステップとして、新中期経営計画「G-STEP30 2nd(ジーステップ・サーティセカンド)」を策定し、長期ビジョン「G-STEP30」のテーマである「3 つの G Growth、Global、Governance」に引続き取組み、加えてサステナビリティプラン「Prosperity、 Planet、 People」を実行することで事業収益の着実な強化と成長への基盤整備を目指して参りましたが、2024 年 3 月期には、円安・原燃料価格の高騰によるコスト上昇、市況の変化に伴う需要減少、高分子事業においては東南アジアを中心とする海外での競争激化による販売単価下落、衣料繊維におけるコモディティ化による収益低下の影響を受けて、連結決算開始以来、初めての営業赤字を計上し、また減損も実施したことで 54 億円の当期純損失を計上しました。2024 年度も、人件費削減等の一時的な対策により営業黒字を確保できる見込みではあるものの、実質的な収益力の回復には至っておりません。」
「本事業再生計画における機構支援の必要性」より。
「今般の構造改革には大規模な資金調達・資本増強が必要となりますが、現在の当社の財政状態・損益状況では十分な資金調達が行えず、また、収益力に比して過大な有利子負債を負担している現状においては、資本の毀損を伴う抜本的な改革を行うことができない事態に陥っています。当社は、外部からの資本の受け入れを含む財務基盤の強化に向けたあらゆる選択肢を検討する中で、①新規の資本出資及び融資が可能であること、②事業再生の専門家の支援を受けることが企業価値及び信用力の維持・向上に繋がること、③取引金融機関の利害調整等が可能であること等から、機構の再生支援を受けることが最善であると判断し、三菱 UFJ 銀行と協議の上、機構に再生支援を申し込むことにし、機構の再生支援の下で、企業価値の毀損を可及的に回避しつつ、透明・公正な手続により取引金融機関に金融支援を依頼し、機構からの本第三者割当増資による資金調達を得て財務基盤及び信用力の強化を図るとともに、課題事業の構造改革や徹底したコスト削減、さらには、収益事業における収益力強化等を主軸とする抜本的な事業再構築に取り組み、当社事業の再生を図るためには、機構の支援を受けることが最適と判断いたしました。」
ユニチカが祖業・繊維に幕 「東洋の魔女」輩出、名門の盛衰(日経)(記事冒頭のみ)
「かつて隆盛を誇った日本の繊維産業は、今世紀に入ると安価な輸入品の増加や人口減に伴う市場の縮小で競争力が下がった。そのなかでユニチカは繊維事業への依存から脱却できず、業績不振に陥った。」
ユニチカが私的整理へ 官民ファンド傘下で再生 祖業・繊維事業売却(朝日)
「ユニチカはこの日、事業再生計画を機構に提出し、機構は支援を即日で決定。ユニチカは来年2月に臨時株主総会を開いて株主に諮ったうえで、4月下旬に機構に対して第三者割当増資を行う予定だ。その結果、機構の持ち分はユニチカの議決権の66・76%を占め、同社の経営権を握る。」
「ユニチカ」祖業の繊維事業から撤退を発表(NHK)
上場会社でも、このように、倒産しないよう支援してもらえる会社もあれば、日本電解のようにあっけなく倒産してしまう会社もあるようです。
なお、中間期の決算短信では、「継続企業の前提に関する注記」は「該当事項はありません」となっています。半期報告書(11月12日提出)(監査人はトーマツ)も同様です。(つまり、ゴーイングコンサーンに問題はないのに支援してもらえたということ? あるいは、支援してもらえることを監査人は事前に知っていた?)
あおぞら銀、ユニチカ債権に取り立て不能の可能性(Yahoo)
「あおぞら銀行 <8304> は29日、繊維メーカーのユニチカ <3103> とその子会社への債権について、取り立て不能または取り立て遅延の可能性があると発表した。同社への貸出金残高は2024年10月末時点で79億1600万円。」