日々のメモ

事業や企業、経済の動きについて分析していくブログ

PEファンド

2022-09-23 22:35:09 | 分析・観察
最近、PEファンドという言葉がたまに経済誌に登場するようになった。
Private Equityすなわち市場取引されていないプライベートな資産持分に対して出資してリターンを得ることを主な目的とするこのファンド事業は、着実に規模を拡大し続けており、日本を含め世界中の経済に影響を与え続けている。
特徴的なことは、彼らが投資先に対して経営メンバーを紹介したり、M&Aやデジタル化といった特定のテーマの支援を行うことで業績から高めていき、その結果としての株価の高まりをリターンの源泉としている考え方だ。そのため、メンバーには投資のプロに加えて、戦略コンサル出身者を揃えているようなことが多い。

カーライル・グループ、KKR、ベインキャピタル、ブラックストーン、アドバンテッジパートナーズ、インテグラル、ユニゾン・キャピタル…といった大手ファンドの名前を一度はニュースで目にしたことのある人は多いであろう。

そして日本銀行の2020/12のレポート((論文)わが国におけるプライベート・エクイティ・ファンドの可能性―アイデアとコミットメントのあるファイナンスへの期待― : 日本銀行 Bank of Japan)からすると、少なくとも日本における彼らの活動は大きく規模を増していく確率が高いと思われる。

彼らについてネットで調べて、概要の次には年収の高さや仕事のやりがいと言った情報がすぐに出てくる。インタビューも面白い。
しかし彼らの事業が持ちうる社会的なリスクを正面から語る記事が少ないと感じるのは私だけではないだろう。

PEファンドの仕組みは1970年代のアメリカには存在していたのだが、彼らの事業の問題点が現れた1990年前後に、世界の名だたる投資家がそのリスクを批判したのだ。
ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーによるその批判とは、彼らが投資先に対して最大限の借入を行わせていた危うさである。経営権を得て、会社自体を借入主体として元の株主たちから株式を買い集めさせたのだ。その比率はなんと概ね借入:資本=9:1であったらしい。
上手くいけばPEファンドは(ちょうど信用取引で何倍もレバレッジをかけたように)大きな利益を得るが、経営破綻すると失うのはその会社に投資したお金のみだ。そして1990年前後に、過度な借入で破綻した米国企業がいくつも出ていたらしい。(グリーンブラット投資法)

結論から言うと、めぼしい案件をみていて、今の日本のPEファンド活動はそのようなレバレッジをかけていなかった。もちろん借入は行わせているのだが、9:1のような危険な構成にはなっていない。
仮にこのリスクが今後も適正管理され、悪質な考えによる投資(つぶれてもファンドは出資分しかいたまないからレバレッジをかけて投資先にリスクをとらせる、というような投資)が出てこなければ、PEファンドは素晴らしい。
・働き先として、やりがいと高い報酬がある
・出資先企業の人間として、自力では考えられないような事業の飛躍的拡大を支えてくれる
・投資家として、リターンを得られる

今後もPEファンドの動向を見ていきたいと思う。

レポートバンク「日本のPEファンド分析2022」
: 彼らの取組みを、具体的な案件について時系列で調べるなどしているレポート。さらに情報を集めたい場合にどうぞ。

ブログのテーマの集中

2021-01-30 00:19:22 | 分析・観察
自らのブログの内容を読み返した時、その読後感というか、品質にバラつきがあると思うのは僕だけではないと思う。

自分の例で言えば、
おそらく企業財務や会計、競合優位性のような内容(幅広にとらえて社員の興味関心なども扱ってきた)については比較的良く、
デジタル化について話す内容などはあまり良くなかったと思う。(これも興味関心の差だろうか)

興味関心にさらに集中して向き合っていき、より良いメディアへ仕上げていくための一つの気持ちの切り替えとして、ここで新たなブログへと(同じくgooブログ内に別なメルアド紐付けで)制作し直した。
今後もよい記事を書くべく努力する方針なので、よろしくお願いします。



レポート作成事業

2021-01-27 00:00:08 | 分析・観察
レポートには何の価値があるだろうか。
数々のレポートを作成する過程で、それを日々考える。書き込む内容にも影響する問いだから、それは当然だ。

そして今の段階の答えとして、僕は文化的な価値と実際的な価値の2通りあると思っている。

文化的な価値は、知ることの喜びだ。日常で接する物事がどのような仕組みで動いているいるのか、世界に詳しくなることは理由なく楽しい。
世の中にこうしたものは存在していて、例えば出てきたばかりで用途も分からない新発見の科学論文や、多くの人に関係のない深海や宇宙についてのニュース記事は、社会からすればこのような意味合いが強いのではないかと思う。
時にはお金を払って博物館に出かけたりする人々の行動、博物館の運営が脈々と続いている世の中というのは、こうした好奇心が人生の豊かさに貢献している証拠なのではないかと思う。

この価値観からすれば、レポートはより多くの点をつなぎ仕組みの不思議さを明らかにする役割を持つべきで、なるべく日常生活から会社の業績・業務まで連ねて記したいと思う。(もっとも、この価値観で動いていると、調べられる範囲の限界を度々感じるが)

次に実際的価値だが、これは一つには投資を考える人の目線で、企業の資本比の利益率(ROE)を読み手が予想できる程度まで調べるということだ。
株式を買うことを考えるとき、同じ1万円を活用して、片方の会社だと毎年1000円、もう片方の会社だと毎年500円稼げるように思えるなら、前者が得だと判断がつく。
この価値観からすれば優れた利益予測を書けるといいのだが、当然断言できるような情報は揃わない(未来の業績は1ヶ月先だって分からない)。その会社自体にも分からず、ウォーレン・バフェットの言葉を借りるなら、自らの会社の成長率を数値で出すような会社は信頼出来ないぐらいのものだ。(『バフェットからの手紙第4版』より。これによれば会社の目標公表は、読み手に楽観論を広める不都合だけでなく、社内に目標達成圧力から不正な会計へのインセンティブをもたらすのですべきでない。)

もう一つには、働いたり関わる人の目線で、一人あたりの売上・利益や、手掛ける事業の特徴や変遷を眺め、イメージを少しは持てるようにすることだ。

これらの価値観に向けては、外部環境の情報や過去10年くらいの経営効率・手掛ける事業とその割合(国内外比率も)の変遷を整理するのが精々であり、「考える材料だけ根拠をつけて一定量集め、整理する」という辺りを目標にしている。
(企業公式サイトの採用ページにあるようや細やかな話は人それぞれの感想の要素もあり、あまり扱わない)

読み手が面白いと感じる、役立つと感じるレポートを、楽しみながら作り出していきたいと思う。

作成したレポートのまとめページ


お餅の市場動向

2021-01-01 17:11:00 | 分析・観察
あけましておめでとうございます。
正月らしいビジネスの分析をしようと思うので、今回はお餅の話を。

お餅は現代では自らついて食べる人は少ないと思われ、上場企業であるサトウ食品など様々な企業から、包装餅がスーパーやAmazonなどで売り出されている。
そしてその市場規模については、サトウ食品の包装餅製品の売上高(2019年5月〜2020年4月末)が213億円超であるなどかなりの規模にのぼっている。(2020年4月期の決算資料より)

サトウの切り餅は1kgで700円ちょっと。
一億人の日本人が平均で1kg買って食べるとしても700億円の市場になり、業界トップのサトウ食品の売上が213億円であったことからしても大体このくらいの規模なのではないかと推測がつく。

それでは、包装餅のビジネスは今後どうなってゆくのだろうか。
影響の大きい外部環境をみると下記の通りである。
(社会)
・日本の人口減少
・コロナでの外食の減少
・海外の食材が多く手に入るなど食文化の多様化
・スマホ普及で増えたインスタなどSNSでの話題性を求めるデジタルな行動様式
・味の評価コメントの広がりの加速
(テクノロジー)
・自動化可能な領域の広がり
などが挙げられる。

つまり、これまでと同じお餅を同じように売っていくと人口減少と食文化の多様化で次第に市場は細ってゆく確率が高い。
お餅は文化と根強く結びついた商品(お正月に食べる)なのでお正月文化が残る限り急に需要が減ることは考えづらいが、例えば10年後などを考えれば市場は縮小するだろう。
これに対して企業が取り得る手段としては①〜④のどれかもしくは合わせ技である。

①あきらめて他事業に予算や人を移行していく
②国内で1人あたりの消費量を増やすべく、a.地道に美味しく改善していく
b.何かしら「スマホでコメントしたくなる凄さを感じさせるような」美味しい食べ方を打ちだす。例えば飲食店運営に進出して美味しいお餅料理を見せて普及させていくか、SNSでお餅ブームを仕掛けていく等
③現地ごとの食文化に合わせた売り方を検討して海外進出
④自動化領域の拡大でコスト削減

このうち何が起こるかは、各社の経営判断なのでまだ分からない。
ちなみにサトウ食品は今のところ①で米飯事業に移行しているようにみえるが、今後どう動くかは分からない。
②b.に本格的に進むことで、例えば丸餅を入れたハンバーガーをモスバーガーあたりと組んで大ヒットさせ、モチバーガーを通年メニューとして定着させればお餅市場の規模は変わってくるだろう。
この年末年始、メーカーは見ていないが家族が買って出してくれたお餅がやけに柔らかくて美味しかった。僕はまだまだお餅を食べる正月を続けそうだ。お餅業界の今後の工夫は楽しみである。

市場などを分析したレポートの一覧


企業の慈善活動

2020-12-29 10:34:00 | 投資・会計・ガバナンス
大企業は慈善活動を行うことで、その名声を高めている。どの企業の公式サイトをみても、なんらかの慈善活動を公開しているはずだ。そして投資家としては、それがコミュニティに対する温かい支援となってほしいと思うと共に、企業の利益にもなって還元されてほしい。

慈善活動が純粋に公益でしかなかっただとしたら、税金を追加で納めていることと変わらなくなってしまう。特にその企業が株主に対してリターンを出せていない場合には、そのような慈善活動に投資家は嫌な気持ちになるだろう。思わしい利益を出せていないのに個人的な趣味で寄付をしている企業経営となれば、それはガバナンスが効いていない経営ということである。

「気付いた時に投資先から外す」というのが現行ルールでの答えなのだが、ここでは投資してから残念な事態になる前に、企業の寄付行為からガバナンスを評価できるような視点を考えたい。

まず、バフェットの寄付行為に対する考えは株主への手紙に記されていて、それは「企業は寄付が税効果も含めて相当な利益をもたらすものであれば行う、そうでなければ行わないべき」というものだ。
経営者が母校への感謝、ふるさとへの感謝を感じるならば、個人として寄付するべきだと整理している。
たまに「名経営者にも母校や故郷への寄付が見られ、彼らの企業も立派に成長しているパターンがこれまでに存在する」ということも認識している。このような場合は、資本主義の考えに従うならば「利益を求めて投資する」のが本来取るべきスタンスだといえる。自分でもそうするだろう。
合っているか分からないが、「その寄付が名経営者のモチベーションになって企業にリターンとして返ってくる」くらいの認識をしている。よって、

①オーナー社長がいて名経営者なら個人的な寄付に会社のお金が使われても合理的なのだと納得する
②そうでない個人的な寄付が行われているのであれば今後の経営が不安な企業と考えて投資は控える

のが正解なのではないかと推定している。

個人的な寄付かどうかは、個別に投入した金額と(広告効果など)リターンのバランスを個々に考える必要がある細かい話なので、「せめて株主に質問されたとき説明できるくらい考えていてほしい」と願うばかりである。
そして説明を聞かなくてもおかしい、経営者の趣味だろうと思えてしまうような寄付が多ければ、①に該当しない限り、その会社の投資は控えるのが良いのではないかと思う。
企業目線で言えば、
・①のパターンの企業であると自覚があるのであれば、その経営者が現役のうちに、後の混乱を起こさないよう予め個人的な趣味での投資を控えるようなガバナンスを用意しておくこと(寄付の元手を会社のお金からポケットマネーに変えていく)が望ましく、
・直近まで①だったが名経営者引退後であるならば、個人的な趣味での資本配分の慣行が残っていないか特に気をつけて確認することでガバナンスを確保することが求められる
ということになるだろう。後者のガバナンス構築は先代の否定と受け取られ反発が内部であるかもしれないので、社外取締役などの活躍が求められるかと考えられる。

レポートバンクとして作成した市場レポート等のページ