日々のメモ

事業や企業、経済の動きについて分析していくブログ

興味関心と会社

2020-12-20 08:38:00 | 分析・観察
興味関心のある仕事か、というのは就職活動の時に聞かれた質問であると思うが、これはその後も何度も経営者からスタッフに問いかけるべき質問で、「皆仕事に興味を持って取り組んでいる」という状態にもっていくことは会社にとても意味のあることだと考えている。
経営の上手い人、会社を栄えさせた人と言えば日本経済新聞「私の履歴書」に出てくるような人々が浮かぶと思う。僕はこの経営者編が好きで、絶版になった物もメルカリで集めて読んでいるくらい(「昭和の経営者群像」シリーズは全巻集めた)だが、僕の読んだ限り全ての人が興味関心をもって様々な打ち手を繰り出す日々を語っていて、多分ほとんどの人は興味関心で競合に差をつけていると感じる。(新技術に目を向け続けたり、海外の同業他社を見て回ったり、売り方を変えたり、上流工程や後工程のビジネスと統合したり、様々な工夫が登場する)

また、経営の上手い人として、経営コンサルタントも思い浮かぶはずだ。
日本で経営コンサルティングを極めた人としては大前研一氏が筆頭にあがると思われるが、その代表作「企業参謀」では戦略的計画の核心として、
・戦略は自社の強みに立脚した守り抜けるものであるべきこと、
・いつも自社の強み弱みや戦略の内容を知ってリスクに対応できる柔軟性をもった人材を持つべきこと
を述べている。
前者は大前研一氏のような戦略コンサルタントが何とか見つけ出してくれるのかもしれないが、後者はその戦略が自社の社員にとっても興味関心のある話でなければ持つものではない。つまり、戦略コンサルタントにより考え出された新規事業が自社の社員の興味にあってなかったら、まずやめておくべきだと言っているに等しい。(仮に製鉄会社の工場の余熱で熱帯植物を育てる、みたいな事業が出てきても、熱帯植物にコンサルタント以外誰も興味を持たなかったら当然続かないだろう)

つまり実践でも思想でも、事業への興味関心の重要さはこれまでに発信され続けてきていて、就活生も現役世代にも経営者にも問いかけられ続けるべきものなのだ。
ちなみに僕は昔からおもちゃを並べて眺めたり本を読むのが好きで、今でもたくさんの調べものをして色々考えながら整理し直す作業が好きである。ある程度一人で考えつつ、そこに友人と喋りながら進められる時間もあるともっと楽しい。
皆さんは如何だろうか。

レポートバンクとして作成したレポート。

特損処理のルール

2020-11-13 13:45:00 | 投資・会計・ガバナンス
企業の投資家向けニュースを読んでいるとシステム刷新に伴う特別損失の計上という発表がたまに出てくる。特別損失の理由はシステム刷新に限ったものではないが、デジタル技術が急成長を遂げている時代背景もあり、多くはシステム刷新を理由としている印象である。
しかも金額をみると企業によっては100億円を超えるような規模の損失計上であり、投資家にとっては無視できない数字である。発表によって時価総額が下がることは必至なので、無視できないネガティブサプライズなのだ。

このような慣行が続けば投資に消極的な世論を作り出す結果になると思うのだが、これはどうにかならないものか。
企業内部では明らかになっているはずなのだ…システムが何十年も前に記されたコード(COBOLで書かれているなど)で動いている、複数の部署に乱立していていずれ調整が必要だと思われている、等であれば誰が聞いても数年後の特損計上は目に見えている。
これは企業側にとっても悲しい事態を招く状態である。
「今後数年以内に発表しなければいけないけれど、株価下落の責任者になって株主から叩かれたくないから放置」という経営者が後の世代に押しつけようとすれば、社内の空気も悪くなるだろう。
ウォーレン・バフェットはかつて株主への手紙の中で特別損失の計上を「会計の操作だ」と批判していた。特損公表で損したことのある投資家であれば、皆同様の気持ちのはずだ。

したがって、ここで新しい開示制度を提言したい。無形固定資産の中で、システムについては更新年を記すのだ(合計600億円あるうち、300億円は2010年、もう300億円は2017年に更新)。
こうすれば、投資家は同業他社比較すれば今後数年以内に公表されるだろうシステム刷新の費用も大体わかるから、予め織り込んで投資を判断できるし、
経営者は既に織り込まれた時価総額ならシステム刷新にふみこんでも批判されないということで前向きに経営判断することができる。単なる投資家の利便性に留まらず、やや大げさに言えば日本企業の近代化を後押しするような施策になるのではないかと思う。

様々な業界について分析したレポートの一覧



人工知能の資産価値

2020-11-03 13:24:00 | 分析・観察
企業のデジタル化に関して、議論の最先端にいるリーダーの1人は、本を読んだりニュースを見る限り安宅和人さんだろう。デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げ、人工知能を使いこなして未来を変革する企業が活躍する社会を追求していて、その発言を追っているのは視点が増える楽しいことだ。
DXを行い人工知能を使うに至るまでのレベル感についてはそのブログの中で図解していて、初めの一歩にきているのは情報のデジタル化である。

これを読むと未来の競争のためには人工知能を活用しなければいけない気持ちになるが、それでは人工知能にはどれくらいの価値があるのだろうか。
これを市場で見てみるには、人工知能の有無の分かる類似の事業の企業をみるのが一つの指標になるだろう。

旅行サポート事業をみると、
米国で2000年に創業されたtripadvisor社は、旅行情報の閲覧者に対する広告表示で人工知能を適用することにより(Forbesの記事)、旅行を後押しして収益化に成功する企業だ。
Googleが旅行事業を伸ばして競合するというリスクはあるものの、今も時価総額は2000億円を超えている。
一方で旅行代理店を営む企業は、コロナ禍の影響もあるが日本では1980年創業のエイチ・アイ・エス社で時価総額1000億円を下回っているなどデジタル勢に遅れをとっている。

この差は、デジタルを用いてリーチした顧客数、リーチした顧客に提供したデジタルサービスの品質によると思える。アメリカの人口が日本の倍なのでtripadvisorは有利であるが、創業からの時間も考えればtripadvisorはより投資家に応える経営を出来ていると言える。
人工知能の活用を進める経営陣に、投資家の注目は今後集まるのではないかと思う。

レポートバンクでこれまで作成してきたレポートの一覧

AI活用までいかないまでも、その準備段階となるレベルの簡易で低コストな情報デジタル化の考えをまとめたレポート





「デジタル化」の費用感

2020-10-30 13:03:00 | ビル・ゲイツの方法論
かつてマイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、企業のデジタル活用にあたって何から始めるべきかについて、「電子メール」と答え、世の中の企業について「システムから価値を十分引き出せていない」と述べた(ビル・ゲイツ著『@思考スピードの経営』1999)

発刊から20年経っているが、これは今でも変わらないだろう。地域ごとの財務データや日次の活動記録など、すぐに分からないものがあったらデジタルの活用が不十分かもしれないと考え、紙の帳票が存在することを「それではデータをすぐに活用できない」問題視する。
20年前から比べると、今は半導体技術の飛躍やクラウドサービスの普及によってシステム導入の価格は安くなった。(電子メールはOutlookやGmailなど無料で利用できるほどだ)

teams会議は無料で利用できるし、ファイルの共有も一定の容量までは無料で可能となっている。
活用する発想があれば、多くの企業が業務を効率化できると感じる。
政府もデジタル化に強力に動き出しているので、このタイミングで「まずはお金をあまりかけずに経営をデジタル化する想像をしてみる」ことは、良い在宅ワークの過ごし方であると思う。

日常の業務や学びの中から得たデジタル化の考え方を整理した本

その他レポートバンクの作品

経営とオーナーシップ

2020-10-30 00:36:00 | 投資・会計・ガバナンス
総合商社がウォーレン・バフェット氏に投資されたことが一時期話題であったが、バフェットの経営理念と総合商社のそれには違いが存在する。

企業に投資する際の前提が異なるのだ。
バフェットはバークシャー・ハサウェイという持株会社の中の、ガイコという保険会社を通じて多くの株式投資を行う。
保有する会社はアップル、ワシントンポスト、マスターカード、コカコーラなどで、買う前提は優れた経営陣によって、魅力的な業界の事業が行われていることだ。そのため購入した企業に人を送り込むことはほとんどなく(自ら取締役になったりはしている)、買ったままの形で経営を委ねている。経営陣を誉め、「ほとんど口出ししない」と株主への手紙で述べているほどだ。
「彼らは我々と出会うずっと前から経営のスターだったのであり、我々の出来る主な支援は彼らの邪魔をしないことである」(『株主への手紙』ウォーレン・バフェット著)

総合商社は全く異なる。
優れた経営人材を抱えているということを強みとしており、魅力的なビジネスには会社の買収や設立で積極的に参入していき、買収した企業には人材を送り込んでトップから経営を舵取りしていく。
例えば三菱商事が子会社としたローソンは取締役がほとんど三菱商事出身者となり、経営を完全に親会社主導で行っていることがみてとれる。(ウェブのまとめサイト
経営が困難な状態にある企業にも人材を積極的に送り込んで立て直そうと努力する。例えば千代田化工建設は、27人の人材を一挙に送り込んで立て直しに動いている。(日経記事

成長することに関する考え方、企業戦略の違いは明らかである。
もし自らが買収される立場なら、バフェットの方が良いと思うのではないか。総合商社に買い取られ、経営権を握られ、出世が見通せないと感じてしまったら、きっと日々の業務に対するオーナーシップは失うだろう。
セブンイレブンとローソン、ファミリーマートで一日の売上が異なることは広く知られている。(セブンイレブンが高い)
単品管理による店頭商品の最適化などを考え出した鈴木敏文という名経営者の存在もあるのかもしれないが、そうした理論が明らかになった今も差がついていることの説明をどう捉えるべきなのか。

戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーは従業員のモチベーションを企業の業績を決める重要なポイントであると考えている。(ハーバード・ビジネス・レビューの記事
「自分のものだと思うからがんばる」という理論の根拠は日々の感覚からも理解が出来る。

企業買収の際の人事配置が与えるオーナーシップへの影響について、投資家は考える必要があるのではないかと思う。

「レポートバンク」で出しているレポートの一覧。