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定年後の日々や、現役時代の経験が誰かの役に立てば幸いです。

数の認識

2022-04-14 14:32:11 | 現役時代の思い出

小学校高学年で国語や理科社会などはそこそこできるのに、算数だけはとても苦手な子がときどきいます。

そういう子に、計算ドリルをたくさんやる課題をもたせたからといって、できないし、できるようにはならないのです。

そういう子でも、百ます計算はできます。ただし、掛け算九九の百ます。他の子達とも遜色ないスピードでクリアできます。

しかし、足し算の百ますをやらせると(教室でみんな一斉に)とても時間がかかる。それとなく様子を見に行くと、机に隠れて指を折っていることに気が付きました。

高学年です・・・。

それなのに、数の認識が、順番の数(順序の数)の認識で止まっているのです。

つまり、3つのボールを見せて、いくつかと尋ねると、即座に「3」と答えるのではなく、一つ一つ「イチ、ニィ、サン」と数えてからでないと、「さん」と言えないということです。

実際、指を四本立てて、「いくつ?」と聞くと、一本一本数えて、「4本!」と答えたのには驚きました。

数の認識を、順番の数(序数)ではなく、基本の数である「基数」にしてあげなければならないのです。

簡単に言えば、サイコロの目をパッと見て「5」とか「6」と認識することができるようにすることが大事だと考えました。

昔、若い頃に読んだ本の中に、あった内容です。自然と調和・共存し、欲張らず満ち足りた豊かな生活を送ってきたある民族にとって、3よりも大きい数詞はありませんでした。3より大きな数は、4でも、8でも10でも、全て「たくさん」という一言で済んだということでした。ですから、順序としてしか数を認識できないことは文化的な現象でもあると考えられます。ということは、後天的であり、癖と言ってもいいことなのです。ですから、練習や訓練で矯正することができるはずです。事実、先の民族は、他の民族と触れ、失敗を繰り返す中で、「基数」の概念を獲得できたのですから。

では、どこで、「基数」の習得をしそこなったのか。

おそらく、小学校1年生ぐらいの段階では、指を折って足し算や引き算をすることでなんとかしのいできたのでしょう。アルファベットを思い浮かべてください。「ABC・・・」をそのまま「1,2,3・・・」と置き換えて次の足し算をしてみましょう。

「E+H=?」

おそらく多くの人が指を折りながら「A,B,C,D,・・・」と唱え「Eが5かぁ。じゃあ、Hは?」と、また「A,B,C,D・・・」と、指を折り重ね、「あ、たりない・・・」と、困ったことになるのが、序数としての計算認識です。

10進法の繰り上がりの練習で「2,8,10」「3,7,10」など補数の練習を何回も繰り返し暗証させる場面もあります。丁寧に、10玉そろばんや図とともに暗証させてくれる丁寧な先生もいますが、そうでないと算数は途端に「暗記」になってしまいます。指を折る子にとって、もはや、数の概念よりも、クイズに近いものとして捉えてしまったのではないかと考えられます。

 

小学校2年生になると、すこし、ホッとします。なぜなら「九九」が入ってきて、算数がそのまま「暗記」になってしまうからです。もしかしたら、「暗唱」かもしれません。順序でしか数を認識できていない子にとっては、3も9も大きさや多さというイメージとはかけ離れた音声の違いのみの言葉に過ぎなくなってしまっていたかもしれないのです。

それでも、2年生の段階では、九の段まで「暗唱」できれば、シールや賞状をもらえ、クラスでもご家庭でも、一緒に喜んだりするのでしょう。しかし、3年生になると、事情が変わってきます。割り算です。割り切れる計算までは、なんとか暗証した九九でしのげますが、あまりのある割り算になると、また指折りの出番です。

 

と、ここまで、数認識がうまくいていない原因に関しての考えを書いてきました。基数としても数認識を指せる手立てとして、私が試してきた方法を紹介します。

それは、「10丸シート」です。

他県から転校してきた4年生で転校前は算数のみ専門の教育センターで学習してきたといういわゆる「算数LD」と思われるお子さんに試してみたところ、5年生では割り算や分数の計算もスラスラこなせるようになりました。