月例ネット句会臨時ブログ(旧 俳句日記/高橋信之)

高橋信之(愛媛大学名誉教授・俳句雑誌「花冠」創刊者)

4月12日(火)

2011-04-12 11:20:01 | 今日の俳句
春の雷生きていることありありと   信之
天地轟く春雷に、自然界の中でのおのが命の在り処をありありと実感されたのでしょう。ものみな命育む季節の、胎動であるかのような春の雷が、力強く明るく心に響きます。(藤田洋子)

○今日の俳句
春光に包まれし身のときめきよ/藤田洋子
作り手の心が新鮮で、生き生きとしています。 明るい句です。読み手に快い思いを与えてくれます。(高橋信之)

4月10日(日)

2011-04-10 11:16:15 | 今日の俳句
★春天の飛機の胴なる中に居る   信之
飛行機の中にいるのはもちろん作者である。松山と東京を結ぶ春の旅の航路であろうか。旅の先にある楽しみを想っている自分を、離れたところに視点を置いて眺め、詠んだ所がユニークと思います。(古田敬二)

○今日の俳句
花浮かぶ水門へ潮上がり来る/古田敬二
美しく、そして力のある句です。中七から下五にかけての句またがりがリズムをうまく盛り上げています。(高橋信之)

4月9日(土)

2011-04-09 21:25:07 | 今日の俳句
★花菜の列が陽を真向かいにして土手に   信之

○今日の俳句
けふは外出の桜むらがる町へ/臼田亜浪
季語は、「桜」に違いないが、それは、この句の主題ではない。人間の動きがあって、「桜むらがる」に作者独自の自然観を読む。句またがりの破調がいい。上五から中七への「けふは外出の」と中七から下五への「桜むらがる」の破調のリズムは意図的なものではないが、作者の強い思いを伝えてくれる。これが「広義の十七音」なのである。(高橋信之)

◇生活する花たち「花えんどう・ヒアシンス・ゆすら」(横浜日吉本町)


4月8日(金)

2011-04-08 21:23:37 | 今日の俳句
★さくら散るさくらの色の中にいる   信之
さくらならではの落花さかんの風情。満開の花よりも、花と一体化できるのはこの時期でしょうね。 (矢野文彦)

○今日の俳句
車椅子落花を運び戻りけり/矢野文彦
車椅子を詠んだ句に佳句があり、生活に明るさがあるのは、作者の内面の強さがあってのことである。(高橋信之)

◇生活する花たち「桃の花・苺・馬酔木」(横浜日吉本町)


4月7日(木)

2011-04-07 21:22:45 | 今日の俳句
★花降るを子が全身で喜べる   信之
花が降るように舞う中、それを受けとめようと両手をいっぱいに広げて楽しそうな子どもたち。春らんまんの喜びと、子どものもつ愛らしさが一句からいきいきと伝わってくるようです。(小川和子)

○今日の俳句
花影に歓声あがる滑り台/小川和子
うれしい句だ。子どもの世界を詠み、明るく、レベルが高いのである。(高橋信之)

4月6日(水)

2011-04-06 21:20:44 | 今日の俳句
★雲雀高揚がる沖より吹く風に   信之
春の田畑に雲雀が真直ぐに高々と揚がる光景はよく見かけます。「沖より吹く風」にのどかな景色の中にも雲雀の意思のようなものを感じます。(黒谷光子)

○今日の俳句
片脚は湖に大きく春の虹/黒谷光子
作者は、近江商人発祥の地である五個荘のお寺に生まれ、湖北のお寺に嫁いだ。琵琶湖周辺の美しい風景が作者の生活の場であり、いい生活からいい俳句が生まれた。(高橋信之)

◇生活する花たち「桜・馬酔木・レンギョウ」(横浜日吉本町)


4月5日(火)

2011-04-05 21:19:11 | 今日の俳句
★犬ふぐり散らばる中に土手に坐る   信之
犬ふぐりの咲く様子はまさに「散らばる」です。青い小さな花が土手いちめんに散りばめられている、その中に座って春を楽しんでおられる、いいですね。(多田有花)

○今日の俳句
軽やかに光返して初燕/多田有花
初燕が軽やかに飛ぶ様を、余計な言い回しをしないで、素直に表現している。それが、また、「軽さ」に通じているのがよい。(高橋信之)

◇生活する花たち「桜・雪柳・すみれ」(横浜日吉本町)

4月4日(月)

2011-04-04 16:18:01 | 今日の俳句
★いく匹も蝶遊ばせて樹の空間   信之
伸びやかな樹々のあいだの空間に何匹もの蝶が飛びまわっている。春の季節を感じるとともに少しばかり童心に帰る心地が致します。 (河野啓一)

○今日の俳句
はるばると黄砂飛び来て吾が門に/河野啓一
中国大陸からの「黄砂」を詠んで、「吾が門に」という焦点が絞られ、その焦点からの広々とした自然を見ている。(高橋信之)

◇生活する花たち「ユリオプスデージー・すみれ・クリスマスローズ」(横浜日吉本町)

4月3日(日)

2011-04-03 16:03:11 | 今日の俳句
★さくらさくらさくらさくらてのひらに   信之
桜の花が持つ柔らさを全て平仮名で記し、破調とも思われながらきっちり17文字の定形に納め、そして僅かに「てのひらに」で止め、自己の立つ位置を示し、無限とも思われる落花にただ無心にひたる事によってその美、その自然の驚愕とも思える営みを余すこと無く詠い切っている。花鳥風月の美と風情を詠う時、有心は無心につながると言う事であろうか?(桑本栄太郎)

○今日の俳句
我が身より影出て動く春燈に/柳原美知子
作者の句には、やさしくて、芯のある母の姿を見ることが出来るが、家庭と職場を離れての秀句に作者内面の充実を知って嬉しい。(高橋信之)

◇生活する花たち「すもも・椿・すずらん水仙」(横浜日吉本町)


4月2日(土)

2011-04-02 15:59:26 | 今日の俳句
★ござ敷いてその上に花影を置く   信之
平成二年の作だが、この年の夏には、家族でドイツを訪問することになっていた。その春に、愛媛大学のドイツ語教室の先生方と、わが家の裏手の桜の下で花見の宴を開いたときの作で、桜の下に茣蓙を敷いた。敷いたばかりの茣蓙には、満開の桜の影が映ったというのである。このときは、子どもたちも嬉しくて、到着の遅れたライネルト先生を迎えるのに息子は、自転車で家の周りをぐるぐる廻ったり、一年生であった娘も「ごちそうにさくらの花びらふってくる」の句を作り大変喜んだ。急逝された土屋明人先生が、博多の明太子と「緑川」というお酒を持ってこられたりと、思い出深い花見であった。今、その花影は、いんいんとして作者の胸にあることであろう。(高橋正子)

○今日の俳句
蒲公英の数本は吾が影へあり/祝恵子
私の好きな句である。控え目であって、優しく、観察の眼に深いところがあるのは、恵子さんらしい。(高橋信之)

◇生活する花たち「桜・馬酔木・曙つつじ」(横浜日吉・鯛ヶ崎公園)


4月1日(金)

2011-04-01 15:55:17 | 今日の俳句
★囀りの強き一声して去れる   信之
今、去った声は、繁殖期の雄の命をかけた宣言なのでしょう。きれいな音色だ、うららかだ、と言われる囀りも、鳥は、その一声のため全身をいっぱいに震わせています。ひと鳴きの強い意志に、気持が引き締まります。 (川名ますみ)

○今日の俳句
道ひろく春山絶えず正面に/川名ますみ
病床にあっても、内面の強さを持ち続けていることを嬉しく思う。明るさがあり、意志の強さがある。こうした俳句への姿勢は、物事を絶えず真っ正面から見ているからである。(高橋信之)

◇季節の花「はくれん・馬酔木・たんぽぽ」(横浜日吉本町)