…という"Competitor Running"誌の記事です。
"The Sports Gene : Inside the Science of Extraordinary Athletic Performance"って書籍が出たくらいなので、今後は運動能力と遺伝子の関係がより仔細に調べられるようになるのかもしれません。
個人的にはあまり面白くない時代かなぁ…と思いますが。
(この本自体は読みたいです)
あと、ストレッチングをどうするか?も少し考えます。弊堂でも、これからは動的ストレッチを中心にすることも検討します。
優秀なランナーは身体が硬いのか?
By Matt Fitzgerald
身体の柔軟性欠如と、速く走る能力に関連する遺伝子が同定された
第1回オリンピックがギリシャで開催されて以来、トレーニングと才能は運動能力を決定する重要な要因と見做されてきた。しかしながら、ごく最近まで、トレーニングの方が才能よりずっと大切だと考えられていた。というのも、トレーニングは眼で見えるし、測定/評価も可能である。一方で、才能は遺伝子にコードされていて判らない、と考えられていたからである。
しかし時代は変わった。遺伝子は見えるようになった。今や人類は、身体能力という形質とそれを裏付ける遺伝子を関連付ける手法を確立した。つまり、運動能力とそれに関連する遺伝子の関係を特定出来るようになった。
2011年にケープタウン大学(南アフリカ)の研究グループは、COL5A1という遺伝子/身体の柔軟性/56kmウルトラマラソン参加者の運動能力の関係を調査した。予備的研究によって、COL5A1はランニング効率と関連していることは明らかにされていた。具体的には、COL5A1を有している人はそうでない人に比べ、より効率良く走られる傾向が見られたのだ。また、別の研究では、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていることも明らかにされていた。そこでこれら三者の関係が調べられた。つまり、COL5A1が身体の柔軟性を低下させる結果、ランナーとして優秀になるのかどうかを調査した。
被験者は72名であった。レース前に、被験者の
・COL5A1の有無
・体の柔軟性(≒立位体前屈)
を調べた。また、レース後に成績をまとめ、上記の調査結果との関連を検討した。
平均値で評価する限り、COL5A1を有している人は有していない人に比べ、ゴールタイムが24分間(約6.5%)早かった。また、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていた。更に、被験者を(走りが速い/遅い)×(柔軟性が高い/低い)で4つに区分すると、(走りが速い×柔軟性が低い)区分でCOL5A1の発現量が有意に多かった。
では一体、ランニングスピードの速さと身体の柔軟性はどう関係するのだろうか?。それは、ランニング効率と筋繊維の伸展性の関係に言い換えられる。筋繊維はいわば、ゴムひものようなものである。張力が高いものもあれば、低い≒緩いものもある。そして張力が低いものはよく伸びるが、それらは力を蓄えられない/発揮出来ない。逆に張力が高いものは余り伸びないが、大きな力を蓄えられる/発揮出来る。
ただ本質的には、筋繊維の張力の高い/低いについて、どちらが良いのかは一概には言えない。要は「時と場合によりけり」である。例えば、体操選手なら筋繊維の張力が低い≒身体の柔軟性が高い方が有利である。一方で、ランナーは張力の高い筋繊維を欲している。なぜか?。ランニング動作では足が着地する際、足関節/膝関節が屈曲するのに合わせて下腿三頭筋(ふくらはぎ)/大腿四頭筋は伸展する。この時、それぞれの筋肉はいわば地面から反作用として受ける力を蓄積していると考えられる(この事は、ゴムは伸ばされる程張力が高くなるのをイメージしてもらえば分かりやすいだろう)。そしてランナーが足関節/膝関節を伸展して地面を蹴る際、筋肉に蓄積された力が地面に伝達され、ランナーは前方に”跳ねる”ように進む。この過程が上手に利用出来れば、ランニング効率が向上し、ひいてはランニング能力が向上する。
COL5A1については、有しているかいないかの何れかであるし、それはもはやどうしようも出来ないことである。一方で、ランニング歴が長くなるに連れ、身体の柔軟性が低下することに気付いている人も多いだろう。この、身体の柔軟性の低下は、トレーニングを通じランニング効率が向上することと表裏一体である。一般的には、身体の柔軟性の低下は良くないことのように思われているが、決してそうではなく、むしろ過度にストレッチをすることがランニング効率の向上を阻害する可能性もある。
ややこしくかつ大切なのは、身体の柔軟性の低下自体がランナーとしての長所ではない、ということである。身体が硬いこと/筋繊維の弾性が高いことの2つが合わさることが、ランナーとしての長所となる。また、身体の柔軟性/身体の動きやすさ以外にも、ランナーとしての能力を規定している要因は数多くある。
"The Sports Gene : Inside the Science of Extraordinary Athletic Performance"って書籍が出たくらいなので、今後は運動能力と遺伝子の関係がより仔細に調べられるようになるのかもしれません。
個人的にはあまり面白くない時代かなぁ…と思いますが。
(この本自体は読みたいです)
あと、ストレッチングをどうするか?も少し考えます。弊堂でも、これからは動的ストレッチを中心にすることも検討します。
優秀なランナーは身体が硬いのか?
By Matt Fitzgerald
身体の柔軟性欠如と、速く走る能力に関連する遺伝子が同定された
第1回オリンピックがギリシャで開催されて以来、トレーニングと才能は運動能力を決定する重要な要因と見做されてきた。しかしながら、ごく最近まで、トレーニングの方が才能よりずっと大切だと考えられていた。というのも、トレーニングは眼で見えるし、測定/評価も可能である。一方で、才能は遺伝子にコードされていて判らない、と考えられていたからである。
しかし時代は変わった。遺伝子は見えるようになった。今や人類は、身体能力という形質とそれを裏付ける遺伝子を関連付ける手法を確立した。つまり、運動能力とそれに関連する遺伝子の関係を特定出来るようになった。
2011年にケープタウン大学(南アフリカ)の研究グループは、COL5A1という遺伝子/身体の柔軟性/56kmウルトラマラソン参加者の運動能力の関係を調査した。予備的研究によって、COL5A1はランニング効率と関連していることは明らかにされていた。具体的には、COL5A1を有している人はそうでない人に比べ、より効率良く走られる傾向が見られたのだ。また、別の研究では、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていることも明らかにされていた。そこでこれら三者の関係が調べられた。つまり、COL5A1が身体の柔軟性を低下させる結果、ランナーとして優秀になるのかどうかを調査した。
被験者は72名であった。レース前に、被験者の
・COL5A1の有無
・体の柔軟性(≒立位体前屈)
を調べた。また、レース後に成績をまとめ、上記の調査結果との関連を検討した。
平均値で評価する限り、COL5A1を有している人は有していない人に比べ、ゴールタイムが24分間(約6.5%)早かった。また、COL5A1を有している人は身体の柔軟性が劣っていた。更に、被験者を(走りが速い/遅い)×(柔軟性が高い/低い)で4つに区分すると、(走りが速い×柔軟性が低い)区分でCOL5A1の発現量が有意に多かった。
では一体、ランニングスピードの速さと身体の柔軟性はどう関係するのだろうか?。それは、ランニング効率と筋繊維の伸展性の関係に言い換えられる。筋繊維はいわば、ゴムひものようなものである。張力が高いものもあれば、低い≒緩いものもある。そして張力が低いものはよく伸びるが、それらは力を蓄えられない/発揮出来ない。逆に張力が高いものは余り伸びないが、大きな力を蓄えられる/発揮出来る。
ただ本質的には、筋繊維の張力の高い/低いについて、どちらが良いのかは一概には言えない。要は「時と場合によりけり」である。例えば、体操選手なら筋繊維の張力が低い≒身体の柔軟性が高い方が有利である。一方で、ランナーは張力の高い筋繊維を欲している。なぜか?。ランニング動作では足が着地する際、足関節/膝関節が屈曲するのに合わせて下腿三頭筋(ふくらはぎ)/大腿四頭筋は伸展する。この時、それぞれの筋肉はいわば地面から反作用として受ける力を蓄積していると考えられる(この事は、ゴムは伸ばされる程張力が高くなるのをイメージしてもらえば分かりやすいだろう)。そしてランナーが足関節/膝関節を伸展して地面を蹴る際、筋肉に蓄積された力が地面に伝達され、ランナーは前方に”跳ねる”ように進む。この過程が上手に利用出来れば、ランニング効率が向上し、ひいてはランニング能力が向上する。
COL5A1については、有しているかいないかの何れかであるし、それはもはやどうしようも出来ないことである。一方で、ランニング歴が長くなるに連れ、身体の柔軟性が低下することに気付いている人も多いだろう。この、身体の柔軟性の低下は、トレーニングを通じランニング効率が向上することと表裏一体である。一般的には、身体の柔軟性の低下は良くないことのように思われているが、決してそうではなく、むしろ過度にストレッチをすることがランニング効率の向上を阻害する可能性もある。
ややこしくかつ大切なのは、身体の柔軟性の低下自体がランナーとしての長所ではない、ということである。身体が硬いこと/筋繊維の弾性が高いことの2つが合わさることが、ランナーとしての長所となる。また、身体の柔軟性/身体の動きやすさ以外にも、ランナーとしての能力を規定している要因は数多くある。
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