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「パタヤビーチへよーこそ!」
のコントに感化されて行ってみたら、ハマってしまったパタヤ。
その前はプーケットばかり行ってた。
ハワイと香港とバリがいっしょくたになったような島で、楽しかった。
パタヤは海がある歌舞伎町、2面性を持っていて、目的を持たず行くべき場所。
昼間はビーチの日陰でマッサージ受けながら寝て、夜はネオン街をぶらつく。
その夜と昼の間、ものすごい夕焼けが見れる。
オーロラみたいに金色からすべての暖色系、そして紺色の星空へ。
祈りをささげるような気持ちで、毎日砂浜へ座ってながめてた。
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その時間になると町のあちこちでエアロビクスが始まる。
金額は10~20円くらいだったと思うけど、自主的に箱に入れるシステム。
そのなかでもひときわ人気があるコーチがいた。
参加してる人たちは大笑いしながら楽しそうに踊って(?)いる。
エアロの動きは世界共通みたいで、私も途中参加してみた。
コーチはKABAちゃん似の華奢なオカマちゃん。
タイ語はわからないけど、きっとおしゃべりも上手なんだろう。
おばちゃんたちはゲラゲラ笑い続けつつ肉を揺らして踊る踊る。
途中からもう一人、インド系のきれいな顔立ちの青年が舞台へ。
ダブルコーチの動きはぴったり合っていて、コンサートを観てるみたい。
終わったら、彼らが「どこからきたの?」と英語で話しかけてくれた。
おばちゃんたちも「明日も来る?」って笑いながら囲んでくれた。
そんでもって、私はパタヤがもっと大好きになった。
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1年後、ひとりでパタヤへ行ったとき、彼らにビーチで再会した。
KABAちゃんは私を覚えていてくれて、食事に誘ってくれた。
細い路地を歩きながら「実は君に話しておかないといけないことがあるんだ」
「僕は、オカマなんだ。」 ・・・「I KNOW」と答えた。
「日本の人はオカマをどう思ってる?軽蔑する?」
とうつむいたまま聞くので、
日本の芸術もメディアもオカマで回ってるよ!と答えたら喜んでた。
「紹介したいひとがいる、彼の仕事場へ行こう」
連れて行かれた場所は、繁華街のはずれ、建物の隙間のせまい場所で、
屋根代わりにブルーシートをはった水商売相手の「美容院」だった。
粗末な椅子、鏡、テーブルに置かれた使い込まれたメーキャップ用品。
女の子が真剣に鏡を覗き込みながら、髪を編んでもらっていた。
美容師さんはあのときの美青年インストラクター。
2足のわらじで働いてるらしい。
「将来、ちゃんとしたお店を持つのが夢なんだ」と話してくれた。
時々、バーから女の子が泣きながらお店に来て、
美青年に駆け寄ってなにかグチってる。
いじめにあったりつらい目にあったんかな。
その子の髪をなでながら、なぐさめか励ましの言葉をかけると、
涙をふいてうなづきながらまたお店へ戻って行った。
私はゲイやマイノリティなひとたちが大好きだ。
みんななんらかの痛みを知ってるから、平和主義で誰にもやさしい。
お店に金網のシャッターを下ろして閉店してから、食事に行った。
屋台のタイそばを食べた。 おいしかった。
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それから3年、パタヤへ行く人にことづけをお願いした。
ソイ5にいた彼らに渡して欲しいと「夢がかないますように」と
カードを添えて、メーキャップ用品の入ったかわいいトランクと
ペアのサングラスを包んで。
お店の場所は変わってたけれど、探すのに時間はかからなかったらしい。
誰に聞いてもすぐわかる有名なお店になっていて(屋根もあっって)
タイシルクの可愛らしいバッグ、そして
「I MISS YOU」と書かれた写真をお返しに貰った。
従業員が何人もいる美容院は、英国風の上品な内装で、
シャンプー台と皮のリクライニング椅子にはお客さんがたくさん。
おまけにゲイの二人は養子をもらって大切に育てているそうだ。
私は泣けて仕方なかった。
いろんなものを乗り越えて、二人で約束した夢をかなえていたんだ。
なんだか私もがんばんなきゃ、なにも変わってない自分を恥ずかしいと思った。
ああ、パタヤへいきたい。